2024年(第34回)福岡アジア文化賞


キムスージャ ©福岡アジア文化賞委員会

 

2024年5月27日、福岡アジア文化賞委員会事務局は、アジアの学術研究や芸術・文化の分野で顕著な業績をあげた人物を顕彰する「福岡アジア文化賞」の芸術・文化賞を、1990年代より国際的な活動を積み重ねてきた韓国を代表するアーティスト、キムスージャに授賞すると発表した。大賞は、rhizomatiks(ライゾマティクス)の共同設立者で、科学技術と芸術の融合した作品やプロジェクトで知られる真鍋大度が受賞。学術研究賞は、ベンガル湾を基軸とする南アジアと東南アジアにまたがる領域を対象にした国民国家の枠を超えるアジア史の研究で知られる歴史家スニール・アムリスが受賞した。授賞式は9月26日に福岡国際会議場で開催。9月27日に真鍋大度(※場所未定)、9月28日の午後にスニール・アムリスがアクロス福岡、同日夜にキムスージャが福岡アジア美術館で市民を対象とした講演会を行なう。

キムスージャ(1957年大邱生まれ)は、1990年代に韓国の伝統的な風呂敷包み(ボッタリ)を配したインスタレーションや、ボッタリとともに移動するパフォーマンス/社会彫刻などで国際的な注目を浴び、2000年代後半以降には、壮大な宇宙観や普遍的な真理へと至らせるような、空間全体に光のスペクトルを展開したインスタレーションを発表している。

キムスージャは、1990年代前半にニューヨークのPS1に滞在した際にボッタリを使った作品を初めて制作した。日用品を大きくカラフルな布で包んだボッタリは、生地を縫う、包むといった行為が、女性の労働や生きることそのものを象徴する小宇宙、同時に、政治的・経済的理由で移動や移住を余儀なくされるグローバル化の一側面も示唆するものとして解釈された。1999年から2001年にかけて、東京、ニューヨーク、ロンドン、メキシコシティ、カイロ、デリー、上海、ラゴスの各都市の雑踏で立ち止まる自身の姿を背後から撮影した代表作《針の女》を制作。その姿は、激しく動く都市の時間に異分子として持ち込まれた静止、異なる時間軸に編み込まれた呼吸する根源的な身体として、グローバル化のなかで、自身の拠り所となる地域性、場所性を掘り下げたものとして高い評価を受けた。2006年には、自然光を用いた《息をする—鏡の女》をマドリードの国立ソフィア王妃芸術センターのクリスタルパレスで発表。光という非物質的な素材を通じて、韓国伝統の五方色(オバンセク)や五行説が象徴する宇宙の構造を表現した。同シリーズは、2013年の第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館でも展開された。

これまでに第24回サンパウロ・ビエンナーレ(1998)、第48回ヴェネツィア・ビエンナーレ アペルト(1999)、第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2005)、第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007)、ドクメンタ14(2017)など数々の国際展に参加。各地の主要美術館での個展も多数。日本では、1980年代後半からグループ展に参加しはじめ、1999年のCCA北九州のアーティスト・イン・レジデンス、東京国立近代美術館、福岡アジア美術館、第1回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(2000)、横浜トリエンナーレ2005、第6回恵比寿映像祭(2014)などにも出品。現在は、パリのブルス・ド・コメルスで空間全体に鏡を配した《息をする—星座》を発表している。

 

福岡アジア文化賞https://fukuoka-prize.org/

 


Kimsooja, To Breathe: Bottari The 55th Venice Biennale, Korea Pavilion


Kimsooja A Needle Woman (2000-01) Tokyo Metropolitan Museum of Photography,
Yebisu International Festival for Art and Alternative Visions – TRUE COLORS

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