2015年7月18日、ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局は来年5月に開幕する第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展のディレクターに、貧困層向けの社会住宅や2010年2月のチリ大地震後のコンストゥティシオン市の復興計画などで知られ、チリを拠点に活動する建築家アレハンドロ・アラヴェナが任命された。
アレハンドロ・アラヴェナは1967年サンティアゴ生まれ。ピノチェト軍事政権下にチリ・カトリック大学で建築を学びはじめ、在学中の91年に第5回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展に参加。ヴェネツィア建築大学を経て、サンティアゴに戻ると94年に設計事務所アレハンドロ・アラヴェナ・アーキテクツを設立する。98年には初期の代表作のひとつ、カトリック大学数学部研究棟(1998)を手がける。2000年にハーバード大学の客員教授に就任すると、エンジニアのアンドレス・ヤコベッリとともに、カトリック大学とチリの石油会社COPECとの共同により「ELEMENTAL(エレメンタル)」を設立する。ELEMENTALでは、さまざまな専門家とともに、政策、金融、環境気候問題に至るまで諸々の条件を検討し、社会問題の改善を図っている。代表的なプロジェクトに、地元コミュニティを巻き込んだキンタモンロイの集合住宅(2003)やコンストゥティシオン市の復興計画(2010-)などがある。また、2010年に発表したパラグアイの先住民の道具に着想を得た「チェアレス」という椅子もアラヴェナの発想を的確に具現化した代表作として知られている。
これまでに、2008年の第11回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展の銀獅子賞や、今年のロンドン・デザイン・ミュージアムの年間デザイン賞をはじめ、数多くの受賞を重ね、その作品はサンパウロ・ビエンナーレ(2006)やミラノ・トリエンナーレ(2008)、ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(2008、2012)で紹介されている。2011年にはTOTOギャラリー・間で個展『アレハンドロ・アラヴェナ フォース・イン・アーキテクチャー』を開催、同名カタログを刊行している。昨年はTEDグローバルで「私の建築哲学—コミュニティが参加するプロセスを」と題した講演を行なっている。
ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局代表のパオロ・バラッタは、参加各国に対して過去100年を考察する「近代化の吸収」という共通のテーマを課した前回のレム・コールハースに続く企画として、来年のビエンナーレでは、世界のさまざまな地域に広がり、個別の事象に対して、個別に対応するという、建築の力を示す新しいフロンティアの探求に専念すると述べ、再度、建築を市民社会の距離を見直す上での適任者として、アラヴェナを選出した。
今回の選出に際しアラヴェナは、第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展では、建築環境の質、その結果としての人々の生活の質を改善するために、勝ち抜かなければならない戦いや拡張すべきフロンティアがあり、そこで違いをもたらしてきた語られるべき成功談や共有されるべき事例を紹介したい。ビエンナーレを知性や洞察力、もしくはその両方を駆使して、現状を打破する建築に着目し、そこから学ぶ機会にしたいと述べた。
第15回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展
2016年5月28日(土)-11月27日(日)
http://www.labiennale.org/