ガンジスの賜物 – 鈴木康広


【タイトル】 ガンジスの賜物
【アーティスト名】鈴木康広
【期間】 2008年5月22日(木)~7月15日(火)

ゆったりと流れるガンジス川。水面から飛び出し、昇天する商品の数々。一方では、天から舞い降りたスカーフが空中に浮いています。通りかかる人々は、水面からあふれ出た「ガンジスの賜物」に遭遇します。驚きの瞬間が凍結されても、川は変わることなく流れています。

聖なる大河、ガンジス。そこに身を浸し沐浴する人々は、現世の苦しみや世俗的な罪を洗い流し、魂を浄化できると信じています。地上のあらゆるものを呑み込み、人々の思いを受け止めながらいずれ大海原へと行き着くガンジスの水は、空気中に蒸発して雲となり、いつしか雨となって再びガンジスに降り注ぎます。そこにヒンズー教の魂の輪廻の思想と水の循環のイメージが重なります。

右側のウィンドーには、流れるガンジス川の水面の切れ目からあらゆるエルメスの商品が飛び出し、昇天する瞬間を目撃した人々の姿があります。水面下に温存されていた商品に込められた職人の思いとエネルギーがあふれ出た瞬間を表現。左側のウィンドーは、いつの日か再びガンジスへと注がれる雨のように、色鮮やかなスカーフが天から舞い降りてきた瞬間をとらえています。

ウィンドーの右から左へと流れる川により、メゾンエルメスに出入りする人々は、川を切り開いて渡るような錯覚を抱きます。小窓では、ゆらゆらと揺れる水面が再現され、メゾンエルメスのガラスブロックに反射した光との相乗効果により、飛び出す商品に輝きを与えています。

アーティスト:鈴木 康広(すずきやすひろ)
1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学デザイン学科卒業。公園の回転遊具「グローブジャングル」を利用したインスタレーション「遊具の透視法」(2001) の発表をきっかけに、国内外の多数の展覧会やアートフェスティバルに参加。Ars Electronica Festival ’02(オーストリア)、DEAF_03(オランダ)、Little 2004(フランス)に招待出品。2004年1月に青山スパイラルガーデンで発表した「まばたきの葉」は、現在も美術館やパブリックスペースでの展開を続けている。最近は美術展のみならず、デザインの展覧会やイベントにも積極的に参加している。

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