ターニヤ・アル゠フーリー & ズィヤード・アブー・リーシュ「電力と権力を探して」@ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

Photo by Elina Giounanli

 

KYOTO EXPERIMENT 2025|展示
ターニヤ・アル゠フーリー & ズィヤード・アブー・リーシュ「電力と権力を探して」
2025年10月11日(土)-11月16日(日)
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
https://gallery.kcua.ac.jp/
開館時間:10:00–18:00
休館日:10/27、11/4、11/10
企画担当:川崎陽子、塚原悠也(KYOTO EXPRIMENT 共同アーティスティック・ディレクター)、藤田瑞穂(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAチーフキュレーター/プログラムディレクター)
展覧会URL:https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2025/13650/

 

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでは、レバノン内戦下に生まれたライブ・アーティストのターニヤ・アル゠フーリーと、その夫で歴史家のズィヤード・アブー・リーシュによる展覧会「電力と権力を探して」を開催している。

本作は、中東の小国レバノンは、数十年間に及ぶ電力危機とこれに端を発する政情不安に見舞われてきたことを背景に、ある停電の夜にアル゠フーリーとアブー・リーシュが、この問題の根源を解明するプロジェクトに乗り出し、その過程で得た事実を観客参加型のサウンドインスタレーション形式で提示する。複数の国で収集した公文書や記録文書など、これまで隠蔽されてきた資料を含むこれらは、レバノンの電力インフラと旧宗主国や欧米間の覇権争い、マネーゲームをめぐる歴史の闇の痕跡であり、ひとつずつ手にとって見ていくことで、観客自身もこの歴史の継承者となっていく。なお、上演にあわせてアラブ映画研究者の佐野光子によるレビューも公開されている。

 

Photo by Elina Giounanli
Photo by Elina Giounanli

 

ターニヤ・アル゠フーリーは、集団的記憶の構築と連帯感の醸成について考える、双方向的なインスタレーション作品、パフォーマンスを創作している。作品は、アーティスト本人や協働者によって集められ、取捨選択された触覚的、聴覚的、視覚的な素材によって命を吹き込まれ、最終的には観客の参加によって変容する。それらの作品は、強制退去、国境制度、民営化、国家による暴力、空間の政治学といった問題を扱い、いくつもの言語に翻訳され、6大陸、32カ国で、美術館からケーブルカーまで、さまざまな場所で発表されている。ニューヨークのバード大学で、演劇・パフォーマンスプログラムの優秀レジデント・アーティストに選出、准教授を務める。同大学人権芸術センターの設立ディレクターでもある。ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校で博士号を取得。イギリスのアーティストによるコレクティブ、フォーレスト・フリンジのアソシエイト・アーティスト。レバノンで都市のリサーチとライブ・アートに関わるコレクティブ、ディクタフォン・グループの創立メンバー。ハーブ・アルパート芸術賞、ソロス芸術フェローシップ、ベッシー賞優秀作品賞、ANTI国際ライブ・アート賞、トータル・シアター賞、ザ・アーチーズ・ブリック賞を受賞。これまでにANTIフェスティバル(フィンランド)のアドバイザリー・ボードに参加し、現在はCAPIm-The Centre for Art and the Political Imaginary(芸術と政治的想像のセンター/スウェーデン)でアドバイザリー・ボードのメンバーを務める。

ズィヤード・アブー・リーシュは、近代中東・北アフリカ(MENA)地域の研究者。アメリカのバード大学で、人権と中東研究の准教授を務めるほか、人権と芸術に関する修士課程のプログラムを統括する。研究の中心は、特にレバノンとヨルダンにおける、国家の形成、経済発展、大衆動員。アメリカのジョージタウン大学・現代アラブ研究センターでアラブ研究の修士号、ロサンゼルスのカリフォルニア大学で歴史学の博士号を取得。著書に『The State of Lebanon: Popular Politics and Institution Building in the Wake of Independence(レバノン国家:民衆政治と独立後の制度構築)』(スタンフォード大学出版局より出版予定)、共同編著に『The Dawn of the Arab Uprisings: End of an Old Order?(アラブ蜂起の夜明け:旧体制の終焉?)』(2012)がある。「Garbage Politics in Lebanon(レバノンにおけるゴミをめぐる政治)」「Municipal Elections in Lebanon(レバノンの地方選挙)」「Lebanon Beyond Exceptionalism(レバノン—例外主義を超えて)」など、いくつもの記事や書籍の章を執筆している。「アラブ研究ジャーナル」およびウェブマガジン「Jadaliyy」の共同編集者、レバノン論文夏季研修の共同ディレクターも務める。

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