疾走する馬 - 吉岡徳仁

【タイトル】疾走する馬
【アーティスト】吉岡徳仁
【期間】2002年2月14日~4月9日 
 

動くディスプレーで2002年最初のウィンドーを演出するのは吉岡徳仁。鞍とバッグのみの展示で「手」という年間テーマを表現します。

1837年に鞍を製作するアトリエから始まったエルメス。勿論、鞍の用途は言うまでもないですが、弊社のロゴにもあるそのシンボル的な存在の「馬」を今回のウィンドーの背景のイメージとして選択しています。正面右には馬の横顔のクローズアップ写真が貼られていますが、その馬はどことなく哀愁が漂うような表情をしています。正面左は馬の群れが草原を走っている様子の写真。両方共モノトーンに加工することにより何気にノスタルジックに見えます。またそのモノトーンの背景は手前に置かれた商品を際立たせています。
一背の鞍はミラー張りのシンプルな箱型のオブジェの上であたかも人が乗っている様に動きます。スムーズで自然な動きを長い間見ていると、本当に騎乗しているライダーが目の前に現れる感覚を覚えます。またケリーバッグは振り子の原理を利用して、右へ左へと規則的にリズミカルに動き続けます。その動きは時に冷たくも感じられますが、エルメスの歴史の流れの「時」を刻むように揺れています。
床はミラーで仕上げてありますので、ウィンドー全体のトーンはモノトーン/シルバー色に映り、ガラスブロックでできているこの建物の雰囲気にとても合っています。
小窓には、草原を走っている馬の写真をエルメスらしくオレンジ色に調整したものが背景に貼られて、シンプルに商品が飾られています。

「手」の年というテーマで強調されるクラフトマンシップの精神はエルメスが誇りに代々受け継いできているものですが、そのエスプリであり原点を象徴する鞍とケリーバッグを装飾することにより、またそれらに動きを与えることによって伝統の美しさと重みを強調しています。
しかし、そのコンセプトを職人技とは相反するテクノロジーを使って表現することにより、コミカルな軽さをも見出せるウィンドーの舞台になっています。

吉岡徳仁は67年生まれ。86年桑沢デザイン研究所卒業。倉俣史郎や三宅一生のもとでデザインを学び92年よりフリーランスで活動を始め2000年に吉岡徳仁デザイン事務所を設立。パリ、ニューヨーク、東京で開催された展覧会「三宅一生ISSEY MIYAKE Making Things」セノグラフィーを担当。実験的なデザインで国際的に高い評価を得ています。又現在8Fフォーラムで展開中の「蹄の音」(1月11日~3月17日まで開催)で会場構成を担当しています。

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