青木野枝『Mesocyclone』@ ANOMALY


青木野枝、ANOMALYのためのプランドローイング 2021年 ©Noe Aoki Courtesy of ANOMALY

 

青木野枝『Mesocyclone』
2021年4月17日(土)- 5月22日(土) 6月5日(土)※会期延長
ANOMALY
http://anomalytokyo.com/
開館時間:12:00-18:00(金曜は20:00まで)
休館日:日、月、祝

 

ANOMALYでは、鉄を中心とした固く重い素材を扱いながら、大気や水蒸気などをモチーフに万物がうつろいゆくなかに在る生命の尊さを軽やかに表現してきた彫刻家、青木野枝の個展『Mesocyclone』を開催する。

青木野枝(1958年東京都生まれ)は、制作活動をはじめた1980年代から民俗学や文化人類学に関心を抱き、地球に水よりも多く存在し、古来より人類の近くに在った鉄という素材に魅了され、溶断と溶接という鉄を扱う上での基本的な技術を繰り返すことで、まるでドローイングを描くかのように空間に展開する作品を制作してきた。「つくって、置き、崩す」を繰り返す、その営みのなかに自らの彫刻があると考える青木は、空間を観察し、そこに在るもの、また、そこを訪れるものさえも作品の一部として取り込み、空間そのものの質と意味を鮮やかに変容させる一方で、展覧会終了とともに解体される。2019年から2020年にかけて、長崎県美術館、霧島アートの森、府中市美術館で開催された大規模な個展でも、同じ作品群を巡回展示するのではなく、それぞれの空間に向き合い、新作を展示することにこだわりを見せた。

ANOMALYでの初個展となる本展でも、その空間を吟味し、空間を大胆に変容させる巨大な鉄の最新作《Mesocyclone》を発表し、同作品は展覧会終了後に解体される。

 


青木野枝《霧と山》2019年 霧島アートの森展示風景 撮影:山本糾 ©Noe Aoki Courtesy of ANOMALY

 

青木は1983年に武蔵野美術大学大学院造形研究科(彫刻コース)を修了し、86年より若林奮の庭の仕事のアシスタントを務めながら自身の制作に取り組み、95年には国立国際美術館の中堅作家を紹介する「近作展」シリーズで個展を開催。2000年には青木がひとつの転換期と位置付ける個展『青木野枝展ーー軽やかな、鉄の森』を目黒区美術館で開催し、以来、青森公立大学国際芸術センター青森、下山芸術の森 発電所美術館(富山)、上海美術館、会津創作の森(福井)での個展や、神奈川県立近代美術館・葉山の企画展『プライマリーフィールド』(2007)、瀬戸内国際芸術祭(2010)など、国内外で展覧会を重ねる。2012年には個展『青木野枝|ふりそそぐものたち』を豊田市美術館と名古屋市美術館の二館同時開催を実現し、翌年のあいちトリエンナーレ2013に参加。2017年には中原悌二郎賞を女性として初めて受賞。また、制作活動に並行して、20年にわたって子どもたちと一緒に鉄を切るワークショップを各地で積極的に開催し、地元の農作業や祭事に継続して参加している。

 


青木野枝《立山/長崎》2019年 長崎県美術館展示風景 撮影:山本糾 ©Noe Aoki Courtesy of ANOMALY

 

突然、螺旋状の彫刻をつくると決めた。
それが自立するかわからないまま、つくり出してみる。
何故ぐるぐると上昇し下降するのか。
何故螺旋なのか。
どこが螺旋なのか。
何を螺旋状というのか。

そして、これを「Mesocyclone」というタイトルにしようと決めたころ、
眩暈を生まれて初めて体験した。
天井の光が渦のようにまわり始めて落ちていく。
まわりのものがくるくると動いて落ちていく。
今まで両脚で立っていたことが信じられない。
どこが上なのかもわからない。
地表は固い平面ではない。
風景はそれ自体も動くものなのだった。
今まで見たことのなかった状況、それをつくりたい。

青木野枝 2021年4月(本展プレスリリースより)

 


青木野枝《曇天1、2》2019年 長崎県美術館展示風景 撮影:山本糾 ©Noe Aoki Courtesy of ANOMALY

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