桂ゆきーある寓話

4月6日(土)から「桂ゆき-ある寓話」展を開催いたします。

1935年にコラージュによる個展を開いた桂ゆき(1913年−1991年)は、およそ60年にわたり創作活動を展開した、戦前と戦後を繋ぐ女性芸術家のパイオニア的存在です。本展は、活動の拠点であった東京での初めての包括的な個展として、生誕百年を記念して開催されるものです。

触覚に根ざしたコルクや布などのコラージュ、油絵具による細密描写、そして戯画的な表現を桂が並行して展開したことは、独自の絵画のあり方を示すものとして戦前より瀧口修造や藤田嗣治等から注目されてきました。また戦後は、社会や人への透徹した眼差しと寓意表現を通して、ユーモアに溢れた、多層的な読み取りを可能とする作品を制作しています。旅と文学により培われた、あらゆるものを相対化する思考に支えられたその仕事には、前衛と日常、批評と笑い、日本の民俗的なものと西洋近代の普遍的なものを複眼的に捉える姿勢が貫かれているのです。それは、寓話の脇役から主人公を眺めること、制作した絵を90度回転させること、対象に被膜を纏わせることなど、ちょっとした視点の操作によって、今まで当たり前に捉えてきたことに再考を促すものでした。

本展は、独自の寓意表現を通して、人とモノ、生き物を、その境界を越えて自由に行き来させた桂の作品世界を、絵画の代表作、そして初出品の作品や本の仕事などによって紹介し、欧米の前衛とは別の文脈で育まれた創作の意味を多角的に検証するものです。釈然としないものの本質と付き合おうと、あらゆるものから自由な態度を貫いた桂の仕事。 本展はその複雑で奥深いユーモアに触れる絶好の機会となるでしょう。

http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/143/

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会 期  2013年4月6日(土)〜6月9日(日)
休館日  月曜日(4月29日、5月6日は開館)4月30日、5月7日
開館時間  10:00 〜 18:00(入場は閉館の30分前まで)
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