Untitled (Kurogo) (2015) gelatin silver print from digital file, 44.5 x 37 cm, edition of 10 © Shizuka Yokomizo
横溝静『Kurogo』
2015年8月1日(土)-9月5日(土)
ワコウ・ワークス・オブ・アート
http://www.wako-art.jp/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日、月、祝、夏期休廊(8/11-8/15)
ワコウ・ワークス・オブ・アートでは、写真、映像に関わらず、一貫して人間をテーマの主軸に据えてポートレイト作品を制作してきた横溝静の新作展『Kurogo』を開催している。
横溝静は1966年東京都生まれ。89年に中央大学文学部哲学専攻を卒業。同年に渡英するとケント・インスティテュート・オブ・アート&デザイン、ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインを経て、95年にロンドン大学ゴールドスミスカレッジで修士号を取得している。これまでに、室内で眠る友人を暗闇のなかで撮影した「Sleeping」(1995-97)、見知らぬ人々に手紙を送り、同意を得られた相手だけを窓の外から撮影した「Stranger」(1998-2000)、心霊体験をもつ人物に成りきって語る役者たちを撮影した「Phantom」(2006)などを発表している。横溝の作品はそのシンプルなポートレイトの背後に、人間が抱くイメージの正体、虚構と現実の間に横たわる溝、被写体と作家自身との関係性そのもの、写真という媒体が成立する構成条件そのものなど、常に不可視の要素を写し出している。
本展で発表する最新作の「Untitled(Kurogo)」(2015)は、裸体の娼婦をモデルに2008年から制作してきた「all」から一転して、全身を黒い衣装で覆われた人物が、真っ黒な部屋の中に、カメラの存在にはまるで無頓着な様子でたたずんでおり、表層的なイメージとそのイメージの向こう側にある世界をつなぐ存在、画像を構成するピクセルを思わせる黒いキューブなど、その構造は重層的な読み取りを可能にする要素に満ちている。
なお、横溝は近年、文化人類学的なテーマにも関心を向け、国立新美術館で開催中の『アーティストファイル2015–隣の部屋 日本と韓国の作家たち』では、そういった新たな探求から生まれた写真作品と立体作品を展示している。
アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち
2015年7月29日(水)-10月12日(月)
国立新美術館
http://www.nact.jp/