■-2017年1月9日[月・祝] 篠山紀信展 「快楽の館」[原美術館]

●はじめに─「篠山紀信×原美術館=快楽の館」
原美術館では、1960年代から現在まで常に写真界の先頭を走り続けてきた篠山紀信の個展を開催いたします。美術館での篠山紀信展といえば、「篠山紀信 写真力」展が2012年以来全国各地の美術館を巡回中ですが、本展はまったく異なるコンセプトにより、原美術館だけで開催するユニークな展覧会です。
本展のテーマは、1938年完成の邸宅が元になった原美術館を、篠山紀信がカメラによって《快楽の館》に変貌させることにあります。出品作品はすべて撮り下ろしの新作で、33名にものぼるモデルを起用したヌード写真─しかも、1点残らずこの原美術館で撮ったものなのです。実在の空間と展示された写真の中の空間が交錯し、紡ぎだす恥美で幻惑的な世界をぜひご覧ください。

●1 写真展としてはここが斬新
原美術館で個展を開催することになったとき、まず篠山紀信が提案したアイデアが「ここ(=原美術館)で撮った写真をここに帰す(=展示する)」ということでした。
 一般的に写真展というと、《よそ》=展覧会場とは別の場所で撮った写真を展示するのが通例ですが、本展は違います。出品作品はすべて《ここ》=原美術館で撮影され、さらにプリントのいくつかは、まさに《撮影したその場所》の壁面に展示します。したがって、写真の中のイメージ=《かつて・ここに・あった》と、展覧会場にいるという現実=《いま・ここに・ある》が交錯し、幻惑的であると同時に、一種《倒錯》的とさえ言える鑑賞体験になることでしょう。
写真家篠山紀信にとって、原美術館という場(もともとは私邸/第3節を参照のこと)は、《撮る欲望》をかきたて《撮る快楽》に浸れる場としての魅力を持っているということです。そして、上記のアイデアが出発点であるからこそ、本展は《ここだけ》で開催するもので、巡回展示は行われません。

●2 篠山紀信が創る「快楽の館」
ヌード写真の歴史はそのまま写真の歴史であると言ってもよいほど、写真の草創期(19世紀前半)から裸体を撮った写真は存在します。それはヌードが写真の本質に触れるものであり、写真が人を惹きつけてやまないメディアであることを如実に物語る主題であるからでしょう。篠山紀信は日本大学芸術学部の卒業制作から現在に至るまで数多くのヌードを撮り、人が《裸であること》から創りだし得る表現に挑戦を続けています。今回も、当館を舞台に「快楽の館」を創りだすために、全作品の主題をヌードで一貫させました。
 撮影は展覧会入れ替えの休館期間を利用して敢行されました。作品のない空っぽの展示室、竣工当時(1938)の面影が残る階段、木々が繁り落葉が舞う庭、通常は公開されない屋上、さらには当館特有の常設展示空間(第3節を参照のこと)など─篠山紀信は館内のあらゆる場所で、佇み・座り・横たわり・跳び・躍るモデルにカメラを向け、シャッターを切り続けました。そして、空間は身体のための背景ではなく、身体と空間が織り上げる、濃密なイメージの世界としての「快楽の館」が生み出されたのです。展覧会としては、当館の5つの展示室それぞれで変化をつけながら、重層的に「快楽の館」の世界を奏でていきます。

●3 原美術館とその空間
原美術館は、もともと個人邸宅として1938年に建てられたもので、西洋モダニスム建築のデザインを取り入れ、日本近代建築史の観点からも貴重な作例と言えます。1930年代の欧風邸宅を美術館に再生した例としては、東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)と並ぶものです。
建築デザインとしては、中庭を包みこむように緩やかな円弧を描いた空間構成と、外壁のオフホワイトのタイル張りが特徴的です。同じ1938年、東京国立博物館の現・本館がオープンしましたが(当時の名称は東京帝室博物館復興本館)、どちらも同じ渡辺仁(1887-1973)が設計しました。
 1979年の開館以来、原美術館では、この空間と作品との対話を大切にした展示構成を心がけてきました。かつての居間や寝室は企画ごとに展示を入れ替えるギャラリーに変わった一方、浴室や洗面所などのユーティリティースペースは、アーティストに依頼して建物と一体になったユニークな常設展示作品に生まれ変わっています。本展では、こうした常設展示作品(森村泰昌、宮島達男、奈良美智など)と篠山紀信による、ここでしかできないコラボレーションによる写真作品も展示いたします。


(左):森村泰昌の常設展示作品と
(右):宮島達男の常設展示作品と

●4 篠山紀信 プロフィール
1940年東京都出身。日本大学芸術学部写真学科在学中から広告制作会社ライトパブリシティ写真部で活躍、1961年に日本広告写真家協会展公募部門APA賞を受けて脚光を浴びる。1968年にライトパブリシティを退社し、フリーの写真家として旺盛な活動を行う。同年、最初の作品集「篠山紀信と28人のおんなたち」(執筆:三島由紀夫、発行:毎日新聞社)を出版。以来、刊行した写真集は300冊を越える。1976年、第37回ヴェネチア ビエンナーレ美術展において、日本館で《家》をテーマに個展開催(日本代表作家が個展形式で出品するのはこれが初の試み)。現在まで日本を代表する写真家として活躍を続け、受賞も数多い。主な受賞:日本写真批評家協会新人賞(1966)、日本写真協会年度賞(1970)、芸術選奨文部大臣新人賞(1972)、講談社出版文化賞(1973)、毎日芸術賞(1979)、東川町国際写真フェスティバル国内作家賞(1986)、など。

美術館は作品の死体置き場、
死臭充満する館に日々裸の美女が集う。

美女たちの乱舞、徘徊、錯乱、歓喜、狂乱、耽溺……
あらゆる快楽がこの館でくりひろげられる。

幻蝶が舞う夢と陶酔の館。
この祝祭は初秋の夜にはじまり、歳明け、厳冬の朝に散る。

たった4ヶ月余の一度だけの狂宴。

お見逃し無く。
2016年   篠山紀信

図版全て= 篠山紀信「快楽の館」2016年 ⓒKishin Shinoyama 2016

【開催要項】
展覧会名 篠山紀信展 快楽の館
欧文表記 Kishin Shinoyama , La Maison de rendez-vous
会期 2016年9月3日[土]- 2017年1月9日[月・祝] 開館日数:103日
会場 原美術館
東京都品川区北品川4-7-25 〒140-0001

Tel 03-3445-0651(代表) Fax 03-3473-0104(代表)
E-mail info@haramuseum.or.jp
ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
ブログ https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
Twitter http://twitter.com/haramuseum

主催 原美術館
協賛 株式会社プラザクリエイト
協力 株式会社講談社

開館時間 11:00 am – 5:00 pm(祝日11月23日をのぞく水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日にあたる9月19日、10月10日、1月9日は開館)、9月20日、10月11日、年末年始(12月26日-1月4日)
入館料 一般1,100円、大高生700円/原美術館メンバーは無料/20名以上の団体は1人100円引
交通案内 JR「品川駅」高輪口より徒歩15分/タクシー5分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下車、徒歩3分/京急線「北品川駅」より徒歩8分

【出品内容】
写真作品「快楽の館」 カラー/モノクロあわせ 77点

【写真集/図録】

本展開催にあわせて図録/写真集「快楽の館」を講談社より発行いたします。展覧会に出品されるイメージだけでなく、貴重なメイキング写真も掲載。詳細はこちら。原美術館 ザ・ミュージアムショップ:03-03-3445-2069

【関連イベント】
アーティストトーク 篠山紀信 ※終了
日時: 2016年9月3日[土]2:00~3:30 pm
場所: 原美術館 ザ・ホール
参加費:入館料が必要です(一般1,100円)

アーティストトーク第二弾 篠山紀信、「快楽の館」を語る
日時: 2016年12月23日[金祝]
詳細はこちらへ。

※ご来館の皆様へ
本展示は、ヌードを主題とした写真展ですので、その旨をご承知のうえ、ご入館ください。中学生以下の方々には、保護者または引率の大人が同伴してください。

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 トヨダ ヒトシ 映像日記・スライドショー
 2016年8月13日[土]、14[日]

篠山紀信展 「快楽の館」
2016年9月3日[土]-2017年1月9日[月・祝]

「エリザベス ペイトン」展(仮題)
2017年1月21日[土]-5月7日[日]

原美術館ウェブサイト
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp

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