「新たな世界のために」 植松琢麿

【タイトル】新たな世界のために
【アーティスト名】植松琢麿
【期間】2014年1月22日~2014年3月18日

2014年のエルメスの年間テーマは「メタモルフォーズ-変身」。思い起こされるのは、ひとつの素材が職人の手にかかることによって、多様に変身していく様や、そうして作られたオブジェが使い続けられるうちに成熟する様。
職人としての厳格さと創造の自由を調和させながら、常に革新を遂げてきたエルメス。身体の物質性と生命の関係をテーマに作品を制作している現代美術作家、植松琢麿は、秩序を保ちつつも変化し続けるエルメスのあり方をまるで、自然界のサイクルを持った生命体のようだと形容します。

ダイナミックに振動し回転する自然界において、あらゆる物質は相互に作用し、新たな状態を生み出す可能性に満ちています。細胞のような無数のガラスブロックで覆われ、季節、天候、時間帯によって違った表情を表す、まるで生き物のようなメゾンエルメス。そこは常に開かれたプラットフォームであり、訪れる人、街を行き交う人々や車、吹き抜ける風、ガラスブロックに写り込む青空といった現実と、エルメスが歩み続ける歴史が、時空を越えた流れのなかで交錯しています。ウインドウはまさにその結節点として価値を更新し続けています。

正面ウインドウ左側でオレンジに煌めく馬の彫像はエルメスそのものを象徴しています。さらに、馬の頭部にふんわりと浮かぶもう一つの白い頭は、希望溢れるエルメスの未来像を示唆しています。そして、右側には、先史時代から人間とゆかりの深い鹿と、女性の像がともに同じ方向を向き、自然と人間が共生し次代へ向かう姿勢を表しています。

植松のウインドウの中で、エルメスという場に起こり続ける変容の美は時を越え、永劫に連鎖していくのです。

植松琢麿 Takuma Uematsu
1977年生まれ、大阪在住。2000年関西大学卒業。身体の物質性と生命の関係をテーマに、さまざまな素材を自在に組み合わせたインスタレーションや、動物のフォルムを使った造形作品を国内外のギャラリー、美術館で発表。世界を繋ぐ不可視な関係性に新たなイメージを見出し、新しい世界の在り方を表現している。

主な展覧会として、2013年ART Basel Hongkong Encounters sector(HKCEC/香港)、2012年Hyper-Cycle (Yumiko Chiba Associates/東京)、2010年 IMPULSE 22(GALLERY Christian Löhrl/ドイツ)、2009年 神戸ビエンナーレ2009 招待作家展(兵庫県立美術館)、Ancient Futures” (ソウル市立美術館/韓国)など。

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