浪のしたにも都のさぶらふぞ @ 山口情報芸術センター[YCAM]


撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

 

浪のしたにも都のさぶらふぞ
2023年6月3日(土)-9月3日(日)
山口情報芸術センター[YCAM]スタジオA
https://www.ycam.jp
開館時間:10:00–19:00
休館日:火(火曜日が祝日の場合は翌日)
キュレーター:吉﨑和彦
展覧会URL:https://www.ycam.jp/events/2023/there-is-another-capital-beneath-the-waves/
※新作ライブパフォーマンス《浪のしたにも都のさぶらふぞ》(約40分)
上演時間:平日 14:05–、土日祝 10:45–/12:50–/14:55–/16:20–

 

山口情報芸術センター[YCAM]では、開館20周年記念事業のひとつとして、台湾を拠点に活躍するシュウ・ジャウェイ、チャン・ティントン、チェン・シェンユゥの新作を発表する展覧会「浪のしたにも都のさぶらふぞ」を開催する。近年、3人は共同で、日本統治時代の台湾における砂糖産業を起点に、台湾と日本の歴史的関係や東アジアの近代化の記憶を辿るプロジェクトを行なっている。2021年には、このプロジェクトの第一部として、製糖業で発展した台湾の街である虎尾(フーウェイ)を舞台に制作したインスタレーション《等晶播種》を台北で発表。本展では、それに続く第二部として、人形浄瑠璃とCGアニメーションを組み合わせ、映像とライブパフォーマンスからなる作品を、YCAMとのコラボレーションにより制作、発表する。産業の発展にともない国際貿易港となった北九州の門司および門司港を舞台に、近代化や太平洋戦争の記憶を多様なアプローチから紐解き、日本と台湾との間の知られざる歴史を描き出す。

 

シュウ・ジャウェイ[許家維](1983年台中生まれ)は、従来の歴史の語りでは見過ごされてきた人間、物質、場所の関係性を紡ぎ直すような映像作品を制作し、台湾を含むアジア一帯の地理的、歴史的、文化的繋がりや、時代の荒波に翻弄される個人の歴史を浮かび上がらせる。2013年に第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ台湾館に出品作家のひとりとして参加、同年ヒューゴ・ボス・アジア・アート賞ファイナリストに選出される。台北(2016)、上海、光州、釜山、シドニー(いずれも2018)、シンガポール(2019)などの国際展に参加。また、アーティストのホー・ツーニェンとともにアジア・アート・ビエンナーレ2019(国立台湾美術館)を共同企画。日本では、「シアターコモンズ ’18」(2018)や森美術館の「MAMスクリーン」(2018)、国際芸術祭「あいち2022」で作品を発表している。
チャン・ティントン[張碩尹](1982年台北生まれ)は、科学や生物学などの知識を元に没入型インスタレーション、映像、演劇的作品を制作し、人間、科学技術、社会の関係性について考察してきた。台湾の近代を個人史の視点から俯瞰する作品をはじめ、多様なアプローチで現代社会の側面を切り取るプロジェクトを手掛ける。第6回広州トリエンナーレ(2018)や第11回台北ビエンナーレ(2018)などの国際展に参加。主な個展にキューブ・プロジェクト・スペース(2020)、北師美術館(MoNTUE)(2021)、台北市立美術館(2019、2023)など。主な受賞歴に、香港アート・セントラルRISEアワード2016、第19回台新芸術賞(2019)、台北アートアワード2020など。
チェン・シェンユゥ[鄭先喻](1984年高雄生まれ)は、アーティストおよびソフトウェア開発者。電子機器を用いた作品や、ソフトウェア、実験的な生体電子工学的装置を手掛け、人間の行動、感情、ソフトウェア、機械の間の関係性に重きをおいた作品を通して、社会と環境に対する独自の視点をユーモラスに表現してきた。第7回広州トリエンナーレ(2020)に参加。台湾およびアジア、ヨーロッパで個展やグループ展を行なう。主な受賞歴に、銅鐘藝術賞(2019)、第19回台新芸術賞(2021)など。

 


撮影:山中慎太郎(Qsyum!)


《等晶播種》の展示風景(台湾現代文化実験場[C-LAB]、2021年)撮影:劉哲均

 

本展は、新作を含む二部作で構成される。第一部の《等晶播種》は、日本統治時代に建てられた製糖工場をはじめ近代化の遺産が残る虎尾の街の歴史を、台湾の伝統的な人形劇による語りや音楽とともに描く映像インスタレーション。第二部の新作《浪のしたにも都のさぶらふぞ》の舞台である門司にも、現在に至るまで稼働し続ける製糖工場があり、かつては虎尾の工場と同じ会社が運営していた。ふたつの街は砂糖という繋がり以外にも、戦時中に戦略的に重要な拠点であったため、空襲による大きな被害を受けたという共通点を持つ。作品タイトルは、「壇ノ浦の戦い」の様子を綴った『平家物語』の一節を引用したもので、現在の山口県下関市にあたる壇ノ浦の海に、祖母にあたる平時子が8歳の安徳天皇を抱え入水する際に言った言葉。本作では、門司および門司港の街の記憶を、地域に伝わる平家の物語と重ねながら、映像とライブパフォーマンスにより描き、人形浄瑠璃の人形遣いと人形、パフォーマーとアバターの動きが、複雑に絡み合う「操る-操られる」関係性を象徴的に表す。歴史の中で繰り返されるこの関係性を生み出す動力とは何なのかを、伝統と現代の表現を織り交ぜ、現実世界と仮想世界を行き来しながら見る者に問いかける。

 


撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

 

関連イベント
アーティストトーク
2023年6月3日(土)14:00–15:30
登壇者:シュウ・ジャウェイ、チャン・ティントン、チェン・シェンユゥ
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
参加費:無料(要申込)通訳あり

「The Flavour of Power」展とのクロストーク
2023年6月4日(日)14:00–16:00
登壇者:シュウ・ジャウェイ、チャン・ティントン、チェン・シェンユゥ、バクダパン・フード・スタディ・グループ
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
参加費:無料(要申込)通訳あり

サンカクトーク
2023年6月17日(土)、7月9日(日)、7月23日(日)、8月26日(土)各回16:00–18:00
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
参加費:無料(要申込)

キュレータートーク
2023年6月18日(日)11:30–12:30、7月23日(日)13:40–14:40、8月26日(土)13:40–14:40
講師:吉﨑和彦
会場:山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
参加費:無料(要申込)

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