2015年9月3日、ドイツ・エッセンでフォルクヴァング美術館協会は、美術の普及・支援に多大な貢献を果たした個人や団体に贈られる国際フォルクヴァンク賞を、サーペンタイン・ギャラリーの共同キュレーターを務めるハンス・ウルリッヒ・オブリストに授賞すると発表した。オブリストには賞金25,000ユーロ(約333万円)が授与される。
ハンス・ウルリッヒ・オブリストは1968年チューリッヒ生まれ。ウィーンのミュージアム・イン・プログレス・ディレクター(1993-2000)、パリ市立近代美術館キュレーター(2000-2006)を経て、2006年4月より現職。ザンクト・ガレン(スイス)の自宅アパートで開催した『World Soup』(The Kitchen Show)以来、美術館規模の個展やさまざまな形式の展覧会やプロジェクトを企画。フォルクヴァング美術館では、2012年のルール・トリエンナーレの一環として、パフォーマンス・アートを中心とした「12 Rooms」を企画している。また、彼のライフワークとも言えるインタビュー・プロジェクトは、アーティスト、建築家、小説家、映画監督、科学者、哲学者、音楽家、パフォーマーなどとの対話を収録。現在、未発表のものも含めて膨大な量に及んでいる。
審査委員長を務めたDr.ウルリッヒ・ブランクは、オブリストのアーティストに深く関与するキュラトリアル・プラクティスや現在の芸術生産に対する認知度の向上に対する貢献を授賞理由として述べている。
同賞は、ドイツの20世紀前衛美術や建築における重要なパトロンおよびコレクターとして芸術支援に取り組み、ハーゲンに旧フォルクヴァング美術館(現オストハウス美術館)*1 を1902年に開館したカール・エルンスト・オストハウスの業績を記念すべく、美術の普及・支援に貢献する個人や団体の業績を讃える賞として2010年に創設された。基本的に隔年で開催され、2010年は大英博物館ディレクターのニール・マクレガー、2013年には自動車をはじめ幅広い分野の製品を扱うウルト・グループの会長でパトロンのラインホルト・ウルトが受賞している。
*1 オストハウスの死後、1922年に旧フォルクヴァング美術館がエッセン市立美術館に統合され、現在のフォルクヴァング美術館となる。