
「A Quiet Sun」田口和奈展
2022年6月17日(金)– 9月30日(金)
銀座メゾンエルメス フォーラム
https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/
開館時間:11:00–19:00 入場は閉館30分前まで
休館日:7/14(木)、8/17(水)※エルメス銀座店の営業に準ずる
https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/220617/
銀座メゾンエルメス フォーラムでは、多重的な構造を持つモノクロームの作品を通じて、時間や空間といった形而上の存在を見出そうと制作を続けるアーティスト、田口和奈の個展を開催する。
田口和奈(1979年東京都生まれ)は、自ら制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影した写真の印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影するといった重層的な手続きを経て生み出された写真作品で知られる。2008年に東京藝術大学大学院博士後期課程美術専攻油画研究領域を修了。2000年代前半より国内外で作品の発表をはじめ、2013年には拠点をオーストリア、ウィーンに移し、制作活動を続けている。これまでに、台北ビエンナーレ(2006)、ヨコハマトリエンナーレ2011、『日本の新進作家vol.11:この世界とわたしのどこか”』(東京都写真美術館、2012)、『エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ』(国立国際美術館、2016)などの国際展や展覧会に参加。近年の主な個展に、『wienfluss』(カスヤの森現代美術館、神奈川、2017)、『エウリュディケーの眼』(void+、東京、2019)、『Due』(ERMES ERMES、ローマ、2021)。主なグループ展に『Autumn Sale of Dreams and Love(Haus der Matsubaraとの2人展)』(Significant Other、ウィーン、2019)、『The Unremarkableness of Disobedient Desire』(Lucie Drdova Gallery、プラハ、2020)、『Why do birds suddenly appear?』(Galerie Martin Janda、ウィーン、2020)、『The Terrorizers』(ERMES ERMES、ローマ、2021)、『TOPコレクション 光のメディア』(東京都写真美術館、2022)などがある。


田口の作品は、しばしば過去の美術作品の参照や、匿名のファウンドフォトや雑誌といった既存のイメージの応用を含み、収集した過去のイメージから象徴を読み取ろうとするその身振りは、アビ・ヴァ―ルブルグの「ムネモシュネ・アトラス」からの影響も伺える。田口は、それらのイメージの中にある複数の時間軸や身体の断片から、記憶を生み出す星座的空間の兆しを掬い取り、そこに節制と偶然を招き入れるべく、時に修復し、時に自作の中へと再び迷い込ませようと試みる。「A Quiet Sun」と題された本展は、本展のために制作した作品群と、田口が収集するファウンドフォトで編成され、ギャラリーにあふれる強い自然光を活かしながら、建築を発見し、空間を整え、レイヤーを与えていくような大胆かつ繊細な展示方法は、田口の写真制作における問題意識を異なる角度から解釈する機会となるだろう。
私の関心であり同時に問いであるのは、集めたファウンドフォトが非常に魅力的である理由である。「エウリュディケーの眼」は、神話のイメージを拠りどころに、現実の予感が入り混じったイメージで、これまでの作品より即興的かつ多層的な構造をもっている。ファウンドフォトの発見、修復、修繕というプロセスは、ゼロから作りだす私の制作のプロセスとは違う地点から同じ空間に向かっているようだ。この展覧会について考えることは、私の関心が交差しているその空間について考えることである。
(田口和奈「A Quiet Sun」のノートより)


