アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-


グレゴール・シュナイダー「消えた現実」

 

アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-
2019年9月14日(土)- 11月10日(日)
http://trans-kobe.jp/
会場:神戸市内(新開地、兵庫港、新長田を中心とする3エリア)
定休日:会場により異なるが、基本的に火(ただし10/8、22は開館)
※詳細は公式ウェブサイトを参照
ディレクター:林寿美

 

2019年9月14日より、地域がその個性を発揮し内外の各地域と直接結びつくグローカル・シティの先鋒を目指す神戸市は、グレゴール・シュナイダーとやなぎみわのふたりのアーティストを招聘した『アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-』を開催する。

ディレクターを務めるのは、林寿美。川村記念美術館(現・DIC川村記念美術館)勤務を経て、ヨコハマトリエンナーレ2014のキュレーター、国立国際美術館の客員研究員などを歴任してきた林は、近年、世界各地で開催が相次ぐ芸術祭とは一線を画し、限られた参加作家と主要展示施設を持たないプロジェクトに取り組む。現在の神戸港ができる遥か昔、平清盛が拓いた兵庫港、明治から昭和にかけて「東の浅草、西の新開地」と謳われ芸能が盛んだった新開地、1995年の阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた新長田という神戸のルーツともいえる地域を舞台に、グレゴール・シュナイダーとやなぎみわのふたりのアーティストが、何かを”飛び越え、あちら側へ向かう”ための試みを展開する。

 


グレゴール・シュナイダー「浴室」2014年

 

グレゴール・シュナイダー(1969年ドイツ・ライト生まれ)は、16歳の頃から現在まで続けている、自宅の部屋の中に別の部屋を、既存の壁の内側に別の壁や窓をつくる作品「家 u r」に代表されるように、空間の公私の質にかかわらず、時空がねじれたような未知なる空間への探求を続けている。2001年には第49回ヴェネツィア・ビエンナーレにドイツ館代表作家として参加し、ライトの「家 u r」をヴェネツィアのドイツ館内に再構築した「死の家 u r」を発表し、金獅子賞を受賞している。2005年の第51回ヴェネツィア・ビエンナーレでは、サン・マルコ広場に10数メートル四方の黒い立方体「Cube Venice 2005」の設置を試みたが、開幕直前に作品が「政治的」であるとの理由で設置を拒否された(同作品はその後、複数の都市で何度か試みられるも実現せず。2007年にハンブルク・クンストハレでマレーヴィチの「黒の正方形」との関係を前面に出すことで実現している)。同作のみならず、2012年にはカッセル市内の教会に展示を予定していた「It’s all Rheydt」が同時期に開催するドクメンタからの圧力、2014年のルール・トリエンナーレで展示を予定していた観客がその中に入ることのできる巨大なインスタレーション「Totlast」がデュイスブルク市長により、展示中止に追い込まれている。一方、ヨコハマトリエンナーレ2014やミュンスター彫刻プロジェクト2017など世界各地の国際展での展示実績も多数。

本展では、観客が神戸市内8箇所の展示会場に設けられた12の作品を第1留から第12留までを訪ね歩く「美術館の終焉−12の道行き」を発表する。JR神戸駅南口の広場「デュオドーム」を出発し、1968年に衛生研究所として建設された旧兵庫県立健康生活科学研究所、神戸アートビレッジセンター、日時を限定して公開される私邸、かつてたくさんの港湾労働者が暮らした居住区に開設された神戸市立兵庫荘、1918年に開場し100年以上の歴史を持つ丸五市場などをめぐりながら、日常の空間や時間に生まれるわずかな捻れとともに神戸という街を経験していく。

 


兵庫港・中央卸売市場でのやなぎみわ舞台車「花鳥虹」


やなぎみわ「日輪の翼」2016年 新宮公演 撮影:表恒匡

 

神戸市内を訪ね歩くシュナイダーの作品に対し、やなぎみわ(1967年兵庫県生まれ)は、神戸市中央卸売市場本場内に設置した特設会場で、10月4日から6日までの3夜のみ、野外劇『日輪の翼』を上演する。やなぎは1990年中頃よりCGや特殊メイクを駆使した写真で、若さと老いといった女性を取り巻く諸問題への洞察を試みる。2009年には第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館で個展『老少女劇団』を実現し、翌2010年から演劇プロジェクトを中心とした活動に取り組む。ヨコハマトリエンナーレ2014をきっかけに立ち上げたステージトレーラー・プロジェクトは、PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015を経て、トレーラー車をステージの母体とした野外演劇『日輪の翼』として展開し、横浜、新宮、高松、大阪、京都で野外上演している。

本展に先立つ2017年には、港都KOBE芸術祭で野外劇『日輪の翼』のための移動舞台トレーラーを展示しており、本展では、『日輪の翼』を恵比寿神の漂流と兵庫津で入滅した一遍上人の遊行に重ね、踊り念仏とともに上演する。また、会期中は神戸アートビレッジセンターでドキュメンタリー映像の上映も行なう。

なお、『アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-』会期中には、東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートでグレゴール・シュナイダーの個展(9月25日〜11月9日)、神奈川県民ホールギャラリーでやなぎみわの個展『神話機械』(10月20日〜12月1日)が開かれる。

 


グレゴール・シュナイダー


やなぎみわ

 

ART iT Interview Archive
やなぎみわ「1924——転換期の芸術」(2011年9月)

 

 


 

同時期開催
『グレゴール・シュナイダー』
2019年9月25日(水)- 11月9日(土)
ワコウ・ワークス・オブ・アート
https://www.wako-art.jp/

『やなぎみわ展 神話機械』
2019年10月20日(日)- 12月1日(日)
神奈川県民ホールギャラリー
https://www.kanakengallery.com/

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