2012年ターナー賞候補者発表

2012年5月1日、イギリス現代美術において最も重要な賞のひとつとして知られるターナー賞の本年の候補者が発表になった。候補者になったのは、スパルタカス・チェットウィン、ルーク・ファウラー、ポール・ノーブル、エリザベス・プライスの4人。
ターナー賞は1984年に創設され、過去1年間に開催された展覧会等の実績を基に、イギリスを拠点に活動する50歳未満のアーティストに授与される。今後、4人の候補者の作品による展覧会が10月2日よりテート・ブリテンにて開催され、テート・ブリテンのディレクター、ペネロペ・カーティスを含む5人の審査員の審議を経て、12月3日に受賞者の発表および授賞式典が行なわれる。候補者及び審査対象は下記の通り。

スパルタカス・チェットウィン(1973, ロンドン)
歴史的、文化的象徴を利用した即興的なパフォーマンス及び手作りの衣装や舞台を含むインスタレーションで知られる。審査対象となったセイディ・コールズHQでの個展『Odd Man Out』では、デモクラシーや投票権などを扱った5時間のパフォーマンスやノーベル文学賞受賞作家であるドリス・レッシングの『草は歌っている』を基にした演劇などを発表。近年、フリーズ・プロジェクト(2010)、ヘイワード・ギャラリー(2011)などでパフォーマンスを発表。

ルーク・ファウラー(1978, グラスゴー)
一般的な伝記映画やドキュメンタリー映画の慣習にとらわれない映像へのアプローチで知られる。審査対象となったエジンバラ王立植物園内インヴァーリースハウスでの個展では、『引き裂かれた自己』や『自己と他者』などの著作で知られる精神科医であり思想家のR.D.レインを題材とした三部作の第三部「All Divided Selves」(2011)を発表。2008年には、横浜トリエンナーレ2008にサウンドクリエイターの角田俊也とともに参加。同年、実験的な映像作家を対象としたジャーマン賞の第1回受賞者に選出される。2009年にはサーペンタインギャラリーにて個展を開催。

ポール・ノーブル(1963, ノーサンバーランド)
鉛筆で描かれた巨大な細密画で知られる。審査対象となったガゴージアン・ギャラリーで開催された個展『Welcome to Nobson』でも、15年間以上にわたり取り組んでいる架空の都市ノブソン・ニュータウンを描いた巨大な作品や大理石の彫刻作品を発表。主な個展にテート・ギャラリー(1999)、ホワイトチャペルギャラリー(2004)、ボイマンス美術館(2005, ロッテルダム)、ミグロ美術館(2005, チューリッヒ)など。

エリザベス・プライス(1966, ヨークシャー)
1980年代後半より、彫刻やインスティチューションにおける歴史や力学を扱ったプロジェクトを制作してきたが、2000年以降、サイエンス・フィクションの映像作品で評価を高める。審査対象となったのは、バルティック現代美術センターで現在も開催中の個展『HERE』。同展では、映画や写真などの現存するアーカイブを利用して、新たな黙示録を創り上げ、映像やテキスト、音楽を駆使したビデオインスタレーションを発表している。主な個展にホワイトチャペルギャラリー(2010)、テート・ブリテン(2010)など。

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