「三菱商事アート・ゲート・プログラム」の支援アーティストが決定

 

2021年9月、三菱商事株式会社は、アーティスト支援施策「三菱商事アート・ゲート・プログラム(MCAGP)」の3つのプログラムの支援アーティストを決定した。

三菱商事は、2008年より社会貢献活動の一環として実施していたアーティスト支援施策MCAGPを、アーティストの活動の多様化が進む現状に即したものにするため、NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]をプログラムアドバイザーに迎えて、支援内容を刷新した。2021年5月に発表された新たな支援プログラムは、異なるキャリアステージに合わせた「スカラシップ」、「ブレイクスルー」、「アクティベーション」の3種類で、資金援助だけでなく学びの機会やメンタリングを取り入れた内容となっている。

概ね45歳までのアーティストを対象に、支援金400万円と2年間のメンタリング(リサーチや活動に関するアドバイスなど)の機会が与えられる「アクティベーション」には、佐々木類、檜皮一彦、持田敦子の3名が選出された。各アーティストがそれぞれの制作活動の展開のために、「アーティストのニーズにあわせた柔軟な支援」を意図する本助成を活用していく。ガラスを主な表現素材として、「五感と記憶」の関係性を探求する佐々木類は、パンデミックの影響により、準備していた北米での個展に対する会期延期や援助縮小等の障壁が生じたため、本助成におけるメンタリングを活用しながら表現を模索し、大型のガラス作品を制作し個展の成功を目指すとともに、スタジオ設立など自立した制作環境も整えたいと語る。《hiwadrome》なるコアコンセプトのもとに、自身も使用する車椅子や身体性をテーマとした作品を手がける檜皮一彦は、本助成のメンタリングを通じて、パブリックへの介入を通したアクセシビリティや人々の意識の境界・関係性をリサーチし、これまで国内で実践してきたパブリックへの介入「play」の海外への展開を目指す。そして、持田敦子は、既存空間に即興的に応答・介入し、壁や階段の設置あるいは家そのものを回転させ、浮かせるといった、日常空間のひずみと生活の中での常識の転覆に着目した建築規模の作品を制作してきた。本助成を通じて、準備や展示期間に制限のある芸術祭などからの招聘を受けての制作発表とは異なる作品のあり方の模索しながら、自身が住む街の廃屋にて「豊かな解体」をキーワードに、長期的なリサーチでより良い壊し方を考察し、「つくる・壊す」が一体となった自身の代表作の制作を目指す。蔵屋美香(横浜美術館 館長)、グローバー(ミュージシャン)、毛利嘉孝(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)がメンター兼選考委員を務め、、ファシリテーターを塩見有子(AIT ディレクター)が担当する。

 


佐々木類《Liquid Sunshine/ I am a Pluviophile》2019年 コーニングガラス美術館所蔵、撮影:市川靖


檜皮一彦《hiwadrome type : re[in-carnation]》2021年


持田敦子《T家の転回》2017年 撮影:Ryuichi Taniura

 

活動歴が概ね5年以内のアーティストを対象とする「ブレイクスルー」には、飯島暉子、泉桐子、岡本秀、小山渉、衣真一郎、female artists meeting(うらあやか、都賀めぐみ)が選出された。支援金150万円と2年間の成果発表の場としての展覧会、そして、最大の特色とも言えるラーニング(展覧会に向けたレクチャーやディスカッション、メンターによるアドバイスなど)の機会が与えられる本助成では、メンターからアーティストへの一方的な関係でなく、メンターと選出されたアーティストが相互的に学び合う機会をつくることで、それぞれのさらなる飛躍に結びつく場が期待される。長谷川新(インディペンデントキュレーター)、桝田倫広(東京国立近代美術館 主任研究員)、水田紗弥子(キュレーター/Little Barrel)がメンター兼選考委員を務め、ファシリテーターを堀内奈穂子(AITキュレーター)が担当する。

そして、「スカラシップ」は、大学や専門学校の芸術文化分野で学び、未来にアーティストとして自立した活動を希望しながらも、経済的な理由で困難を強いられている学生に給付型奨学金各50万円を支援するプログラム。選考はMCAGP運営事務局が実施し、119名の応募から20名が選出された。

 

三菱商事アート・ゲート・プログラムhttps://www.mcagp.com/

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