What, How & for Whom(WHW)のサビナ・サボロヴィッチ、イヴェット・チュルリン、ナターシャ・イリッチ photo: Hanna Neander / LWL
2026年6月30日、ミュンスター彫刻プロジェクトは、2027年6月13日の開幕に向けて、参加アーティストと会場の一部を発表した。
ミュンスター彫刻プロジェクトは、1977年にクラウス・ブスマンとカスパー・ケーニヒが設立。以来10年に一度、同市内各所に展開される作品を誰もが無料で見られる展覧会として、公共空間と芸術の関係を問い直してきた。6度目の開催となるミュンスター彫刻プロジェクト2027は、創設から50年の節目にあたるとともに、第1回から一貫してディレクションを担ってきたケーニヒが2024年に世を去り、その不在のもとで開かれる最初の回としても注目が集まる。2024年夏には、イヴェット・チュルリン、ナターシャ・イリッチ、サビナ・サボロヴィッチの3名によるザグレブとベルリンを拠点とするキュラトリアル・コレクティブ、What, How & for Whom(WHW)が、アーティスティック・ディレクターに就任。以来、WHWはミュンスターでの活動を通じて、2027年展の土台となる地域のコミュニティや団体、機関との関係を育んできた。ミュンスターという都市の中のさまざまな地域に着目しながら、参加、包摂、排除、共同体といったテーマについて掘り下げたいとその方向性を語っている。2027年展では、これまでにも会場を提供してきた市街地だけでなく、近年変貌を遂げつつあるキンダーハウス、ベルク・フィデル、ヨーク・カゼルネといった地域にも会場を広げ、この10年の社会的・経済的変化に伴う、それぞれの地域の共同生活の変化に眼差しを向けながら、私たちが今日、そして未来をどのように生きたいのかを問いかけていく。
イザ・タラセヴィチ《Ruins and Promise》2022年 photo: Nat McGowan
グート・キンダーハウス photo: Mario Bok
ヒュー・ロック《Armada》2019年 photo: Stuart Whipps
ハウス・デア・ニーダーランデ(オランダ館)、クラーマーアムツハウス photo: Sebastian Lehrke / City of Münster
市北部のキンダーハウス地区は、14世紀に病人のための施設を市壁の外に建てた歴史に始まり、1970年代の住宅開発を経て都市を拡張し、大規模な住宅団地が郊外の戸建て住宅、農地、森林地帯と隣接する戦後の都市開発モデルの特徴を現在も残している。かつては農場として使用され、現在はさまざまな障害を持つ人々が共同で暮らすコミュニティ「グート・キンダーハウス」では、農村の労働や共同体の儀礼をめぐる知を、科学や図表、SFへの関心と結びつけてきたイザ・タラセヴィチが季節の循環や農業の営みを軸とするインスタレーションを計画。人間と動物と自然の共生や、共同的な労働やケアのあり方を支える知や実践を探究していく。中心市街地のクラーマーアムツハウスにあるオランダ館は、1589年に建てられ、地元の商人たちの会合の場や運営拠点として機能し、1648年にはオランダとスペインの八十年戦争を終結させたヴェストファーレン条約(ウェストファリア条約)の和平交渉の舞台にもなった。実在の人物や架空の人物を権力の象徴として取り上げたり、記念碑や追悼碑における伝統的な視覚言語を問い直してきたヒュー・ロックは、この建物および地域固有の文脈を、植民地主義、移民、政治権力の不均衡な配分の歴史といったより広い文脈へと結びつける。
市街東側にある旧ヘルスター墓地は、19世紀に開設されたものの1926年に公園に改築された。ここでは、セルマ・セルマンが、女性の視点や個人の歴史を起点とするインスタレーションを発表する。自身の家族の歴史に基づき、廃棄物を素材にグローバル化した労働の循環を可視化してきたセルマンは、社会的に周縁化された人々の視点から紡がれる詩的な語りを想起と哀悼の場に持ち込む。ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学植物園と市南部のベルク・フィデル地区の2カ所で発表するのは、難民や人道危機の当事者が置かれる社会的・経済的条件の問題に取り組んできたローザ・エル=ハッサン。1960年代後半から1970年代にかけて、異なる住宅形態や建築様式を混在させた同市初の大規模な近代的住宅地として廃初されたベルク・フィデル地区は、さまざまな背景、特に外国にルーツを持つ住民の割合が高いことを特徴とする。エル=ハッサンは、移動にまつわる個人的・集団的な歴史を通じて、強制移住や亡命、もろさや弱さ、相互扶助といった主題を扱い、親密な経験をより広い社会的・政治的な問いへと接続する。
セルマ・セルマン《Flowers of Life》2024年 photo: Norbert Miguletz
旧ヘルスター墓地 photo: Hanna Neander / LWL
ローザ・エル゠ハッサン〈Tearheads〉2025年、「May All Tears Be Followed By A Smile」 photo: Áron Weber
ミュンスター大学植物園 photo: Mirja Hentschel
市街地から南東に離れたヨーク地区にある旧兵舎「ヨーク・カゼルネ」は、かつてナチスが建設、戦後は2012年までイギリス軍が使用し、現在は難民の受け入れ施設として利用されている。同時に同地区は新たな住宅地へと再開発が進められ、かつての将校用クラブは、地域社会、出会い、学びのための空間へと生まれ変わる計画となっている。ここでは、世界各地の学校の子どもたちと続ける長期プロジェクト《フリクエンシーズ(周波)》を試みてきたオスカー・ムリーリョが、地元の生産者や地域コミュニティと協働し、共同での料理や分かち合いを軸としたプロジェクトを展開する。
ミュンスター彫刻プロジェクト2027全体の参加アーティストは約30組にのぼる予定。開幕に先立つプレプログラムとして「Skulptur Projekte Sessions」も進行している。なお、2027年はカッセルでドクメンタ16(6月12日–9月19日)も開催され、ドクメンタ14以来の同時開催となる。
オスカー・ムリーリョ《The Institute of Reconciliation》2018年 photo: Marko Ercegovic
ヨーク・カジノ(旧将校クラブ)、暖炉の間 photo: Henning Spenthoff / Stadt Münster
ミュンスター彫刻プロジェクト2027
2027年6月13日(日)–10月3日(日)
https://www.skulptur-projekte.de/
会場:ミュンスター市内各所(ドイツ)
アーティスティック・ディレクター:What, How & for Whom(WHW)
参加アーティスト(2026年6月30日現在)
ローザ・エル゠ハッサン|Róza El-Hassan
ヒュー・ロック|Hew Locke
オスカー・ムリーリョ|Oscar Murillo
セルマ・セルマン|Selma Selman
イザ・タラセヴィチ|Iza Tarasewicz
