恵比寿映像祭が第12回のテーマおよび参加作家の一部を発表


 

2009年より「映像とは何か」という問いを毎年異なるテーマから考察しつづける恵比寿映像祭は、来年2月に開催する第12回の総合テーマを「時間を想像する」に決定し、参加作家の一部と合わせて発表した。

当たり前に存在していると思われている時間も、宇宙の起源や生命の働きなどと同様に、現代物理学の世界でもいまだ大きな謎に包まれているのだという前提の下、映像表現は、時間を逆行したり、現在を過去や未来とつないだり、登場人物がそのなかを自由に行き来するなど、現存する時間だけでなく、映像によって浮き彫りにすることのできる不可視の時間の存在を提示してきた。第12回のディレクターを務める田坂博子は、アートや映像表現から時間を想像することで、動く写真(motion picture)である映像の本質に迫り、あらためて現在をみつめ考察していくと述べる。

 


ナム・ファヨン《半島の舞姫》2019年 Photo: GIM IKHYUN © Hwayeon Nam


小田香《セノーテ》2019年、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品

 

第12回では、展示や上映を中心とするさまざまなプログラムを通じて、「時間を記録する」(新しいドキュメンタリー/新しい神話へ)、「時間を表現する」(ポストヒューマン)、「イマジナリータイム(虚時間)」(SF)といった複数の視点から「時間とは何か」を考察していく。出品作家には近年の国際展や映画祭で活躍するアーティストや映像作家が並ぶ。第58回ヴェネツィア・ビエンナーレに韓国館代表のひとりとして参加しているナム・ファヨンは、第二次世界大戦前から戦中にかけ、朝鮮、日本、中国、ヨーロッパ各国で活躍し、西洋と東洋両方の舞踊史において伝説的な存在となった崔承喜に迫った最新回遊型インスタレーション《半島の舞姫》(2019)を、ドクメンタ14のプログラム「The Parliament of Bodies: How does it feel to be a problem?」で映像と朗読によるパフォーマンスを発表した文筆家でもあるアーティスト、グラダ・キロンバは、ギリシャ悲劇「オイディプス」の西洋中心的な文脈を、周縁的な視点から語り直す《イリュージョンズ(幻想)第2章―オイディプス》(2018)を発表する。数々の国際展に参加し、2015年の『PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭』で発表した《ルアンダ=キンシャサ》も記憶に残るスタン・ダグラスは、理論物理学の「量子テレポーテーション」を参照しながら宇宙の謎に挑むSF作品《ドッペルゲンガー》(2019)を発表する。また、ボスニア炭鉱を撮った長編第一作《鉱 ARAGANE》で山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門特別賞を受賞している小田香は、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品として、メキシコのユカタン半島北部の洞窟内の泉セノーテを舞台にその原風景や集団的記憶に迫った《セノーテ》(2019)を上映。小森はるか+瀬尾夏美は、2031年の未来をみつめながら、震災以降の時間に向き合う新作《二重のまち/交代地のうたを編む》を上映と展示の両部門で発表する。(※今回発表された全13組は下記に記載)

 

恵比寿映像祭:https://www.yebizo.com/

第12回恵比寿映像祭「時間を想像する」
2020年2月7日(金)- 2月23日(日・祝)※月曜休館
東京都写真美術館、日仏会館、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか
ディレクター:田坂博子(東京都写真美術館学芸員)

出品予定作家(※特に記載のない作家は展示部門に出品)
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー、マーティン・バース、スタン・ダグラス、ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・ザニ、グァン・シャオ、グラダ・キロンバ、小森はるか+瀬尾夏美(展示&上映)、三原聡一郎、ナム・ファヨン、小田香(上映)、アンナ・リドラー、ベン・リヴァース(展示&上映)、多和田有希ほか

 


スタン・ダグラス《ドッペルゲンガー》2019年 © Stan Douglas Courtesy the artist, Victoria Miro and David Zwirner


グァン・シャオ《普通の日》2019年[参考図版] Courtesy the artist; Kraupa-Tuskany Zeidler, Berlin; and Antenna Space, Shanghai.


三原聡一郎《自然の監視、自然の生成》2019年[参考図版] Courtesy of Aomori Contemporary Art Centre, Aomori Public University Photo: YAMAMOTO Tadasu

Copyrighted Image