ドクメンタ15がコンセプトや製作体制を発表


ruangrupa: lumbung drawing, image: Iswanto Hartono, 2020

 

2020年6月18日、2022年の開催を目指すドクメンタ15のアーティスティック・ディレクターを務める、ジャカルタを拠点とするアーティスト・コレクティブ「ルアンルパ」が、ドクメンタ15の核となる価値観や考えの基盤となるものとして重視するコンセプト「ルンブン」の説明および、また、コンセプトを共有しながらドクメンタ15を作り上げていく「ルンブン・メンバー」、アーティスティック・チームを発表した。

「ナチスによって退廃芸術とされた前衛芸術」を回顧する展覧会としてはじまったドクメンタは、1955年より回数を重ね、現在は5年に一度、その内容や動向に高い注目が集まる世界最大の国際展のひとつとしての地位を築いている。ドクメンタ史上初のコレクティブによるアーティスティック・ディレクターに選ばれたルアンルパは、表現の自由や集会の自由が厳しく制限されたスハルト新秩序体制末期の1990年代半ばにジャカルタやジョグジャカルタの美術学校に通っていた学生が、その友人関係や学生ネットワークを基に2000年に結成した。結成当初より、空間や資源を共有しながら、都市生活における課題や文化的課題に応答する幅広い活動を展開。コロナ禍においても、ほかのコレクティブと結成した共同運営のスペース「グッスクール」をフェイスマスクや防護服を生産する工場として使用し、国内のさまざまな島にある病院やクリニックの医療従事者に直接配布、その過程でさまざまな地域のイニシアティブや寄付団体と連携して活動している。

ルアンルパがドクメンタ15の出発点として掲げたコンセプト「ルンブン」は、インドネシアの言葉で共同体の公益のために収穫した米を貯蔵したり、仲間や困窮者の緊急支援のために使用する共同倉庫を意味し、価値観の共有、集団的な慣習、構成原理などを中心に組織される。それはドクメンタ15のために練り上げられたコンセプトではなく、資源や時間、エネルギー、資金、アイディア、知識の共有を積極的に行なってきたルアンルパの日常的な実践に深く浸透し、その活動の方法や価値観を要約したものであり、そのコンセプトが示す連帯や集団性という価値観は現在、かつてないほどにその重要性を増している。

 


ruangrupa: lumbung booklet, photo: Keke Tumbuan, 2020


ruangrupa: lumbung-members handlettering, image: Indra Ameng, 2020

 

このコンセプトの下、ルアンルパとともに各地域の実践や生態系のウェルビーイングの質を向上するための知識や資源を共有していくルンブン・メンバーの第1弾として、「フォンダシオン・フェスティバル・スール・レ・ニジェール」(マリ、セグー)、「グッスクル」(インドネシア、ジャカルタ)、「インランド」(スペイン複数箇所)、「ジャティワンギ・アート・ファクトリー」(インドネシア、ジャティワンギ)、「カリル・サカキニ・カルチュラル・センター」(パレスチナ、ラマッラー)、「マス・アルテ・マス・アクシオン[MAMA]」(コロンビア、チョコ県ヌキ)、「オフ・ビエンナーレ」(ハンガリー、ブダペスト)、「トランポリン・ハウス」(デンマーク、コペンハーゲン)、「芸術・都市研究所[ZK/U]」(ドイツ、ベルリン)が発表された。ルンブンの価値観と密接に繋がる創造を刺激するモデル、地域の社会構造に深く根付いた芸術的実践、組織的かつ経済的な実験などを基盤とするこれらのイニシアティブは、ドクメンタ15に向けて、新たなメンバーを招待し、試行を重ねた実験を互いに共有していく。

 


ruangrupa: artistic team assembly in Tanakita, 2019, photo: Jin Panji


ruangrupa: online assembly, 2020

 

また、ルアンルパと親交が深く、自らが関わってきた「RAIN」や「ArtsCollaboratory」といったプログラムでも協働した経験を持つゲルトルド・フレンツェ、2000年代から現代美術における南北のさまざまな交流を通じて関係を重ねてきたキュラトリアル・コレクティブ「Kuratorisk Aktion」のフレデリッケ・ハンセン、一方、親交が浅く、エルサレムを拠点としているために、これまでに協働した経験はほぼないものの、その感性にルアンルパが近しさを感じてきたアル=クドゥス・バード・カレッジのララ・ハルディ、また、現地の文脈に通じたカッセルを拠点とする人物として、過去のドクメンタに従事し、コミュニティに対して長期的に貢献してきたアイシェ・ギュレチ、同じく過去のドクメンタに関わり、カッセル市内の各機関との架け橋が期待されるアンドレア・リネンコールが、アーティスティック・チームには加わり、ルアンルパとともにドクメンタ15への道のりを歩んでいく。公式ウェブサイトには、それぞれのメンバーとルアンルパとの出会いなどが紹介されている。

 

documenta 15https://www.documenta.de/en/documenta-fifteen/

 


documenta und Museum Fridericianum gGmbH: ruruHaus, photo: Nicolas Wefers


kmmn_practice: Participatory platform at the Kassel main railway station, photo: Can Wagener, 2020

Copyrighted Image