ジュゼッペ・ペノーネ「水の素描」2003-07年 「流動する彫刻の庭」に恒久設置 ヴェナリア・レアーレ宮殿、イタリア・トリノ Courtesy: Consorzio di Valorizzazione Culturale La Venaria Reale
2014年7月16日、世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第26回受賞者が、パリ、ローマ、ベルリン、ロンドン、ニューヨーク、東京の各都市で発表された。各部門の受賞者には、顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。
絵画部門を受賞したのは、マルシャル・レイス。1936年にフランスのニース近郊ヴァロリス・ゴルフ=ジュアンに生まれたレイスは、12歳で絵画と詩をはじめる。55年に最初の詩集を発表、58年には初の個展を開き、60年に工業化社会の新しいリアリティを模索する前衛芸術運動「ヌーヴォー・レアリスム」に参加する。60年代半ばには、アングルの「グランド・オダリスク」に強烈な色彩などを付与した「メイド・イン・ジャパン」シリーズを発表。日本国内では、『国際サイテックアート展 エレクトロマジカ ’69』(ソニービル)や2004年から翌年にかけて7都市を巡回した『流行するポップ・アート』に出品している。今年5月よりポンピドゥー・センターで大規模な回顧展が開催されている。
マルシャル・レイス「メイド・イン・ジャパン - グランド・オダリスク」1964年 ポンピドゥー・センターの回顧展で © ADAGP, Paris 2014 / Courtesy: Centre Pompidou
彫刻部門を受賞したのは、ジュゼッペ・ペノーネ。ペノーネは1947年イタリアのピエモンテ州ガレッシオに生まれる。自然に存在する石や木を中心に、豊富な種類の素材を使い、自然と自己の関わりを反映させた作品を制作している。60年代にイタリアで起きた美術運動「アルテ・ポーヴェラ」の旗手として注目を浴び、69年にトリノで初個展を開くと、翌年には東京都美術館で開催された第10回日本国際美術展東京ビエンナーレ(『人間と物質』展)に参加、初来日している。その後もドクメンタ(1972、1982、1987)への参加をはじめ、各地で個展を開催する。2007年にはヴェネツィア・ビエンナーレにイタリア代表として参加、同年、トリノ郊外のヴェナリア・レアーレ宮殿でペノーネ彫刻庭園を公開している。また、豊田市美術館では97年に『ジュゼッペ・ペノーネ:石の血管』、2009年に『ジュゼッペ・ペノーネ』と二度の個展を開催している。
ジュゼッペ・ペノーネ, 展示風景 ドクメンタ13, 2012年 写真:ART iT
そのほか、建築部門はヘルシンキのキアズマ現代美術館(1998)などが代表作として知られ、福岡市の集合住宅『ネクサスワールド・スティーヴン・ホール棟』を手掛けたスティーブン・ホールが受賞。近年は北京の『リンクト・ハイブリッド』(2009)など、大規模な都市開発のプロジェクトも手掛けている。
音楽部門にはソ連統治下、わずかに手に入る情報をもとに、現代音楽の技法を身につけたエストニア生まれの作曲家、アルヴォ・ペルトが受賞。2010年の生誕75周年を記念するイベントにて、30年振りに祖国に帰国。首都タリンに自筆の楽譜、各種資料などを保管する「アルヴォ・ペルト・センター」が設立された。エストニアから初の世界文化賞受賞。
演劇・映像部門は俳優、演出家としても活躍する南アフリカの劇作家、アソル・フガードが受賞。イギリス人の父とアフリカーナーの母の間に生まれ、アパルトヘイト(人種隔離政策)に抗した作品を発表する。初の小説『ツォツィ』(1980)は映画化され、2006年に米アカデミー賞外国語映画賞を受賞、2011年にはそれまでの功績によりトニー賞を受賞している。アフリカ大陸から初の世界文化賞受賞。
なお、第18回若手芸術家奨励制度の対象団体には、ベナン共和国で現代アフリカ美術作品の展示、「美術教室」の開催などを通じてアフリカ文化芸術の振興に努めるジンスー財団が選ばれた。香川県・直島の空き家を改修して美術作品を展示する「家プロジェクト」にヒントを得た活動も展開している。
授賞式典は、10月15日に東京、元赤坂の明治記念館で行なわれる。また、翌16日には「受賞記念建築講演会2014 スティーヴン・ホール 建築を語る」が鹿島KIビル大会議室にて行なわれる。
高松宮殿下記念世界文化賞:http://www.praemiumimperiale.org/
受賞記念建築講演会2014「スティーヴン・ホール 建築を語る」
2014年10月16日(水)16:00-17:30(開場:15:30)
会場:鹿島KIビル 大会議室(東京都港区赤坂6-5-30)
定員:300名 ※要申込(締切は9月29日)
申込等詳細は下記URLを参照。
http://www.praemiumimperiale.org/ja/news/news/item/314-201409172