ミリアム・カーン『美しすぎることへの不安』@ ワコウ・ワークス・オブ・アート


ミリアム・カーン「アイリーン・グレイの家(ル・コルビュジエ設計とされていた)」2007年 © Miriam Cahn, courtesy WAKO WORKS OF ART

 

ミリアム・カーン『美しすぎることへの不安』
2019年7月27日(土)- 9月14日(土)
ワコウ・ワークス・オブ・アート
http://www.wako-art.jp/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:日、月、祝、夏期休廊(8/13-8/17)

 

ワコウ・ワークス・オブ・アートでは、同時代の不安定な世界情勢を妥協することなく正面から見つめた抽象度の高い絵画を発表してきたミリアム・カーンの個展『美しすぎることへの不安』を開催する。2019年は欧州3都市をまわる巡回展をはじめ、ブレゲンツ美術館やソフィア王妃芸術センターなどで大規模な個展が続き、日本国内でもあいちトリエンナーレ2019の開幕が直前に控えている。

ミリアム・カーン(1949年バーゼル生まれ)は、1970年代に隆盛していたフェミニズムやパフォーマンス・アート、反核運動などの社会的動向に影響を受けながら、制作や発表を開始する。なかでも、79年から80年の冬に屋外の建物に直接描いたドローイング作品「my woman-ness is my public part 私の女性性は、パブリックな部分だ」が注目を集め、82年にはドクメンタ7に作品を発表する(男女不平等の観点から作品の一部を撤収)。83年にはクンストハレ・バーゼルで個展を開催(女性による個展は同館史上初)、84年には第41回ヴェネツィア・ビエンナーレにスイス館代表として参加するなど、同国を代表するアーティストのひとりとしての立場を確立する。自身を「いわゆる伝統的な画家ではなく、パフォーミング・アーティスト」捉えるカーンの作品には、80年代の黒を基調とした巨大なドローイングから94年以降に多く見られるようになった勢いのある筆致と独特のあざやかな色彩で描かれた油彩作品まで、一貫して「身体性」という特徴が見られる。近年は絵筆を使わず手で直接描く作品にも取り組んでいる。2017年にはドクメンタ14に参加して、アテネではベナキ美術館(ピレオス・ストリート・アネックス)で80年代や90年代に制作したドローイングと自作のテキストを中心としたインスタレーションを発表、カッセルではドクメンタハレの複数の展示室に油彩や水彩の多数の絵画で構成したインスタレーションを展開した。

本展には、2013年にイタリアが発動した海洋難民救済作戦「マーレ・ノルストム」をタイトルにした作品や母と子を主題にした作品といった新作に加え、90年代に制作した初期作品を出品する。また、本展に合わせて、ワコウ・ワークス・オブ・アートが発行する海外評論やインタビューを日本語訳したテキストシリーズの7冊目となる『ミリアム・カーン』の発売が9月に予定されている。

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