堂島リバービエンナーレ2019:シネマの芸術学 −東方に導かれて− ジャン・リュック=ゴダール『イメージの本』に誘われて


 

堂島リバービエンナーレ2019
シネマの芸術学 −東方に導かれて− ジャン・リュック=ゴダール『イメージの本』に誘われて

2019年7月27日(土)- 8月18日(日)
https://biennale.dojimariver.com/
会場:堂島リバーフォーラム
開催時間:11:00-18:00
会期中無休
アーティスティックディレクター:飯田高誉

 

2018年5月、ジャン・リュック=ゴダールの最新作『イメージの本』が、カンヌ国際映画祭で史上初めて最高賞パルムドールを超越する賞として特別に設けられたスペシャル・パルムドールを受賞した。日本国内でも2019年4月より現在まで各地の映画館で順次公開が続く同作に着想を得て、20世紀の記憶のアーカイブを前提に「飼い馴らされて」いないアートとは何なのかを問い掛ける展覧会『堂島リバービエンナーレ2019:シネマの芸術学 −東方に導かれて− ジャン・リュック=ゴダール『イメージの本』に誘われて』が開幕する。

2009年にはじまり5度目の開催となる堂島リバービエンナーレ2019のアーティスティックディレクターを務めるのは、2011年以来2度目の抜擢となる飯田高誉。飯田は『イメージの本』を200年の歴史に関する省察であり、今日の世界についての洞察を与える映画、そして、この世界が向かおうとする未来を指し示す5つのチャプターで構成された物語として捉えている。また、飯田は展覧会に寄せた文章の中で、テオドール・W・アドルノの「アウシュヴィッツの後で、詩を書くことは野蛮である」という言葉を引用し、次のように述べる。

 

システマティックな大量虐殺という事態が起きた後、詩的なもの、審美的なものを追求することについて倫理的に許容できないという糾弾は、ヨーロッパの審美的倫理観である真、善、美を激しく揺るがすものであった。アウシュヴィッツという空前の事件は、効率性を中心に据えたという意味においてまさに20世紀という現代を象徴する出来事だった言える。そしてこの野蛮の極致ともいえる事件は、まさに「文化」と見なされているその効率性から生じたものだった。アドルノによれば、文化とは野蛮の対極にあるものではなく、文化こそ野蛮との親和性を持ち得るものであることを認識しなければならないと述べている。そのような「文化」が引き起こしたアウシュヴィッツのあとで、文化の批判が根本的に為されないままに放置されるのであれば、アドルノが考える本来の意味の文化である「詩作」ですら、人間の活動からは最も離れたところにある野蛮さを体現しているといわざるを得ないのだ。

 

本展には、「文明」と「野蛮」を対立構造で捉えずに多様なテクネーと知性を用いて作品化してきたアーティストとして、ゲルハルト・リヒタートーマス・ルフフィオナ・タンダレン・アーモンド佐藤允空音央/アルバート・トーレンが招聘された。会場では、リヒターの「アトラス」全809点をはじめ、それぞれの世界観が表れた作品の紹介を通じて、人間に内在している感覚領域における理性的な記憶に止まらない身体的記憶を呼び起こし、「文明」と「野蛮」を対峙させることを表明していく。

 


佐藤允「冒険」2017年 ©︎Ataru Sato


ダレン・アーモンド「Oswiecim, March, 1997」1997年 ©︎Darren Almond

 

関連イベント
ギャラリーツアー
飯田高誉(本展アーティスティックディレクター)
2019年7月27日(土)13:15-14:00(約45分)
会場:堂島リバーフォーラム 1Fホール
無料(要入場券)
申込方法:公式ウェブサイト 申し込みフォーム

トークセッション
講演者:飯田高誉(本展アーティスティックディレクター)、堀潤之(関西大学文学部教授)
2019年7月27日(土)14:15-15:15(約60分)
会場:堂島リバーフォーラム 4Fギャラリースペース
無料(要入場券)
申込方法:公式ウェブサイト 申し込みフォーム

 


イシダアーキテクツスタジオ株式会社 Photograph: Kenta Hasegawa

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