第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ、タイトル発表


Claire Fontaine, Foreigners Everywhere (English), (2005) Tecnolux ultra violet, 10mm glass, back-painted, framework, electronic transformer, cables. Photo: Studio Claire Fontaine ©︎ Studio Claire Fontaine Courtesy of Claire Fontaine and Galerie Neu, Berlin

 

2023年6月22日、ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局長のロベルト・チクットと第60回ヴェネツィア・ビエンナーレのキュレーターを務めるアドリアーノ・ペドロサは、第60回展のタイトルを「Foreigners Everywhere(外国人はどこにでもいる)」に決定したと発表した。

タイトルは、パレルモを拠点に活動するコレクティブ、クレア・フォンテーヌが、2000年代初頭に人種差別や外国人嫌悪と闘ったトリノのコレクティブの名称「Stranieri Ovunque(イタリア語でForeigners Everywhereの意)」を、展示する場所や文脈に合わせて翻訳し、さまざまな言語のネオンサインとして、各地で発表してきたシリーズに由来する。ペドロサは、「この言葉の背景には、国家や領土、国境を越えて移動、存在する人々をめぐる幾多の難局が世界的に蔓延しているという状況があります。それは言語や翻訳、民族が持つ危険や陥穽を映し出し、アイデンティティ、国籍、人種、ジェンダー、経済状況、自由の度合いに条件づけられた差異や格差を表しています。このような状況において、「Foreigners Everywhere」という言い回しは(少なくとも)二重の意味を持ちます。まず第一にそれは、どこに行こうとどこに居ようと、あなたは外国人に出会う。つまり、彼ら/私たちはどこにでもいるということ。次に、どこに自分を見出そうとも、あなたは常に、真に、そして心の奥底で外国人であるということ」だと説明し、第60回展では、外国人、移民、故郷を離れた人々、ディアスポラ、亡命者、難民、なかでもグローバル・サウスとグローバル・ノースを行き来するアーティストに焦点を当てていくとコメントを寄せた。

また第60回展では、異なるセクシュアリティやジェンダーを移動し、迫害を受けたり非合法化されてきたクィアのアーティスト、独学者やフォークアートのようにアートワールドの周縁に位置するアウトサイダーのアーティスト、自分たちの土地にもかかわらずよそ者扱いを何度も受けてきた先住民のアーティストも重要な位置を占める。その作品群は「Nucleo Contemporano(ヌクレオ・コンテンポラノ)」のセクションを構成し、各作品は1箇所にまとめて追いやられるのではなく、展示空間の各所に展開される予定。また、ラテンアメリカ出身者初のヴェネツィア・ビエンナーレのキュレーターとなったペドロサは、グローバル・モダニズムやグローバル・サウスにおけるモダニズムの研究もキュレーションに組み込むと発表。ラテンアメリカやアフリカ、中東、アジアの20世紀の作品を特集する「Nucleo Storico(ヌクレオ・ストリコ)」のセクションを設け、根強い欧米中心のモダニズムの境界や記述を問い直していく。さらに、同セクションでは、イタリアからアフリカ、アジア、ラテンアメリカ、そして、ヨーロッパの他の地域へと移動し、その土地の文化に根差しながらキャリアを積み重ねたイタリアン・ディアスポラのアーティストにも着目していく。

 

第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ「Foreigners Everywhere」
2024年4月20日(土)-11月24日(日)
http://www.labiennale.org/
キュレーター:アドリアーノ・ペドロサ

 


Adriano Pedrosa Photo by Andrea Avezzù Courtesy of La Biennale di Venezia

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