現代美術国際フェア「FIAC2010」がパリで開催

2010年10月21日、パリで現代美術国際フェア(FIAC)が始まった。サルコジ政権に対する国民の不満が膨らみ、公共交通機関のストライキ、ガソリンの流通が滞るなど、難しい社会状況下でのスタートとなった。フェアは10月24日まで、グラン・パレとルーブル美術館内の方形の中庭の2ヶ所で開催。FIACが企画するチュエリー公園での野外彫刻展示、会場内でのパフォーマンスプロジェクトのほか、会期中にフランス国内のコレクターが選出する若手作家に与えられるマルセル・デュシャン賞の発表、各ギャラリーや美術館のオープニングも同時期に行われるなど、パリ全体で現代美術のイベントが展開されている。


Grand Palais, Paris.

1974年に「現代美術国際サロン」として第1回が行われてから、今回で通算37回目となるFIACは、パリ中心部に会場を移してから今年で5回目。元ギャラリーオーナーのジェニファー・フライが2004年よりアーティスティックディレクターに着任してから、プログラムを充実させている(現在、フライはディレクターに昇格)。

今年のFIACへは、24ヶ国から195のギャラリーが参加している。今年初参加の主なギャラリーには、ベルリンのマックス・ヘツラーとコンテンポラリー・ファイン・アーツ、ロサンゼルスのレーゲン・プロジェクツ、ロンドンのヴィクトリア・ミロ, ニューヨークのデイヴィッド・ツヴィルナー、メトロ・ピクチャーズ、ガゴーシアン・ギャラリーなど有力なギャラリーが名を連ね、結果として、フランス国外のギャラリーが全体の62%を占めることとなった。

FIACの公式パートナーであるパリのギャラリー・ラファイエット百貨店がスポンサーとなり創設された若手ギャラリーのためのラファイエット部門には、今回は16のギャラリーが参加。21日に発表されるラファイエット賞では、1名のアーティストに同百貨店による作品購入と2011年秋、パレ・ド・トーキョーでの個展開催の機会が与えられる。


Ugo Rondinone, Turn back time.lets start this day again (2009), aluminum, 540 x 428 x 440 cm.

ニューヨークのルーリング・オーガスティンは開始直後に375,000 USドル(およそ3,055万円)のクリストファー・ウールの絵画作品「Untitled」(2009)をパリの新規クライアントに売却した。
*フォトレポートFIAC 2010 – Grand Palais part 2参照

Christopher Wool, Untitled (2009), enamel on linen, 243.8 x 182.8 cm.

オスロのスタンダードは、今年度のホイットニー・ビエンナーレで注目を集めたタウバ・アワーバッハを個展形式で展示。絵画作品3点をそれぞれ42,000 USドル(およそ342万円)、38,000 USドル(およそ310万円)、32,000 USドル(およそ261万円)で、ヨーロッパとアメリカの美術館、及びアメリカの個人コレクターが購入した。


Installation view of Tauba Auerbach’s paintings at Standard (Oslo)’s booth in the Grand Palais.

今回初参加のメトロ・ピクチャーズは、30,000 USドル(およそ244万円)のルイーズ・ローラーの写真作品「Faces (working title)」(2005/2010)のふたつのエディションをフェアが始まった直後の午前中に売却していた。


Louise Lawler, Faces (working title) (2005/2010), cibachrome face-mounted to plexi on 3/4″ plywood, 47 x 34 cm, ed 1/5, 1 AP.

ルーブル会場にブースを構えるニューヨークのロンバード=フリード・プロジェクツはムニール・ファトゥミ、タラ・マダーニと人気作家でまとめた展示で、早々に売約が入った。


Installation view, Lombard-Fried Projects’ booth at the Cour Carrée du Louvre. Left: Mounir Fatmi, Mixology. Center, on floor: Mounir Fatmi, Maximum Sensation #1 (2010), 50 custom-made skateboards (plastic, metal, prayer carpets), dimensions variable. Right: Tala Madani, Sunny Side Up (Dazzled) (2008), oil on canvas, 195 x 220 cm.

バルセロナのギャラリー、ノゲラス・ブランチャードはマイケル・リンのソロプレゼンテーション。パレ・ド・トーキョーのプロジェクトを行ったこともあり、フランスでも知名度の高いリンの作品は、フェア開始直後より価格の問い合わせが多かった。


Installation view of Michael Lin’s works in Nogueras Blanchard’s booth at the Louvre Lafayette Sector.

ラファイエット部門に参加しているタケ・ニナガワは開始後間もなく日本現代美術を蒐集しているピゴッツィ・コレクションに河井美咲の立体作品「Star Rider」(2010)を75万円で売却した。


Installation view of Misaki Kawai’s works in Take Ninagawa’s booth at the Louvre Lafayette Sector. Foreground: Misaki Kawai, Star Rider (2010).

同じくラファイエット部門参加のダブリンのギャラリー、マザーズ・タンクステーションは同ギャラリーでは売れ筋の加賀温の絵画作品を展示。手堅い作品選択が功を奏して、1点につき4,600ユーロ(およそ52万円)の作品数点の売却を決めていた。


Installation view of Atsushi Kaga’s works at Mother’s Tankstation’s booth in the Louvre Lafayette Sector. Left: Usacchi & the last cat pirate on the ocean with donuts (2010), acrylic on canvas. Center: Sachiko by day (2010), acrylic on canvas. Right: Polar Bear (2010), acrylic on canvas.

今回日本からはタケ・ニナガワの他、タカ・イシイギャラリー、ヒロミヨシイ、そして小山登美夫ギャラリーが同じブースをシェアする形でメイン部門に参加している。


Taka Ishii Gallery, Hiromi Yoshii and Tomio Koyama Gallery’s shared booth in the Grand Palais.

他にもパリのギャルリー・フレデリック・ジルー、チューリッヒのマイ36ガレリエ、ベルリンのエスター・シッパーが来年2月パリ市立美術館で展覧会を控えるジェネラル・アイディアの作品を共同で展示していた。


Installation view of General Idea’s works at Fréderic Giroux, Mai. 36 Galerie and Esther Schipper’s shared booth in the Grand Palais.

パリのgbエージェンシーとブリュッセルのヤン・モットも共通の取り扱いアーティストであるデイマンタス・ナルケヴィチュスを展示し、ブースを共有する形をとった。フェアの数が増え、作品在庫にも限りがあるため、高額なブース費用を軽減することのできるブースの共有は、市況が不透明な現在、ギャラリー側のリスクを回避する自己保護手段のひとつとして広がりつつある。

(文中敬称略)

フォトレポート
FIAC 2010 – Tuileries gardens
FIAC 2010 – Grand Palais part 1
FIAC 2010 – Grand Palais part 2
FIAC 2010 – Grand Palais part 3
FIAC 2010 – Grand Palais part 4
FIAC 2010 – Cour Carrée du Louvre part 1
FIAC 2010 – Cour Carrée du Louvre part 2

FIAC – International Contemporary Art Fair
会場: グランド・パレならびにルーブル美術館、パリ
会期: 2010年10月21日–24日
http://www.fiac.com/

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