
2025年2月7日、シャルジャ美術財団は前日に開幕したシャルジャ・ビエンナーレ16におけるシャルジャ・ビエンナーレ賞を、アズィズ・ハザラ、パラヴィ・ポール、プラットヤー・ピントーンの3名に授賞すると発表した。
アズィズ・ハザラ(1992年アフガニスタン、ヴァルダク)は、《I Love Bagram (ILB)》(2025)や《Bagram Field Notes》(2021-)など、アメリカ合衆国軍や北大西洋条約機構(NATO)加盟各国軍が撤収した後のバグラム空軍基地を取材した作品群を旧アル・ジュバイル青果市場で発表した。アフガニスタンの首都カブール郊外にあるバグラム空軍基地は、1970年代から80年代にかけて、旧ソ連軍がアフガニスタン侵攻の際に建設し、撤退後は同国内の勢力が使用。2001年12月にアメリカ軍が同国に侵攻し基地に入り、巨大基地へと改築。2021年にアメリカ軍が撤退した。ハザラは制作を通じてバグラムに残された日用品などを通して軍事介入の影響を考察する知識と抵抗のアーカイブを構築している。
パラヴィ・ポール(1987年ニューデリー)は、映像作品《How Love Moves》(2023)と《Reckoning》(2024)、《Afterglow》(2024)から成る瞑想的なインスタレーションを通じて、死の中の生、生の中の死の存在を問いかけた。《How Love Moves》では、市民権改正法(CAA)をめぐる2020年のデリー暴動に端を発した民族主義者による暴力や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により命を落とした4,000人以上の人々を仲間とともに埋葬した墓掘り人シャミム・カーンの姿を描いている。
プラットヤー・ピントーン(1974年タイ、ウボンラーチャターニー生まれ)は潜水士と協力し、アラブ首長国連邦の東海岸沖にソーラーパネルと連結した鉄骨の構造物を設置した。遺跡の壁から「採取」したサンゴの板を湾内にサンゴが再び着床するための基盤として利用。10点の花崗岩製のソーラーパネル彫刻とともに、新作《We are lived by powers we pretend to understand》を通じて、芸術や科学、そして遺産の真の意味を問いかける。


審査員は、美術、建築、地政学の各領域を横断して研究する「Beyond Entropy Africa」の共同設立者でアンゴラの首都ルアンダを拠点に活動する建築家兼キュレーターのポーラ・ナシメント、元・サンフランシスコ近代美術館現代美術部門長で現在はブラジルのミナスジェライス州にある世界最大の野外美術館と称されるイニョチンのアーティスティックディレクターのウンジー・ジュー、ハバナ・ビエンナーレの共同設立者で近年は広州トリエンナーレの共同キュレーションを手がけたヘラルド・モスケラが務めた。
シャルジャ・ビエンナーレ16は、2月6日に開幕。アリア・スワスティカ、アマル・ハラフ、ミーガン・タマティ゠クネル、ナターシャ・ギンワラ、ゼイネップ・オズの5名の共同キュレーションにより、「to carry(運ぶ)」のテーマの下、世界各地より200名以上が参加、200点以上の新作を含む650点以上の作品が、シャルジャ首長国内のシャルジャシティ、アル・ハムリヤ、アル・ダイド、カルバ、アル・マダムの5都市を中心に展開する。
シャルジャ・ビエンナーレ16
「to carry」
2025年2月6日(木)-6月15日(日)
https://www.sharjahart.org/en/sharjah-biennial/sb-16
キュレーター:ナターシャ・ギンワラ、アマル・ハラフ、ゼイネップ・オズ、アリア・スワスティカ、ミーガン・タマティ゠クネル
過去5回の歴代受賞者
2023|ブシュラ・ハリーリ、ドリス・サルセド、ハジラ・ワヒード(特別賞:リ・カイチュン[李繼忠]、タニア・エル・コーリー、ガブリエラ・ゴルデル、アマル・カンワル、ジョイリ・ミナヤ、ヴァルニカ・サラフ、イブラヒム・マハマ)
2021|新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響によりビエンナーレ開催延期
2019|モハメド・ブーロイサ、シェザド・ダウッド、ファン・タオ・グィン、チウ・ジージエ[邱志杰]
2017|インジ・エヴィネル、ウリエル・オルロー、ディネオ・セシェー・ボパペ、ワリード・シティ(特別賞:アリ・ジャブリ)
2015|エリック・ボードレール、アスンシオン・モリノス・ゴルド、バゼル・アッバス&ルアン・アブ゠ラーメ(特別賞:アドリアン・ビシャル・ロハス、ファレルニッサ・ザイド)