ヒューゴ・ボス賞2020、最終候補発表

2019年11月19日、ヒューゴ・ボスとニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館および財団は、ヒューゴ・ボス賞2020の最終候補に、ナイリー・バグラミアン、ケヴィン・ビーズリー、ディアナ・ローソン、エリアス・シメ、セシリア・ビクーニャ、アドリアン・ビジャール・ロハスの6名を選出したと発表した。

ヒューゴ・ボス賞は、年齢、性別、国籍、制作手法を問わず、現代美術において革新的かつ影響力のある制作活動に従事するアーティストの功績を讃えるために1996年に設立された。受賞者には賞金10万ドル(約1085万円)とソロモン・R・グッゲンハイム美術館での個展の権利が与えられる。近年はヤン・ヴォー、ポール・チャン、アニカ・イ、シモーネ・リーらが受賞。かつては八谷和彦や森村泰昌も最終候補に選ばれている。13回目の開催となる今回の審査員を務めるのは、審査委員長のソロモン・R・グッゲンハイム財団ディレクターのナンシー・スペクターと同財団チーフキュレーターのジェニファー&デイヴィッド・ストックマンのほか、ナオミ・ベックウィズ(シカゴ現代美術館キュレーター)、キャサリン・ブリンソン(グッゲンハイム美術館キュレーター)、フリエッタ・ゴンサレス(インディペンデント・キュレーター)、ホイットニー美術館キュレーターのクリストファー・Y・ルー、ナット・トロットマン(グッゲンハイム美術館パフォーマンス&メディア部門キュレーター)。受賞者の発表は2020年秋を予定している。

 

ヒューゴ・ボス賞http://www.guggenheim.org/hugo-boss-prize

 


 


Nairy Baghramian Stay Downers: Nerd, Fidgety Philip, Dripper, Truant, Backrower and Grubby Urchin (2017) Installation view: Déformation Professionnelle, Walker Art Center, Minneapolis, 2017–18, Courtesy the artist and Marian Goodman Gallery, Photo: Timo Ohler

ナイリー・バグラミアン|Nairy Baghramian
1971年イラン、エスファハーン生まれ。84年にベルリンに亡命し、現在も同地を拠点に活動している。建築や人体などを参照したその彫刻は、複合的な文脈を引き込むアプローチを通じて、さまざまな視点から彫刻の概念の再考を迫る。これまでにドクメンタ14(2017)、ミュンスター彫刻プロジェクト(2007、2017)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2011、2019)などに参加。2019年はルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM]で個展を開催。日本国内でもPARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015、『トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために』(国立国際美術館、2018)で作品を発表している。

 


Kevin Beasley Your face is / is not enough (2016) Performance view: Liverpool Biennial, July 14, 2018, © Kevin Beasley. Photo: Pete Carr, courtesy Casey Kaplan, New York

ケヴィン・ビーズリー|Kevin Beasley
1985年アメリカ合衆国ヴァージニア州リンチバーグ生まれ。個人的な記憶や文化的意味を含みもつ衣服やオブジェ、制作のための資料やスタジオから出るゴミなど、さまざまな素材をポリウレタンフォームや樹脂で一体化した彫刻作品、リサーチおよび制作過程で見つけた資料やオブジェなどから発想した音響作品、ライブパフォーマンスなどで知られる。2000年代中頃よりアメリカ合衆国を中心に作品を発表し、2014年にホイットニー・ビエンナーレに参加。近年はハーレム・スタジオ美術館(2016)、ICAボストン(2018)、ホイットニー美術館(2018-19)などで個展を開催している。

 


Deana Lawson Mama Goma, Gemena, DR Congo (2014) © Deana Lawson, courtesy Sikkema Jenkins & Co., New York, and Rhona Hoffman Gallery, Chicago

ディアナ・ローソン|Deana Lawson
1979年アメリカ合衆国ニューヨーク州ロチェスター生まれ。肖像写真や家族写真をはじめとする多彩な写真言語や写真のアーカイブとしての機能を駆使して、親密さ、家族、共同体、ロマンス、宗教性を帯びた美学、黒人美学といったテーマに取り組みながら、個人史や社会史を刻印した身体の可能性を探求している。2011年にニューヨーク近代美術館の『New Photography』に出品し、2017年にはホイットニー・ビエンナーレに参加。2018年にはロサンゼルスのアンダーグラウンド美術館、2019年にはハイス・マルセイユ写真美術館(アムステルダム)で個展を開催している。

 


Elias Sime Tightrope: Internalized (2017) Courtesy the artist and James Cohan, New York

エリアス・シメ|Elias Sime
1968年エチオピア、アディスアベバ生まれ。携帯電話の基盤や動物の皮、使い古されたボタンなど、露天市場で集めたさまざまな素材を、異質な価値観の混淆、融合として組み合わせたレリーフ彫刻で知られる。90年代半ばよりエチオピアを中心に作品の発表を重ね、2004年に第6回ダカール・ビエンナーレに出品。2002年に文化人類学者でキュレーターのメスケレム・アセグードが考案したコンセプトから、環境を意識したアートセンターの設立に共同で取り組み、展示施設のほか、図書館や小学校、農園などを併設したアートセンター、ZOMA美術館を2019年に完成し、こけら落としの個展を開催。近年はエチオピア国外での展示機会も多く、2019年から2021年にかけて、個展『Tightrope』が北米の美術館4館を巡回する。

 


Cecilia Vicuña Cloud Net (1999) Courtesy the artist and Lehmann Maupin, New York, Hong Kong, and Seoul

セシリア・ビクーニャ| Cecilia Vicuña
1948年チリ、サンチアゴ生まれ。チリのコンセプチュアルアートの先駆者のひとりであり、詩人としても知られるビクーニャは1973年にチリを離れ、長くニューヨークを拠点に活動している(現在はサンチアゴも拠点のひとつ)。詩、パフォーマンス、絵画、彫刻、映像、そして、協働的なプロジェクトなどさまざまな手法で、南米大陸の先住民の歴史や同時代における政治的抵抗を背景とした表現を展開してきた。2017年にはドクメンタ14に参加。近年はブルックリン美術館(2018)をはじめ、アメリカ合衆国内の複数の大学美術館で個展を開催。2019年にはロッテルダムのヴィット・デ・ウィットで回顧展が開かれた。また、「Tribu No」、「Artists for Democracy」、「Heresies Collective」など、個人の制作活動の枠組みを超えた集団的な活動も積極的に展開している。

 


Adrián Villar Rojas Mi familia muerta (My Dead Family) (2009) Installation view: End of The World Biennial, Parque Yatana, Ushuaia, Argentina, 2009 Courtesy the artist, Ruth Benzacar Art Gallery, kurimanzutto, and Marian Goodman Gallery

アドリアン・ビジャール・ロハス|Adrián Villar Rojas
1980年アルゼンチン、ロサリオ生まれ。文明の滅びゆく運命を感じさせるような、脆弱性を伴った大規模彫刻で知られる。2011年には第54回ヴェネツィア・ビエンナーレのアルゼンチン館で個展を開催(ベネッセ賞受賞)。ドクメンタ13や第12回光州ビエンナーレなどに参加。近年はクンストハウス・ブレゲンツ(2017)やNEON財団(アテネ、2017)、TANK上海(2019)などで個展を開催している。

 


 

歴代受賞者および最終候補(太字が受賞者)

2018|シモーネ・リー、ブシュラ・ハリーリ、テレサ・マルゴレス、エメカ・オグボウ、フランシス・スターク、ウー・ツァン
2016|アニカ・イ、タニア・ブルゲラ、マーク・レッキー、ラルフ・レモン、ローラ・オーウェンス、ワエル・シャウキー
2014|ポール・チャン、シーラ・ゴウダ、カミーユ・アンロ、ハッサン・カーン、シャーリーン・フォン・ハイル(スティーヴ・マックイーンはアカデミー賞ノミネートのため規定により辞退)
2012|ヤン・ヴォー、トリシャ・ドネリー、ラシード・ジョンソン、モニカ・ソスノヴスカ、トリス・ヴォナ・ミッチェル、邱志傑(チウ・ジージェ)
2010|ハンス=ペーター・フェルドマン、曹斐(ツァオ・フェイ)、ナターシャ・サドル・ハギーギアン、ローマン・オンダック、ワリッド・ラード、アピチャッポン・ウィーラセタクン
2008|エミリー・ジャシール、クリストフ・ビュッシェル、パティー・チャン、サム・デュラント、ヨアヒム・コースター、ローマン・シグネール
2006|タシタ・ディーン、アローラ&カルサディーヤ、ヨン・ボック、ダミアン・オルテガ、アイダ・ルイロヴァ、ティノ・セーガル
2004|リクリット・ティラヴァニ、フランツ・アッカーマン、リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー、ユルーン・デ・レイケ&ウィルム・デ・ローイ、サイモン・スターリング、ヤン・フードン
2002|ピエール・ユイグ、フランシス・アリス、オラファー・エリアソン、八谷和彦、ク・ジョンア、アンリ・サラ
2000|マリイェティツァ・ポタルチュ、ヴィト・アコンチ、マウリツィオ・カテラン、エルムグリーン&ドラッグセット、トム・フリードマン、バリー・ル・ヴァ、ツンガ
1998|ダグラス・ゴードン、ホァン・ヨンピン(黄永砅)、ウィリアム・ケントリッジ、イ・ブル、ピピロッティ・リスト、ローナ・シンプソン
1996|マシュー・バーニー、ローリー・アンダーソン、ジャニン・アントニ、ツァイ・グオチャン(蔡國強)、スタン・ダグラス、森村泰昌

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