ニューヨークでアートウィークが始まる

2011年3月2日からニューヨークのアートウィークがスタートする。ニューヨーク市内で複数のアートフェアが行われ、その翌週にオークションが開催されることもあり、この時期に国内外から多数のアート関係者が訪れる。

このアートウィークの最初を飾るフェアのひとつが、アメリカの主要ギャラリーで構成されるアメリカ・アートディーラー協会(ADAA)のフェア、『アート・ショー』である。
全米の著名な近代美術と現代美術のギャラリーが集まり、マンハッタンの中心部パークアベニューで行われるADAAの『アート・ショー』は、アメリカで最も長い歴史を誇り、今回で23回目となる。参加ギャラリー数は70軒と規模は大きくないが、ニューヨークのアクアヴェッラ、シカゴのリチャード・グレイ・ギャラリーなど近代美術の名品を扱う老舗に加え、マリアン・グッドマンディビッド・ツヴィルナールーリング・オーガスティンなど地元ニューヨークの有力な現代美術ギャラリーも参加している。

一方、第13回目を迎える『アーモリー・ショー』は3月3日より6日までマンハッタン西側のピア92と94で開催され、31カ国から247軒の近代美術、現代美術を扱うギャラリーが参加する。今年はラテンアメリカに焦点をあてており、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア、ペルー、そしてベネズエラからの21のギャラリーが含まれている。『アーモリー・ショー』では、毎年ひとりのアーティストにフェアの広告などに使用するイメージの制作を依頼しているが、そちらもラテンアメリカというテーマに合わせ、メキシコ人アーティストのガブリエル・クリを選んでいる。日本からはタロウ・ナスギャラリーサイド2が参加する。

また、『アーモリー・ショー』と、同じ運営会社が行うフェア、『ヴォルタ・ニューヨーク』の関連イベントとして、3月1日より6日まで、西23丁目にあるスクール・オブ・ヴィジュアルアーツの映画館SVATheatreで、『ARTPROJX CINEMA』と題された特集上映が行われる。イェスパー・ユストの「Sirens of Chrome」(2010)、ヨハン・グリモンプレ「Double Take」(2009)マシュー・ディ・ジャクソンの「In Serch of」(2010)などの映像作品が上映される。詳しい上映スケジュールは公式ホームページを参照のこと。

第2回目の開催となる現代美術のフェア、『インディペンデント』は、昨年同様チェルシー地区にある元DIAアートファンデーション(その後、Xイニシアティヴ)があった建物の2階、3階と4階部分を使って3月3日より6日まで開催される。ニューヨークのギャラリーオーナー、エリザベス・ディーとロンドンのギャラリー、ホテルのオーナーであるダレン・フルックが始めたこのフェアは、今回、ニューヨークの非営利アートスペース、ホワイトコラムスのディレクター、マシュー・ヒッグスをフェアのアドバイザーに迎えた。アーティストのプロジェクトを手掛けるニューヨークのアーティスツ・スペースなど非営利団体も展示に招待するなど、商業的な側面だけにとどまらない総合的なアートフェアを提案している。今年は新たにグラスゴーのモダン・インスティチュート、ロンドンとベルリンのシュプルース&マーゲルス、ニューヨークのアントン・カーン・ギャラリーギャビン・ブラウン・エンタープライズなどプログラムの良さで知られる中堅のギャラリーや、サイモン・フジワラのギャラリーであるフランクフルトのノイエ・アルテ・ブリュッケなど勢いのある若手ギャラリーが加わるなど、全体で40軒余りと参加ギャラリーの数を増やした。他のアートフェアに比べて規模は小さいものの、参加ギャラリーの質が高く、注目のフェアに成長した。

1999年にアーモリー・ショーがスタートしたことにより、他のアートフェアが時期を移動したり、また新たなフェアが誕生し、3月初旬のニューヨークはアートウィークとして活性化した。一方、その立役者であったアーモリ・ショー自体は、フェアの運営母体が移行したこと、不利な立地条件などの側面から参加ギャラリーが他のフェアに移るなど、求心力が低下している。

この時期は国内外からニューヨークを訪れるコレクター達が、ギャラリーが集中するチェルシー地区をはじめ、市内の多くのギャラリーに立ち寄ることから、どのフェアにも参加せず、自らのスペースの展覧会のみに力を入れているギャラリーも少なくない。こうした動きはコレクターや鑑賞客には大きなメリットでもあり、ニューヨークのアートウィークの魅力にもなっている。フェアがしのぎを削ることで、フェアだけでなくギャラリーや美術館の展覧会や展示作品の質がよりいっそう高められることが、アートウィークの更なる集客につながるであろう。

この時期には他にも『ヴォルタ・ニューヨーク』、『スコープ・ニューヨーク』、『パルス・ニューヨーク』、『レッド・ドット・ニューヨーク』などヴォルタ以外はいずれもマイアミでも行なわれていたフェアがニューヨークでも開催される。

アメリカ・アートディーラー協会(ADAA) 『アート・ショー』
2011年3月2日- 3月6日
Park Avenue Armory
Park Avenue at 67th Street
New York NY10065-6122
http://www.artdealers.org/artshow.html

『アーモリー・ショー』
2011年3月3日 – 3月6日
Piers 92 および94
12thAvenue at 55th Street
New York NY 10019
http://www.thearmoryshow.com/

『Art Projex Cinema』
2011年3月1日–3月6日
333 West 23rd Street, New York NY10011
http://www.artprojx.com/cinema/programme/

『インディペンデント』
2011年3月3日–3月6日
548 West 22nd Street, New York NY10011
http://www.independentnewyork.com/

『スコープ・ニューヨーク』
2011年3月2日–6日
320 West Street, New York NY 10013
http://www.scope-art.com/

『パルス・ニューヨーク』
2011年3月3日–3月6日
Metropolitan Pavillon
125 West 18th Street New York
http://www.pulse-art.com/index.php

『ヴォルタ・ニューヨーク』
2011年3月3日-6日
7 West 34th Street (between 5th and 6th Avenue / 11th floor)
New York, NY 10001
http://ny.voltashow.com/

『レッド・ドット・ニューヨーク』
2011年3月3日-6日
82 Mercer Street between Spring and Broome
Soho, New York NY
http://www.reddotfair.com/NewYork/visitorinfo.htm

各フェアの場所はこちらのグーグルマップから

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