星空と路 —3がつ11にちをわすれないために—(2022)@ せんだいメディアテーク


 

星空と路 —3がつ11にちをわすれないために—(2022)
展示|2021年3月9日(水)- 3月13日(日)(1f オープンスクエア)
展示|2021年3月15日(火)- 4月24日(日)(7f スタジオa)
上映|2021年3月12日(土)- 3月13日(日)(7f スタジオシアター)
せんだいメディアテーク
https://www.smt.jp/
開場日時:10:00-18:00(展示|1f オープンスクエア)
9:00-20:00(展示|7f スタジオa)
「上映」のスケジュールは公式ウェブサイトを参照
休場日:3/24(木)
3がつ11にちをわすれないためにセンター:https://recorder311.smt.jp/

 

せんだいメディアテークでは、「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の参加者による記録を紹介する毎年恒例となった企画『星空と路 —3がつ11にちをわすれないために—(2022)』を開催する。

せんだいメディアテークが2011年5月3日に開設した3がつ11にちをわすれないためにセンター(略称:わすれン!)は、東日本大震災による甚大な影響に対し、ともに向き合い考え、復興への長い道のりを歩きだすために、復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォーム。映像、写真、音声、テキストなど、さまざまなメディアを活用し、情報共有や復興推進に努めるとともに、収録されたデータを「震災の記録・市民協働アーカイブ」として記録保存し、ウェブサイトでの公開やライブラリーへの配架、記録を囲み語る場づくりなど、さまざまなかたちで記録の利活用を試みている。

『星空と路』は、わすれン!の参加者による記録を展示や上映会を通じて紹介するとともに、これまでに寄せられた記録の利活用の試みの場として、毎年3月に開かれている。本年度の展示部門では、震災当時の「食」にまつわる写真をきっかけに記憶を思い出し、共有していく参加型の試み「3月12日はじまりのごはん−いつ、どこで、なにたべた?−」や、ふたりひと組で小部屋に入り、対話というかたちで震災にまつわる話を録音する「わすれン!録音小屋」など、「わすれン!企画のプロジェクト」はもちろん、さまざまな展開を遂げる「市民によるプロジェクト」から7つの試みを紹介する。3月12日と3月13日には、石巻市出身の佐藤そのみが大学時代に製作したふたつの映像作品や、HOPE FOR projectの活動を振り返る映像作品を取り上げるとともに、「資料の利活用」という点で注目すべきプロジェクト「ダイブわすれン!」によるプログラムを上映する。

 


わすれン!録音小屋

 

「市民によるプロジェクト」として紹介されるのは、まちづくり部が取り組む「リアルふっこうボイス」は、震災の被害を受けた地域の人々の復興やまちづくりに対する生の「こえ」を記録し、配信するラジオ番組。本企画では2011年7月の初回を含む全43回の配信で紹介してきた118人の「こえ」、10年分のまちの「こえ」を振り返る。3月13日には、佐藤知久(京都市立芸術大学 芸術資源研究センター教授/文化人類学)をゲストに迎え、復興において計画やまちをつくるための手段と化してきた声を再考する。

同じく声/語りに着目するのは、「Team Sendai」。2010年に仙台市職員の自主的勉強会グループとして発足した同団体は、東日本大震災以降、「災害エスノグラフィー」というヒアリングの手法を用いて、仙台市職員の体験談の聞き取りや活用を開始。2020年からは市民を対象としたヒアリングにも取り組む。本企画では、メンバーの柳谷理紗が仙台市青葉区片平地区に住む今野均、仙台市若林区荒浜地区に住む佐藤豊に話を聞いた映像を展示する。

 


リアルふっこうボイス

 

写真による継続的な試みとしては、わすれン!企画の「3.11定点観測写真アーカイブ・プロジェクト」が挙げられるが、佐藤泰美もまた、撮影場所と日時がわかる映像を共有することの意味と可能性に関心を持ち、名取市閖上の日和山から見える8方向の景色を2011年5月から毎月撮影している。本企画では「日和山月報」として、定点観測写真960枚に加え、毎月のスナップ写真、ドローン撮影による映像などを含めたスライドショーを展示する。

一方、髙橋親夫は定点観測ではなく、震災後に福島県浪江町や双葉町に通いつづけ、人がいなくなったまちの風景の変化とともに、今なお残る子どもたちの暮らしの痕跡を写真に収めてきた(「ここにいた時は子どもだった」)。宙崎抽太郎による「参佰拾壱歩の道奥経(サンビャクジュウイチホノミチノクキョウ)」も個人による記録の試み。震災から4年半後の2015年9月にようやく故郷・仙台を訪れた宙崎が、「ただ歩く」しかなかったと被災地を歩き回って撮影した素材に、「言葉にならない言葉」、「脱臼語としての自作経」を重ねた映像と言葉による実践。

 


参佰拾壱歩の道奥経(さんびゃくじゅういちほのみちのくきょう)

 

HOPE FOR project」は、震災遺構となった荒浜小学校を拠点に地元の小中学校の卒業生が中心となり、2012年から毎年3月11日に元地域住民だけでなく、荒浜地区を想う人びとが集える場づくりに取り組んできた。本年度は展示とともに、3月13日には「3月11日を荒浜で過ごす HOPE FOR projectの10年」と題し、関係者の証言など、活動の舞台裏を記録した映像作品などを上映する。

継続性を伴う多くの試みにとって、10年という節目はそれまでの活動を振り返る機会として存在したが、一方で、「かつて小中学生だった私たちが、3.11から10年目の今だからこそ、さらけ出せる胸の内がある」と語るのは、東北に思いを寄せる国内外の大学生・留学生が立ち上げた「Project San-Eleven」。震災当時小中学生だった同世代の体験談などを集める同プロジェクトは、被災の度合いにかかわらず、さまざまな地域に住む若者たちが綴ったことばを冊子にまとめるとともに、これまでの活動を振り返る。

 


Project San-Eleven

 

本年度の上映部門では、前述のHOPE FOR projectや、後述するダイブわすれン!のほか、3月12日には、石巻市出身の佐藤そのみが大学時代に同市の大川地区で撮影した自主映画『春をかさねて』(震災直後の大川地区を舞台にしたフィクション)、『あなたの瞳に話せたら』(多くの犠牲を出した「石巻市立大川小学校事故」にまつわるドキュメンタリー)の2作品を上映する。上映後のトークでは、映像作家の小森はるかとともに、佐藤が制作の経緯や、記録と表現への向き合い方について語る。

そして、わすれン!発足から10年、これまで蓄積されたわすれン!の資料の海に潜る=ダイブすることから、これからの資料の利活用について考える新たな取り組みとしてはじまった「ダイブわすれン!」。本年度は、尾宣信(映画研究者)、明貫紘子(キュレーター)、中村大地(作家・演出家)による鼎談映像や、関連資料を展示するほか、これまでに発行された「わすれン!DVD」99本の中からそれぞれ選んだ映像を「ダイブわすれン!」セレクションを上映する。

 


佐藤そのみ


「ダイブわすれン!」セレクション

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