アーカスプロジェクトが2019年度のレジデンスアーティストを発表


Ruth Waters Emotion Over Raisin (2019) Photo: Rocio Chacon, Courtesy: ARCUS Project Administration Committee

 

2019年7月9日、茨城県守谷市のアーカスプロジェクトは、アーティスト・イン・レジデンスプログラムの2019年度招聘アーティストを発表した。

2019年3月にインディペンデント・キュレーターの小澤慶介をディレクターに迎えたアーカスプロジェクトは、1994年以来、33カ国・地域から103組のアーティストを招聘している。26年目を迎える今回、外国籍(特別永住者を含む)を持つアーティストを対象とした2枠には、88カ国・地域から642件の応募があり、クリストファー・ボーリガード(イタリア)、ルース・ウォーターズ(イギリス)が選ばれ、本年度より再導入した日本国籍を持つアーティストを対象とする1枠には、渡邊拓也が選ばれた。本年度の審査は、竹久侑(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)、田坂博子(東京都写真美術館学芸員)を外部から招聘し、アーカスプロジェクト実行委員会との協議の下で実施された。招聘アーティストの滞在期間は、9月4日から12月12日までの100日間。渡邊拓也は上記の滞在期間に続き、2020年1月から3月のうちの約1ヶ月間、茨城県北地域に滞在する。なお、2019年11月に滞在制作成果発表(オープンスタジオ)を開催予定。

 


Christopher Beauregard A still-life is just a game of proximity (2018) Photo: Fabrice Schneider, Courtesy: ARCUS Project Administration Committee

 

クリストファー・ボーリガード(1981年アメリカ合衆国アイダホ州生まれ)は、都市の構造と人間の行動の観察を通じて、労働と余暇の関係を考察し、その関係性を有機物と無機物また質感の異なる素材を組み合わせたインスタレーションの形式で発表している。滞在中は、2020年のオリンピック・パラリンピックによって変化する東京を、過去に同様の経験をしたバルセロナやロンドン、さらに1964年にオリンピックを経験した過去の東京と比較調査する予定。国際的なイベントが都市や人々にもたらす影響の分析に基づいた詩的なインスタレーションの実現を目指す。ボーリガードは2008年にカーネギーメロン大学を修了し、現在はブリュッセルを拠点に活動している。

ルース・ウォーターズ(1986年イギリス、ランカスター生まれ)は、高度にネットワーク化した社会において、ますます過密になるコミュニケーションが人々に及ぼす「不安」に関心を寄せる。これまでは、インターネット上の資料の調査や当事者への聞き取りなどを元に、自ら脚本を書き、セットを設え、撮影したものを映像インスタレーションとして発表してきた。滞在中は、後期資本主義社会において、人類が未だ到達していない領域を切り開こうとする意志と行動が何に支配されているのかという問いに向き合い、人間のエゴと宇宙開発に関する調査を行なう予定。関係者や専門家への聞き取りなどの調査を元に、映像作品を制作する。ウォーターズは、2016年にゴールドスミス・カレッジを修了し、現在はロンドンを拠点に活動している。

渡邊拓也(1990年東京都生まれ)は、調査や聞き取りを通して出会った個人の境遇を掘り下げることで、逆説的に社会の構造や力を解き明かすような映像インスタレーションを制作している。これまでに工場での単純作業に着想を得た「工員 K」や、兄弟の関係と家庭内暴力をめぐる出来事をモチーフにした「弟の見ていたもの」などを発表してきた。滞在中は、守谷市の隣、2015年夏に鬼怒川の堤防決壊を経験した常総市の日系ブラジル人コミュニティと日本人社会の関係の調査を行なう。渡邊は、2016年に東京藝術大学大学院を修了し、現在は東京を拠点に活動している。

 

アーカスプロジェクト|アーティスト・イン・レジデンスプログラム
http://www.arcus-project.com/jp/residence/

 


Takuya Watanabe The things his brother was seeing (2018), Courtesy: ARCUS Project Administration Committee

 

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