2010年記憶に残るもの 清水穣

金氏徹平 『Recent Works : Post-Something』
2010年1月16日-2月27日
ShugoArts
「批評のフィールドワーク」第6回参照

古屋誠一 『メモワール』
2010年5月15日-7月19日
東京都写真美術館
「批評のフィールドワーク」第10回+第11回参照

スターリング・ルビー 『New Works』
2010年9月18日-10月16日
タカ・イシイギャラリー



Installation view at Taka Ishii Gallery, Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo: Kei Okano
コラージュ、立体、陶芸、絵画など、作品はどれも基本的にそのジャンルの先行する作品群に対する批評を秘めているのだが、同時にモノとしての単純な力強さ、あまりいじくらない気持ちの良さ、プラス、ポップな装飾性(陶芸作品の釉薬など)を持っている。

落合多武 『スパイと失敗とその登場について』
2010年5月22日-8月8日
ワタリウム美術館
「マイクロポップ」が早くも過去となった今年、それをむしろ追い風のようにして、自由で音楽的な作品を、変わらぬ正確さで展開していた。同時に、新しい傾向として「フレーム」の意識が見られ、いわゆるオルターナティヴ・モダンな若手作家たちと意外な平行性をも見せた。

木村友紀 『無題』
2010年9月5日-1月11日
伊豆フォトミュージアム


7 24& 138-11, (2010), Lambda print, allelic, frame, diptych, 60×80 cm, 60×83 cm
「わかる」「わからない」だから「解説」という現代美術の制度的要請にうんざりし、それと同時に自作の乾いた抽象性に自家中毒をも覚え始めた作家が、ここ数年続けてきた、立体やオブジェと組み合わせる写真インスタレーションに、現時点でのディプロマを提出した、という感の個展。

展覧会: フォトレポート 木村友紀 『無題』 IZU PHOTO MUSUEM

村瀬恭子 『Fluttering far away / 遠くの羽音』
2010年4月10日-6月13日
豊田市美術館
成功した回顧展。作家の、緩やかだが確かな展開がよく分かって、気持ちが良かった。さすが豊田市美術館と言って済ませずに、中堅作家のこのような充実した展覧会を他館にももっと定期的に開催してもらいたい。

白子勝之 『exhibition 01』
2010年6月4日-6月27日
eNarts

installation view at eNarts, courtesy of eNarts
偶然から選び抜いた洗練された形態を、1つの素材から削り出し、そこへ最低限の色漆と光沢を効果的に加える。従来の「モダン漆芸」、すなわち現代美術を漆でなぞるだけの泥沼から抜け出して、漆芸による現代美術を作り出す新しい才能がようやく出現した。注目ですよ!

アート・バーゼル41
2010年6月15日-6月20日
バーゼル
大きなシフトが起こった年。中国現代絵画に代表されていた具象絵画や、少年少女の「マイクロポップ」的作品がすべて姿を消した。代わりにモダニズムの黎明期がアクチュアルな参照点となって、時代錯誤的な構成主義やキュビズムやレディメイドやコラージュが大流行する一方、そのようなモダニズムの、アプロプリエーションとは異なる、つまり回帰でも召喚でもない21世紀的使用によって新鮮さを生み出すごく少数の作家たちも現れている。

展覧会: フォトレポート 『ART BASEL 41 』 インデックス

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