アラン・セクーラ死去(1951-2013)

2013年8月10日、1970年代初頭から実践と理論の両面から写真にアプローチしてきたアラン・セクーラが、ロサンゼルス市内にて癌のため死去した。62歳。

セクーラは、1951年ペンシルベニア州に生まれ、子供時代にロサンゼルスの海岸地区サン・ペドロに移住する。海洋生物学を専攻するために進学したカルフォルニア大学サンディエゴ校で、美術の授業を担当していたジョン・バルデッサリの影響を受け、専攻を美術に切り替え、1974年には美術学修士号を取得する。修了後はアートフォーラム誌に写真の社会的使用に関するエッセイなどを発表、「写真の意味の創出について」(1975年)、「写真の交通」(1981年)、「アーカイヴを読むこと」(1986年)、「身体とアーカイヴ」(1986年)などは、80年代以降の写真論の基本的な文献として広く知られている。また、ニューヨーク大学やオハイオ州立大学を経て、1985年からカリフォルニア芸術大学で約30年間にわたって教鞭を執り、教育者としての評価も高い。

実践面においても、鉱山業が栄えた町の写真スタジオに残された写真を基にした『鉱山写真[Mining Photographs and Other Pictures, 1948-1968]』(1983年)や、1989年から95年にかけて、高度資本主義下の海上貿易を写真とテキストを用いて記録した「フィッシュ・ストーリー[Fish Story]」は、アーカイヴという概念を再考する上で重要な作品として知られている。70年代から継続的に発表を続け、世界各地で個展を開催している。また、ドクメンタ11(2002年)、ドクメンタ12(2007年)や第29回サンパウロビエンナーレ(2010年)といった国際展や企画展への参加も多数。日本国内でも横浜トリエンナーレ2001に出品し、築地市場を撮影した映像などを横浜開港資料館や赤レンガ倉庫で発表している。2010年にはノエル・ブーチとの共同制作映像作品「忘れられた場所[The Forgotten Space]」(2010年)が、ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で審査員特別賞を受賞している。なお、同作品は現在尾道市立美術館で開催されている『La mer secrète / THE SECRET SEA / 秘められた海』(9月23日まで)のスペシャルイベントでも上映された(同展には写真、映像作品も出品)。また、最新プロジェクト「The Docker’s Museum」の書籍が今年末にルーヴェン大学出版から刊行予定。

秘められた海
2013年7月27日(土)-9月23日(月、祝)
尾道市立美術館
http://www7.city.onomichi.hiroshima.jp/

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