展覧会『ジェニー・ホルツァー:ライトライン』でのインスタレーション 2024年 ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(ニューヨーク) Installation for the Solomon R. Guggenheim Museum, 1989 / 2024 Photo: Filip Wolak
2026年9月8日、公益財団法人日本美術協会は、国内外を問わず世界の優れた芸術家を顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞の第37回受賞者を、東京、パリ、ローマ、ベルリン、ニューヨーク、ロンドンの各都市で発表した。受賞者には、10月28日に東京・元赤坂の明治記念館で開催される授賞式典で、顕彰メダルと感謝状、賞金1,500万円が贈られる。
絵画部門を受賞したジェニー・ホルツァー(1950年アメリカ・オハイオ州生まれ)は、電光掲示板やLED、ビルボードなどの媒体にテキストを掲げる作品によって、言語を通じて社会の真実を可視化してきた。1970年代にニューヨークに移り、ホイットニー美術館のインディペンデント・スタディ・プログラムに参加。同プログラムで東西の重要な思想を網羅した膨大な読書リストを課され、指定された本から学んだ思想を短文に要約する試みを重ねるなかで、初期の代表作《Truisms(自明の理)》(1977–1979)を生み出した。1990年にはヴェネツィア・ビエンナーレで女性として初めてアメリカ代表の個展を行ない、最高賞の金獅子賞を受賞。2001年以降は詩人や政治家といった他者の証言をテキストに用い、2005年以降は黒塗りされた機密文書をもとにした〈レダクション・ペインティングス〉シリーズを制作している。日本では1994年に日本初の個展「ジェニー・ホルツァー[ことばの森で]」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)を開催。2026年10月20日から2027年2月21日まで、オルセー美術館で個展「J’ai vu(私は見た)」が開催される。
アンディ・ゴールズワージー《ストーム・キング・ウォール》 1997–1998年 Andy Goldsworthy, Storm King Wall, New Windsor, New York State, U.S.A., 1997–1998Photo: Andy Goldsworthy Courtesy of Andy Goldsworthy
『ケー・ボーゲン』 ドイツ・デュッセルドルフ 2013年 Kö-Bogen, Düsseldorf, Germany, 2013 Photo: Roland Horn © The Japan Art Association
彫刻部門のアンディ・ゴールズワージー(1956年イギリス・チェシャー生まれ)は、自然から得た素材を用い、作品が置かれる場の特性を生かして制作する「ランド・アート」の第一人者として知られる。北極圏からタスマニアに至る世界各地で、採集した葉や枝、石、雪に加え、日光や雨などの気象条件、さらには自身の身体までも利用した野外インスタレーションを展開。完成と同時に消えゆくそれらの作品を写真に収め、その後は自然とともに朽ちるに任せるという制作スタイルをとってきた。ニューヨークのストーム・キング・アートセンターを約700mにわたって貫く石積みの壁《ストーム・キング・ウォール》(1997–1998)を手がけたほか、日本では1987年の初来日時に三重県の大内山村(現・大紀町)などで長期滞在制作を行ない、「アンディ・ゴールズワージー展:ふたつの秋」(1993–1994、栃木県立美術館・世田谷美術館)で作品を発表した。
建築部門は、建築を通じて文化的記憶を喚起する表現で知られるダニエル・リベスキンドが受賞。1989年に「ベルリン・ユダヤ博物館」のコンペを勝ち取って実作への転機を迎え、2003年、米ニューヨーク同時多発テロ跡地(グラウンド・ゼロ)の再開発コンペでマスタープランに選出された。音楽部門は、現代のクラシック音楽界で最も尊敬を集める指揮者のひとり、ヘルベルト・ブロムシュテットが受賞。シュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者やサンフランシスコ交響楽団の音楽監督を歴任し、NHK交響楽団とは1981年の初共演以来45年にわたる信頼関係を築き、「桂冠名誉指揮者」を務めている。演劇・映像部門は、『エリザベス』(1998)のエリザベス一世役で評価を確立し、アカデミー賞を2度受賞した俳優・プロデューサーのケイト・ブランシェットが受賞。舞台と映画の双方で活躍する一方、世界の難民や移民、トランスジェンダー支援の映画基金を創設するなど、社会的活動にも取り組んでいる。
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサート 2025年9月 ゲヴァントハウス大ホール Concert of the Gewandhausorchester, Leipzig, September, 2025 The Great Hall of the Gewandhaus, Leipzig © Konrad Stöhr
『かもめ』2025年 バービカン・シアター(ロンドン) Cate Blanchett stars as Arkadina in a scene from The Seagull at the Barbican Theatre, London, 2025 Photo: Marc Brenner
また、同時に発表された第29回若手芸術家奨励制度の対象団体には、芸術を通じて子供の創造性や社会参加を育むフランスの芸術教育団体、ラ・スルス・ガルースト協会が選ばれた。1991年に現代美術家のジェラール・ガルーストと、その妻でインテリア・デザイナーのエリザベート・ガルーストによって設立された同協会は、第一線で活躍するプロのアーティストが講師を務めるワークショップを柱に、現在はフランス全土の約10カ所の拠点で年間約370件のプロジェクトを実施し、1万人近くの子供たちを支えている。対象団体には奨励金500万円が贈られる。
高松宮殿下記念世界文化賞:https://www.praemiumimperiale.org/
絵画部門:ジェニー・ホルツァー
彫刻部門:アンディ・ゴールズワージー
建築部門:ダニエル・リベスキンド
音楽部門:ヘルベルト・ブロムシュテット
演劇・映像部門:ケイト・ブランシェット
若手芸術家奨励制度対象団体:ラ・スルス・ガルースト協会(フランス)
関連イベント
受賞記念建築講演会2026「ダニエル・リベスキンド 建築を語る」
2026年10月29日(木)16:00–17:30(開場:15:30)
会場:鹿島KIビル 大会議室(東京都港区赤坂6-5-30)
講演者:ダニエル・リベスキンド
モデレーター:三宅理一(建築史家、谷口吉郎・吉生記念金沢建築館館長)
詳細:https://www.praemiumimperiale.org/news/20260908-5/
※申込みは9月30日まで
マリオネットのワークショップ オワーズ県 2026年4月 Marionette-making workshop, Oise, France, April 2026 Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association