「ゼロ年代のベルリン」作品紹介 オマー・ファスト《キャスティング》


オマー・ファスト《キャスティング》2007年 Photo: Nick Trikonis © OMER FAST

「ゼロ年代のベルリン-わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)」展出品の本作品は、イスラエル出身のオマー・ファストによる、二つのスクリーンの表裏にそれぞれ投影された計4つの画面からなる映像作品です。作家がアメリカ軍兵士にインタビューし、そこで兵士が語る二つのエピソードが元となっています。一つは、イラク派兵時に誤って民間人を撃ってしまった出来事、もう一つは、ドイツで自傷行為を繰り返す女性とクリスマスを過ごした話。この時間も場所も異なる二つのエピソードを、ファストはカットアップし、精緻につなぎ合せることにより、まるで一つの物語かのようにその再現映像が表面のスクリーンで展開します。一方、裏面では、インタビューの光景が映し出されます。
こうした編集によって恣意的に物語が紡がれることは、私たちが日々接しているマスメディアが発信する情報においてもしばしば指摘されていることです。ファストの本作品は、こうした情報や記憶の恣意性を私たちにあらためて気づかせてくれます。

今後、いくつかの作品についてご紹介する予定です。お楽しみに!

「ゼロ年代のベルリン―わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)」

開催中~1月9日(月・祝)まで
東京都現代美術館
月曜(ただし1/2, 1/9は開館)、12/29-1/1、1/4は休館
HP http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/128/

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