解説 「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」展[原美術館]

好評開催中の「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」展、子ども向けワークショップ「ふしぎな現実」を、作家の言葉を交えてご紹介します。


「私のベッド (Mon Lit)」 2002年 ムラーノガラス、アルミニウム、飾りひも、フェルト 290 x 240 x 190 cm ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

色鮮やかなムラーノガラスが使われています。「ベッドは人が生まれ、眠って夢を見、愛を交わし、そして死ぬ場所。生や死を象徴する大切なモチーフです。」ジャン=ミシェル オトニエルは元私邸という原美術館のユニークな空間を意識し、最初に出会って頂く作品としてベッドを選びました。きっと家を訪れたような親密さを感じていただけることでしょう。「時が止まり、全ての者が眠る城を彷徨う『眠れる森の美女』の王子のように」、夢のような物語、もう一つの現実に誘われてほしい、という願いが込められています。


「秘密の箱 (Le Coffre à Secrets )」 2007年 ガラス、アルミニウム、鏡、木 84.5 x 71 x 50 cm
ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

なんとも魅惑的な名前を持つこの作品は、フランスのSaint-Just社の板ガラスを用いて作られたもので、本展に特別に加えられました。ここでは非公開ですが、中にはコニャックの瓶とグラスが入っています。(関連記事はこちらへ)


「涙 (Lagrimas)」 2002年 ガラス、水、テーブル 140 x 500 x 70 cm ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012 (下は部分)

「涙」はメキシコを訪れて制作されました。ガラスの器に水を満たし、さまざまな奉納品のかたちを浮かべた作品です。心臓や目玉など身体の一部や、血のように赤いネックレス、星など2000個にのぼるパーツから成り立っており、テーブルの横幅は5メートルあります。ミクロコスモスに吸い込まれるような魅力を感じてみてください。この作品を見てから展示室に目を移すと、自分自身が作品の一部になって浮かんでいるような気持ちになりませんか?


ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

ここは原美術館が邸宅だった頃、食後にお茶を楽しむサンルームでした。窓の外のイチョウの木に「2連ネックレス(Le Double Collier)」(2010年)が、その隣には「バナー No.1 (Bannière n˚ 1) 」(2003年)が展示されています。オトニエルは、「ガラスは天然の素材。自然光の中で変わるさまざまな表情を楽しんでほしい」と語っています。昼は陽の光に輝き、夜は闇の中で妖しい光を放ちます。展示室内には、ガラスを使うようになった初期に制作された人体の一部のような艶めかしい作品も点在しています。


手前:「黒は美しい (Black is Beautiful)」2003年 ムラーノガラス 320 x 80 x 15 cm
奥:「ホワイトゴールドのマンドルラ (Mandorle d’Or Blanc)」2011年 ムラーノガラス、ホワイトゴールド箔 130 x 60 x 15 cm ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012

「黒は美しい」は黒ガラスの玉を使った巨大な二連ネックレスです。作品名は、1960年代にアフリカ系アメリカ人の間で始まった文化運動―肌の色や髪の質、顔かたちなど、黒人に特徴的な要素を白人のそれに劣るとされた通念を一掃しようという運動に関係しているのではないでしょうか。この作品には、物や人それぞれの固有の美しさを発見しようとするオトニエルの眼差しが感じられます。


「ラカンの大きな結び目 (La Grand Double Noeud de Lacan) 」2011年 鏡面ガラス、金属 209 x 396 x 186 cm ⒸJean-Michel Othoniel/Adagp, Paris 2012 (展示風景撮影:米倉裕貴)

「精神分析家ジャック ラカンの理論、創造における三つの作用―“現実”、“象徴”、“想像”をモチーフにした作品です。これを展覧会の最後に置くことで、感受性豊かな日本の皆さんがどう感じてくださるか、知りたいのです。」近年、彼の作品は、かつてのような艶めかしさを排除し、抽象的なフォルムへと展開しています。「ラカンの大きな結び目」「ラカンの結び目」では、鏡面ガラスを用いて透明感にメタリックな輝きを加え、未来的なイメージが醸し出されています。

「ガラスに出会うまで長い試行錯誤がありました。ガラスはさまざまな文明・文化で用いられ、広く一般に知られる素材です。誰もがガラスの魔法―詩的なまなざしが日常にもたらす小さな魔法―を体験したことがあるはずです。ガラスは私のヴィジョンを表現してくれる素晴らしい素材です。砂が溶けて固まることで、すばらしい輝きを放つようになりますが、同時にいともたやすく壊れるものになります。そのきらめきとはかなさが好きなのです。まるで人生のようですね。」


(撮影:スズキアサコ)

一階の奥へお進みください。オトニエル氏が自ら発案した子ども向けワークショップ「ふしぎな現実」(共催:ボンポワンジャポン株式会社)を会期中毎日開催しています。海外で公開中のものを含むジャン=ミシェル オトニエルの作品12点を、AR(拡張現実)の技術を用い、3D画像でご鑑賞いただけます。ピクトグラムをカメラにかざすとオトニエルの作品が大画面に立体的にプロジェクションされ、世界中に点在する作品を仮想体験できます。また子どもたちがぬり絵を通して絵を描くことの楽しさを学べるコーナーもご用意しております。ぬり絵コンテストも開催中。

ここでご紹介した内容はほんの一部。実際に足を運んでオトニエルの世界を体験して頂ければ幸いです。

ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」展、オトニエルの子ども向けワークショップ「ふしぎな現実」は3月11日[日]まで原美術館にて開催中。(タイトルをクリックすると関連ページへ飛べます。)

※土日は混雑しておりますので、平日のご来館がお薦めです。
※本展では特別に作家の許可を得て、ご来場者による館内撮影を可能にしております。ただし混雑時には撮影を制限させていただく場合があります。あらかじめご了承ください(2月10日現在)。

【掲載記事の一部】
■オトニエル、ギャラリーガイド形式のインタビュー
Web Openers フランスを代表する現代美術作家のこれまでとこれから 『ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ』
■1月6日[金]オープニングレセプションリポート
Fashion Press 原美術館で開催中の「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」展レポート
■展評
毎日新聞@展覧会:ジャン=ミシェル・オトニエル展 ガラスの可変性と物語性

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原美術館
杉本博司 ハダカから被服へ
3月31日[土]―7月1日[日]

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