Forecast: 2011年4月-6月

視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション
4月16日(土)-7月10日(土)
神奈川県立近代美術館 葉山
http://www.moma.pref.kanagawa.jp


映画『光の戯れ 白・黒・灰』(1930)より (c)Hattula Moholy-Nagy
構成主義の写真家、美術家、そしてバウハウスの教師として知られているモホイ=ナジ・ラースローの全貌を紹介する日本初の個展が神奈川県立近代美術館 葉山で開催される。ハンガリー出身のモホイ=ナジは20世紀初頭、写真、デザイン、映画、キネティック・アートなど多領域を通して、「光と運動による造形」がもたらす「新しい視覚(ニュー・ヴィジョン)」を追求し、メディア・アートの先駆者としても高い評価を得ている。教育者としての評価も高く、ドイツのバウハウスで教鞭を執り、1937年にイギリスからアメリカに渡り、シカゴを中心に制作とともに造形教育活動を続ける。その影響は欧米のみならず、日本でも1930年代の新興写真運動、また、瀧口修造との交流を通じて、実験工房の芸術家たちにも影響を与えている。本展は、未公開作品を含む貴重な遺族所蔵のコレクションを中心に、国内外の美術館から集められた作品・資料を通して、モホイ=ナジの仕事を展望することのできる回顧展となる。会期中には井口壽乃氏による講演会(本展監修者、埼玉大学教授)のほか、ギャラリートークも予定されている。また、同美術館での展示後、京都国立近代美術館、DIC川村記念美術館への巡回が予定されている。
文中の作家名の表記は、本展覧会に合わせて、欧米主流である「ラースロー・モホリ=ナギ」という従来の呼称に対し、出自であるハンガリーの姓名順と発音に従い、「モホイ=ナジ・ラースロー」としています。
*モホイ=ナジ財団理事長のアンドレアス・ハグ氏を講師として迎えた対談は中止

高嶺格『とおくてよくみえない』
4月23日(土)-7月10日(日)
広島市現代美術館
http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/
パフォーマーとして活動を始め、様々なメディアを通して身体と表現を結びつける作品を発表してきた高嶺格の大規模な個展『とおくてよくみえない』が広島市現代美術館で開催される。本展は今年1月から3月まで横浜美術館で行われた展覧会の巡回展となるが、物理的な空間が異なるだけでなく、各美術館における文脈の差異によって、横浜美術館とは異なる展覧会となることが予想される。

高嶺格『とおくてよくみえない』横浜美術館 特設ウェブサイト
http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2010/toofartosee/

写真家・東松照明 全仕事
4月23日(土)-6月12日(日)
名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/
名古屋市美術館では、日本を代表する写真家、東松照明の本格的な回顧展が開催される。東松は従来の報道写真とは異なる手法で社会の矛盾や問題を提示した表現で、日本写真のヌーヴェル・ヴァーグとしてはやくから注目を浴びる。戦後の日本写真史を振り返るとき、名取洋之助との報道写真をめぐる論争、川田喜久治や奈良原一高らとともに設立した「VIVO」、荒木経惟や森山大道らと開講した70年代のワークショップ写真学校など、東松が多岐に渡り、日本写真に与えてきた影響は少なくない。本展は60年代および70年代から現在まで継続して撮影されている長崎や沖縄のシリーズを含む、60年間にも及ぶ写真家の表現の集大成としての回顧展となる。展覧会初日の4月23日には東松照明、中平卓馬、倉石信乃による鼎談が中区役所ホールにて予定されている。
なお、東松は今年に入って、既にギャラリー新居(東京、大阪)にて1960年代の作品を中心に発表し、4月には東京のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム、MISA SHIN GALLERYでの個展、9月には沖縄県立博物館・美術館にて『太陽へのラブレター』も開催される予定。

上述の4月23日に予定されている鼎談への東松照明氏の参加は、氏の体調不良のために電話での参加予定に変更になりました。
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2011/tomatsu/event.html

『イェッペ・ハイン 360°』
2011年4月29日(金)- 2011年8月31日(水)
金沢21世紀美術館
http://www.kanazawa21.jp/


イェッペ・ハイン「回転する迷宮」(2007), Photo: Tate Photography Courtesy:
Johann König, Berlin, 303 Gallery, New York and SCAI The Bathhouse,Tokyo

日本国内の美術館では初となるデンマーク出身の若手作家イェッペ・ハインの個展『360°』が金沢21世紀美術館で開催される。水や光、鏡などを用いて、観客との積極的な関わりを生み出す作品を発表してきたイェッペ・ハインですが、本展でも複数の展示室、廊下や屋外を舞台としたインスタレーション作品など10点が展示される予定。「回転するピラミッドII」や「回転する迷宮」といった作品が丸い展示室を持つ金沢21世紀美術館との間にどのような空間を生み出すのかも注目される。イェッペ・ハインはこれまでにロンドンのヘイワードギャラリー、パリのポンピドゥ・センターなど数多くの美術館で個展を開催し、2003年のヴェネツィア・ビエンナーレをはじめとする国際展へも参加している。国内でも森美術館や広島市現代美術館などで作品を発表したことがある。

平川典俊『Beyond the sunbeam through trees – 木漏れ日の向こうに』
5月28日(土)-8月21日(日)
山口情報芸術センター
http://www.ycam.jp/
平川典俊による新作インスタレーションが山口情報芸術センター(YCAM)にて5月28日より発表される。このインスタレーションは、光、映像、音響によるインスタレーションと、パフォーマンスが融合した新たな視点からの芸術表現を提案するYCAMのプロジェクトの一環として行われる。平川典俊のほか、ドイツの伝説的音楽グループ「NEU!」の創設者、ミヒャエル・ローター、ウィリアム・フォーサイスのザ・フォーサイス・カンパニーの中心的存在である安藤洋子がコラボレーションに参加する。

マイケル・リン『ミングリング ーふれあいー』
5月28日(土)-8月28日(日)
十和田市現代美術館
http://www.city.towada.lg.jp/artstowada/


「ATRIUM, STADHUIS 12.07-12.09.2002」(2002), emulsion on wood 5000X2000cm.
Stroom-City hall of The Hague, Netherlands

伝統的な台湾のテキスタイルのモチーフを用い、建築空間にペインティングを行う作品で知られるマイケル・リンの個展『ミングリング ーふれあいー』が十和田市現代美術館にて開催される。近年は工業生産的なモチーフであった台湾のテキスタイル模様のみならず、制作する地域の伝統的、文化的モチーフ、空間の特徴や場との関係性を読み込んだ作品制作を行う。本展は、リンが十和田市に滞在し、リサーチを続ける中で着想を得、地域の人々との恊働作業で作られたパッチワーク作品を中心に展開される。十和田市現代美術館のみならず、中心商店街、ふれあいホールへも作品が展開される予定。

杉本博司『アートの起源|歴史』
2011年5月29日(日)-2011年8月21日(日)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
http://mimoca.org/
昨年11月より1年間に渡って行われている杉本博司を4つの異なるキーワードによって紹介していくプロジェクト。第1回目の「科学」、3月から始まっている「建築」をキーワードにした第2回目の展覧会に引き続き、5月下旬からは「歴史」を中心に据えた展覧会が行われる。各展覧会ごとに世界初公開のシリーズやこの展覧会にあわせて制作された作品も出品されるため、1年間を通した杉本作品世界の全貌を知るだけでなく、個々の展覧会を各キーワードについて再考する機会としても捉えることもできる。

『ミン・ウォン: ライフ・オブ・イミテーション』
6月25日(土)-8月28日(日)
原美術館
http://www.haramuseum.or.jp


Cinema billboard designed by Ming Wong, painted by Neo Chon Teck, Four Malay
Stories
(2009)

母国シンガポールとベルリンを拠点に活動を続けるミン・ウォンの個展『ミン・ウォン: ライフ・オブ・イミテーション』が原美術館で開催される。本展は2009年の第53回ヴェネツィア・ビエンナーレにおいて審査員特別表彰を受けた後、シンガポール美術館にて再現され、現在も世界各地を巡回している。出品作品の中心を成すのは、既存の映画を独自の視点で再演したビデオインスタレーションで、ミスキャストや物真似など、パフォーマンス性をベースとした手法で、人種的、文化的アイデンティティやジェンダー、言語の問題などに言及している。また、シンガポール最後の映画看板絵師による看板画や貴重な映画資料、往年の映画館建築を収めたポラロイド写真を通して1950年代および60年代のシンガポール映画黄金時代を振り返り、様々な言語と文化が行き交ってきたシンガポール、ひいてはグローバル化の現代社会を見つめる内容となる。また、上述したヴェネツィア・ビエンナーレにてシンガポール館のキュレーター、今回もゲスト・キュレーターとして参加するタン・フー・クエンとミン・ウォンの対談も予定されている。
関連記事
ミン・ウォン インタビュー「反復がもたらすシネマへの提案」
フー・ファン「ミン・ウォン: 旅する異邦人」

オン・ザ・ロード 森山大道写真展
6月28日(火)-9月19日(月)
国立国際美術館
http://www.nmao.go.jp/
日本写真界を代表する写真家のひとり、森山大道の個展『オン・ザ・ロード 森山大道写真展』が国立国際美術館で開催される。本展では1965年から現在に至るまでの300点以上を通して、森山の写真家としての軌跡を顧みる。なお、札幌宮の森美術館では今年2月より森山大道写真展 『ブエノスアイレス/サンパウロ』(5月15日まで)が開催されており、東京では4月22日からBLDギャラリーにて『Record No.19 -Toscana-』が開催される。

森山大道写真展 『ブエノスアイレス/サンパウロ』
2月11日(金)-5月15日(日)
札幌宮の森美術館
http://www.miyanomori-art.jp/

『Record No.19 -Toscana-』
4月22日(金)-5月29日(日)
BLD ギャラリー
http://bld-gallery.jp/

Copyrighted Image