鴻池朋子展 メディシン・インフラ @ 青森県立美術館、周辺野外、国立療養所松丘保養園 社会交流会館


制作中の風景 ©Tomoko Konoike

 

鴻池朋子展 メディシン・インフラ
2024年7月13日(土)-9月29日(日)
青森県立美術館(青森市安田字近野185)
https://www.aomori-museum.jp/
開館時間:9:30–17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:7/22、8/13、8/26、9/9、9/24
国立療養所松丘保養園 社会交流会(青森市石江字平山19)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/hansen/matuoka/welcome.html
開館時間:10:00–16:00
休館日:月
展覧会担当:奥脇嵩大(青森県立美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.aomori-museum.jp/schedule/13464/

 

青森県立美術館では、東日本大震災以降、地球の振動を新たな画材と感じ、旅をしては野外の技法を習得し、時に土木工事や縫いものをメディアに「絵」を描いてきた鴻池朋子の個展「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」を開催する。《メディシン・インフラ(薬の道)》は、鴻池が各地を巡り、縁のあった場所に自作を展示保管してもらう長期的なプロジェクト。2023年から始まり、自身の住む東京から北へ向かい、青森をはじめ、茨城、福島、宮城、岩手、北海道へとその活動を広げている。青森県立美術館は本プロジェクトの「地図帳やランドマーク」の役目を担い、新作展示や現地レポートを通じて、観客に鴻池の軌跡を中継する。

鴻池朋子(1960年秋田県生まれ)は、絵画、彫刻、手芸、歌、映像、絵本などさまざまな画材とメディアを用い、また旅での移動や野外でのサイトスペシフィックな活動によって、芸術の根源的な問い直しを続けている。1985年に東京藝術大学日本画専攻を卒業した後、おもちゃ、雑貨の企画を経て、88年より作品の発表をはじめる。「第0章」(大原美術館、岡山、2006)や「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」(東京オペラシティアートギャラリー、2009)など、国内外の美術機関で数々の展覧会を開いていたが、2011年の東日本大震災以降、人間と自然の関係性において深く悩み、それまでの制作を一旦中止し、動物−人間学、おとぎ話、考古学、人類学、民俗学などの分野の研究者とのコラボレーションを重ねたり、継続的なプロジェクトを行ない芸術の問い直しを試みている。個展「根源的暴力」(神奈川県民ホールギャラリー、2015)と同展出品作に新作を交え再構成した「根源的暴力 Vol.2 あたらしいほね」(群馬県立近代美術館、2016)が高く評価され、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。その後も「Fur Story」(リーズ芸術大学、イギリス、2018)、「ハンターギャザラー」(秋田県立近代美術館、2020)など各地で個展を開催。「ちゅうがえり」(アーティゾン美術館、東京、2022)で毎日芸術賞、「みる誕生」(高松市美術館、2022/静岡県立美術館、2022)で紫綬褒章を受賞した。また、著書に絵本『みみお』(青幻舎、2001)、絵本『焚書 World of Wonder』(羽鳥書店、2011)、『根源的暴力』(羽鳥書店、2015)、『どうぶつのことば——根源的暴力をこえて』(羽鳥書店、2016)などがある。

 


制作中の風景 ©Tomoko Konoike


制作中の風景 ©Tomoko Konoike

 

本展は美術館とその周辺野外のほか、サテライト会場として美術館にほど近い緑豊かな森の中に位置する国のハンセン病療養施設である松丘保養園 社会交流会館でも作品が展示される。青森県立美術館では、ウクライナやバルカン半島に思いを馳せながら縫ったカーテンを能登半島地震の被災者住宅に設置する「物語るカーテン」や、個人の物語を縫ったランチョンマットを作る「物語るテーブルランナー」などの継続的なプロジェクトから生まれた制作物を展示。また、全国の美術館から車椅子を借り受け同館のアレコホールで展示使用することを通じて列島を覆う美術館のネットワーク・インフラを使いなおそうとする「車椅子アレコバレエ」や、鴻池作品を素材に研究活動を行なう研究者が自らの展開を紹介するアートラボ「新しい先生は毎回生まれる」など、従来的な作品構造や制度的枠組みを越え、個人的な営みがもつ可能性を拡張する作品を展開。加えて新作の指人形などを展示する。

国立療養所松丘保養園 社会交流会館では、《物語るテーブルランナーin大島青松園》などの鴻池の作品以外に、療養所から今も生み出される創作の数々を紹介する。鴻池は2019年に瀬戸内国際芸術祭の招へいを受け国立療養所大島青松園を訪れたことをきっかけに、ハンセン病療養所や施設から生まれた作品との関わりを続けており、本展でもその活動を継続。入居者・成瀬豊と成瀬が発足時のメンバーであった熊本の国立ハンセン病療養所菊池恵楓園絵画クラブ「金陽会」の作品約30点のほか、松丘保養園近隣の新城中学校美術部と北中学校総合文化部員が《美術館ロッジ》プロジェクトで制作した梵珠山の六角堂休憩所に設置する予定の皮絵など、地域とその施設に根ざした作品を展開する。

また指人形の作品を使ったトークのほか、静岡県立美術館館長の木下直之によるノート公開やお話し、山川冬樹のライブパフォーマンスなどの関連イベントを開催予定。

 


制作中の風景 ©Tomoko Konoike

 

関連イベント
美術館(1)旅する学芸員と指人形一座
2024年7月13日(土)10:00–12:00
ファシリテーター:石田智子・福田千恵(高松市美術館)
会場:青森県立美術館展示室
参加費無料(要企画展チケット)

美術館(2)オープニングトーク
2024年7月13日(土)13:30–15:00
出演:指人形、鴻池朋子、奥脇嵩大(本展担当学芸員)
会場:青森県立美術館 1階総合案内横「エントランスギャラリー」集合
参加費無料(要企画展チケット)、事前申込不要

美術館(3)筆談ダンス
2024年8月10日(土)10:00–11:30
出演:木下知威(歴史家/障害史・建築学)、鴻池朋子
会場:青森県立美術館 1階総合案内横「エントランスギャラリー」集合
参加費無料(要企画展チケット)、事前申込不要

美術館(4)真夏の中間トーク
2024年8月24日(土)10:00–11:30
出演:指人形、鴻池朋子、奥脇嵩大(本展担当学芸員)
会場:青森県立美術館 1階総合案内横「エントランスギャラリー」集合
参加費無料(要企画展チケット)、事前申込不要

社会交流会館(1)115回目の夏
2024年8月24日(土)15:00–17:00
ライブパフォーマンス、朗読、講話、トーク 出演:山川冬樹 (アーティスト) 、鴻池朋子
会場:国立療養所松丘保養園 社会交流会
参加費無料、事前申込不要

社会交流会館(2)お話
2024年8月25日(日)10:00–12:00
お話:「金陽会と旅をして」藏座江美 (旅するキュレーター)
お話:「こうのいけともこと旅をして」木下直之 (静岡県立美術館館長)
お話しの後、鴻池朋子を交えての鼎談
会場:国立療養所松丘保養園 社会交流会
参加費無料、事前申込不要

8月の逗留執筆
2024年8月10日(土)-8月18日(日)
木下知威の公開執筆と筆談
会場:青森県立美術館、国立療養所松丘保養園 社会交流会

 


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