手塚愛子展『Dear Oblivion −親愛なる忘却へ−』@ スパイラルガーデン


手塚愛子「必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)」制作過程

 

手塚愛子展『Dear Oblivion −親愛なる忘却へ−』
2019年9月4日(水)-9月18日(水)
スパイラルガーデン
https://www.spiral.co.jp/
開廊時間:11:00-20:00
会期中無休
監修:正路佐知子(福岡市美術館学芸員)

 

東京・表参道のスパイラルでは、ベルリンを拠点に活動し、織物を解体、再構成する手法で知られる手塚愛子の個展『Dear Oblivion −親愛なる忘却へ−』を開催する。2007年の『薄い膜、地下の森』以来、手塚にとって同会場での12年ぶりの個展となる本展は、モダニズム美術あるいは近代それ自体を問い直す新作4種を含む最近作で構成される。なお、本展は手塚が2010年に受賞した五島記念文化賞美術新人賞における成果発表展として東急財団(旧・五島記念文化財団)より助成を受けて実施される。

本展で発表する新作は、手塚が京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する、薩摩ボタンに着想を得たところから制作がはじまった。ヨーロッパでの「ジャポニズム」の流行を受けて、19世紀後半より生産、輸出されるようになった薩摩ボタンには、日本情緒あふれる風景や着物姿の女性が描かれていた。当時、着物が主流であった日本人にとって不要な装飾品であるボタンに、日本らしさが施されていたことに着目した手塚は、薩摩ボタンが描かれた織物と同時代のヨーロッパのボタンをモチーフとした織物を製作、2種の織物を解き、その解かれた糸を再び紡いだ新作インスタレーション「必要性と振る舞い(薩摩ボタンへの考察)」に取り組む。同じくKCIが所蔵する川島織物(現・川島織物セルコン)が100年以上前に生産したテーブルクロスを再制作した「京都で織りなおし」、皇族として着物から洋服に切り替えた初めての皇后として知られる昭憲皇太后の大礼服として保存されている深い緑のビロード地に大中小の菊が刺繍されたマントを再構築した「親愛なる忘却へ(美子皇后について)」、そして、アムステルダム国立美術館からレンブラントのオマージュ作品の提案を受け、制作した「華の闇(夜景 02)」を発表する。同作は2020年のアムステルダム国立美術館での展示に先駆けて本展に出品される。

本展には手塚の提案により福岡市美術館学芸員の正路佐知子が監修およびキュレーションに参加、9月3日のオープニングレセプションでは手塚と正路によるトークイベントも開催される。また、本展と同時期には東京・恵比寿のMA2 Galleryで個展『Flowery Obscurity 華の闇』、ベルリンのGalerie Michael Janssenで個展『Dear Oblivion −親愛なる忘却へ−』が開催される。

 


手塚愛子「京都で織りなおし」Photo:川島織物セルコン

 

手塚愛子(1976年東京都生まれ)は、1997年より現在にいたるまで、織物を解きほぐし、歴史上の造形物を引用、編集しながら新たな構造体をつくりだすという独自の手法により制作を続けている。2001年に武蔵野美術大学大学院油画コースを修了し、2005年に京都市立芸術大学大学院油画領域博士(後期)課程を修了。2010年に五島記念文化賞美術新人賞により渡英し、その後、文化庁新進芸術家海外研修制度により渡独。近年の主な展示に、『百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-』(東京都現代美術館、2019)、『これがわたしたちのコレクション+インカ・ショニバレCBE: Flower Power』(福岡市美術館、2019)、『Cultural Threads』(テキスタイル美術館、ティルブルフ、オランダ、2018)、『Mobile Worlds or the Transcultural Museum of Our Present』(美術工芸博物館、ハンブルク、2018)、『A Painting for the Emperor』(ヨハン・ヤコブ美術館、チューリヒ、2018)、『Entangled: Threads & Making』(ターナーコンテンポラリー現代美術館、2017)、『Schnittmengen』(アジア美術館、ベルリン、2016)、『蜘蛛の糸』(豊田市美術館、2016)、『アーティスト・ファイル2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち』(国立新美術館、韓国国立現代美術館果川館、2015)、『美術の中のかたち―手で見る造形 手塚愛子展 Stardust Letters―星々の文』(兵庫県立美術館、2015)など。

 


手塚愛子「親愛なる忘却へ(美子皇后について)」(織物部分) Photo © Lepkowski Studios, Berlin

 

関連イベント
トークイベント
手塚愛子 x 正路佐知子(本展監修、福岡市美術館学芸員)
2019年9月3日(火)19:00-20:00
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
※オープニングレセプション(19:00-21:00)内で開催。

アーティストトーク
手塚愛子
2019年9月8日(日)15:00-16:00
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
※事前申込不要

 


手塚愛子「華の闇(夜警02)」 Photo © Lepkowski Studios, Berlin

 

 


 

同時期開催
手塚愛子展『Flowery Obscurity 華の闇』
2019年9月7日(土)-9月28日(土)
MA2 Gallery
http://www.ma2gallery.com/
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:日、月、祝

手塚愛子展『Dear Oblivion −親愛なる忘却へ−』
2019年9月14日(日)-11月16日(土)
Galerie Michael Janssen
https://galeriemichaeljanssen.de/
開廊時間:11:00-18:00
休廊日:日、月、祝

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