2013年11月6日、英国を拠点に実験的な映像表現を探求するアーティストを対象としたフィルム・ロンドン・ジャーマン賞の発表がロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーにて行われ、ジョン・スミスがグランプリを受賞した。スミスには、賞金10,000ポンド(約158万円)が与えられるほか、チャンネル4から同局の深夜枠「ランダム・アクツ[Random Acts]」で放映する映像作品の制作が依頼される。また、最終候補者のうち、エド・アトキンス、エマ・ハート、レイチェル・マクレーンの3名にもランダム・アクツからの制作依頼(総額16,000ポンド)が行われる。
ジョン・スミスは、1952年ロンドン生まれ。構造映画やマテリアリスト・フィルムに強い影響を受けつつも、同時にナラティブや話し言葉が持つ人々を没入させる力の可能性を取り入れた、ドキュメンタリーとフィクションの境界を揺さぶる映像作品を制作している。77年のロイヤル・カレッジ・オブ・アート修了後は、ロンドン・フィルムメーカーズ・コーポラティヴの活動にも従事した。72年以降、40を超える映画、ビデオ、インスタレーション作品を映画館、ギャラリー、テレビで発表し続け、数々の賞を獲得している。
上述した4名のほか、最終選考に残ったのは、ベアトリス・ギブソン、ウリエル・オルロー、シャーロット・プロジャー、ハナ・ソーテル、グレース・シュウィンド、ジェシカ・ウォーボーイズ。全10名の作品の巡回上映が今年9月から10月にかけて、FACT(リバプール)、CCA(グラスゴー)、ノッティンガム・コンテンポラリー、コーナーハウス(マンチェスター)、スター・アンド・シャドー・シネマ(ニューキャッスル)で行われ、11月2日、3日には、ホワイトチャペル・ギャラリーにて上映に加えて、質疑応答、パフォーマンスも開催された。
同賞は故デレク・ジャーマンの名を冠し、2008年に創設された。過去にはタカ・イシイギャラリーにて角田俊也との二人展を開催したルーク・ファウラー(2008年)、昨年、CNAC LABにて個展を開催したエミリー・ウォーディル(2010年)、第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展に参加しているジェームズ・リチャーズ(2012年)などが受賞している。そのほか、昨年ターナー賞を受賞したエリザベス・プライスも2011年の最終選考にノミネートされている。なお、次回はデレク・ジャーマンの没後20周年にあたり、関連企画、関連書籍の刊行を予定、ジャーマン賞2014の最終候補者上映プログラムのイギリス国外への巡回も予定している。
The Jarman Award:
http://flamin.filmlondon.org.uk/projects/projectscurrent/jarmanaward