アートバーゼル2023


Art Basel 2023 Photo: ART iT

 

2023年6月15日から18日の4日間にわたり、36か国/地域から284軒のギャラリーが集まる世界最大規模の近現代美術のアートフェア「アートバーゼル」が、バーゼル市内のメッセ・バーゼルで開催される(招待制のプレビューは13日、14日の2日間)。メッセプラッツのプロジェクトは、昨年の第59回ヴェネツィア・ビエンナーレにスイス代表として参加したラティファ・エシャクシュが担当。アートバーゼルのさまざまなプログラムに加え、世界各地からたくさんの関係者や観客が集まる機会に、市内の各美術館も充実したプログラムを準備している。

アートフェアの核となるギャラリー部門(Galleries)には、国際的な現代美術のマーケットを牽引するガゴシアン、デイヴィッド・ツヴィルナー、ハウザー&ワース、ペースをはじめ、日本からタカ・イシイギャラリー、タケニナガワ、東京画廊+BTAP、東京に支店を持つブラム&ポーとファーガス・マカフリーなど、240軒のギャラリーが参加する。また、エンプティ・ギャラリー(香港)など3軒が初出展、ギャラリー・ヒュンダイ(ソウル)が同部門に返り咲き、9軒がフィーチャー部門、ステートメント部門から参入する。

歴史的観点を踏まえた展示内容が求められるフィーチャー部門(Feature)は、8軒の初参加を含む16軒が出展。1970年代のニューヨークでジャンル横断的な実践を展開したコレット・リュミエールの1977年のパフォーマンスを再構成したインスタレーションを発表するCompany Gallery(ニューヨーク)、1980年代後半よりコンセプチュアル・アートの影響を受けたパフォーマンスを実践してきたアナ・アモリムの1991年のプロジェクトを発表するMillan(サンパウロ)、ニューヨークのブルックリンを拠点に長く活動する写真家、ジャメル・シャバズの1980年代の仕事を紹介するGalerie Bene Taschen(ケルン)、ソニア・ドローネーの1915年から1979年までの紙の作品を概観するGalerie Zlotowski(パリ)などに注目。新進アーティストの個展形式が条件で、バロワーズ賞の対象となるステートメント部門(Statements)には、10軒の初参加を含む18軒が出展し、ステラ・チョン(Chapter NY、ニューヨーク)、ゴードン・ホール(Hua International、北京、ベルリン)、トリア・アスタフィシュビリ(LC Queisser、トビリシ)、ボノロ・カヴラ(SMAC Art Gallery、ケープタウンなど)、小島郷史(Bridget Donahue、ニューヨーク)らが個展形式で紹介される。また、エディション部門(Edition)には版画やエディション作品を中心に扱う10軒のギャラリーが参加。中庭に面した壁面を担当するCristea Roberts Gallery(ロンドン)はアニ・アルバースの〈Connections〉を出品する。

キャビネット(Kabinett)では、各ギャラリーが上述した部門とは異なる空間で、個展形式、歴史的観点を踏まえた展示、テーマ展示を実施。今回はアンリ・サラの個展形式の展示を行なうEsther Schipper(ベルリンなど)、1980年代のエイズ危機下を含む80年代、90年代のニューヨークの生活を描いたヒュー・スティアーズの作品をまとめて紹介するAlexander Gray Associates(ニューヨーク)、「脅威の部屋(ヴンダーカンマー)」をテーマに展示を組むCasas Riegner(ボゴタ)など、13の展示が行なわれる。

 


Diamond Stingily, How Did He Die (2016) Courtesy of the Artist and Cabinet Gallery


Elias Sime, Tightrope: It is Green 1 (2023) © Elias Sime 2023. Courtesy the artist and James Cohan, New York Photo by Matthew Herrmann

 

メッセプラッツのプロジェクトを担当するラティファ・エシャクシュは、残骸や廃墟の象徴として「解体された空間」に長きにわたって関心を持ち、そこに残された希望や可能性の存在を明らかにしてきた。今回の作品は、スイスのラ・トゥール=ド=ペにあるアーティストレジデンス「La Becque」のディレクター、リュック・マイヤーの協力で企画したコンサートやパフォーマンスの舞台のほか、歌ったり、詩を詠んだり、知識を共有しあったり、単純に身体を休めたりするなど、さまざまなイベントが開かれる場として開かれる。

アンリミテッド(Unlimited)のキュレーションは、クンストハレ・ザンクト・ガレンのディレクター、ジョヴァンニ・カルミネが担当。従来のアートフェアのブースでは展示不可能な大型作品、広い空間を必要とする展示に注目作品と挙げられたのは、フィレレイ・バエズダイヤモンド・スティンギリーモニカ・ボンヴィチーニカルロス・クルス・ディエスオラフ・ニコライハリル・ラバー。そのほか、バーバラ・クルーガーブルース・ナウマン木村友紀ミカ・タジマ佃弘樹らも出品。バーゼル市内各所で展開されるサイトスペシフィック・インスタレーションやパフォーマンスを無料で鑑賞できるプログラム、パルクール(Parcours)のキュレーションはメッセプラッツのプロジェクトと兼任で、サミュエル・ロウエンバーガーが務める。「Word of Mouth」のテーマの下、ローラ・プロヴォストの新作映像作品《No More Front Tears》(2022)や、「エシュコル=ヴァハマン式記譜法」と呼ばれるダンスの記譜法の発明した振付家としても知られるノア・エシュコルの〈ウォール・カーペット〉シリーズのほか、ジュリアン・シャリエールジェイコルビ・サッターホワイトルイス・ラザロ・マトスなどの作品が展示される。

また、シュタットキノ・バーゼルを会場とするフィルム・プログラム(Film)は、オンライン動画配信プラットフォーム「Vdrome」の創設キュレーターで北西スイス応用科学芸術大学(FHNW)の講師を務めるフィリパ・ラモスがキュレーターを務め、ニューヨークを拠点に活動するインディペンデント・キュレーター、マリアン・マソーニの協力を得ながらプログラムを構成。6月12日のオープニング・プログラムでは、オピオイド中毒の問題に取り組んだナン・ゴールディンの活動を追ったローラ・ポイトラスの『All the Beauty and Bloodshed』を上映する。また、エミリー・バトラーがキュレーションを務めるカンバセーション・プログラム(Conversations)は、ケア、集団、つながりといったテーマを中心に計50人以上に及ぶ登壇者による12のパネルディスカッションを開催。

 


Alexander Carver, The Spinning Wheel (Ribboned Flesh) (2023) Courtesy the artist; Kraupa-Tuskany Zeidler, Berlin Photo: def image


Wyatt Kahn, Sideways Curl (2021) Courtesy the artist, Galerie Eva Presenhuber, Vienna / Zurich, and Xavier Hufkens, Brussels © the artist

 

なお、アートバーゼル会期中のバーゼルでは、バイエラー財団美術館やバーゼル市立美術館など、市内の各美術機関もさまざまな展覧会を開催する。バイエラー財団美術館では、コロンビア出身のドリス・サルセドの国内初となる大規模個展を開催。キャリアを通じて、共感や悲嘆といった異文化間に及ぶ感情や感覚、何度も繰り返される戦争や暴力を背景とした忘却と想起の問題などに取り組んできたサルセドの代表的なシリーズをまとめて紹介する。開館20周年を迎えるシャウラガーでは、近年の収蔵作品を中心にタイムベースド・メディアを紹介する展覧会『OUT OF THE BOX – 20 Years Schaulager』を開催。そのほか、各美術機関のプログラムから個展を中心に取り上げると、バーゼル市立美術館ではシャーリー・ジャフェやアンドレア・ビュットナー、バーゼル州立美術館ではシモーネ・ホリガー、クンストハレ・バーゼルではティオナ・ネキア・マクロデン、ティンゲリー美術館ではロジャー・バレン、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーといったプログラムが並んでいる。また、アーティストやキュレーター、ギャラリストが集まり2022年初に立ち上げたバーゼル・ソーシャル・クラブ(Mauerstrasse 4057 Basel)では、6月11日からの8日間にわたって、美術や音楽、パフォーマンス、食文化を交えたイベントを開催。タケニナガワやミサコ&ローゼンも参加している。

 

アートバーゼル2023https://www.artbasel.com/basel

 


Art Basel 2023 Photo: ART iT


Yuki Kimura, COL SPORCAR SI TROVA (2022) Art Basel 2023 Photo: ART iT


Mika Tajima, You Be My Body for Me (2023) Art Basel 2023 Photo: ART iT


Roni Horn, Doubt by Water (2003/2008) Art Basel 2023 Photo: ART iT


Franz West, 100 Stühle (100 Chairs) (1998) Art Basel 2023 Photo: ART iT

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