日産アートアワード2020、ファイナリスト決定

2019年7月4日、日産自動車株式会社は、日産アートアワード2020の開催および同アワードのファイナリストとして、潘逸舟、風間サチコ、三原聡一郎、土屋信子、和田永の5名を発表した。日産アートアワードはこれまで隔年で開かれてきたが、国内外のより多くの観客が鑑賞できるよう、ヨコハマトリエンナーレ2020と時期を合わせて開催することに決定した。

5名のファイナリストは、今年5月にヴェネツィアで行なわれた第一次選考会で、国内で活動するキュレーターを中心とした候補者推薦委員に選ばれた28組のアーティストの中から選出された。ファイナリストにはそれぞれ賞金100万円が授与される。国際審査委員を務めたスハーニャ・ラフェルは第一次選考を、日本だけでなく、現代社会でアーティストが対峙している問題に対する多様な考えを表現する5人が選ばれたと振り返り、同じく国際審査委員を務めたローレンス・リンダーは、パフォーマンスから木版、立体表現と多岐に渡る表現方法から生まれる新作に期待を寄せているとのコメントを残した。今後、ファイナリストは約1年後に開催される『日産アートアワード2020』に向けて新作を制作し、国際審査委員会による最終選考でグランプリが決定される。グランプリ受賞者には、賞金300万円(ファイナリストの賞金100万円を含む)と海外レジデンスの機会が提供される。

日産アートアワードは、創業80年を迎えた日産自動車が、「人々の生活を豊かに」というビジョンのもとに、現代美術における優れた日本のアーティストを支援し、次世代へと続く日本の文化発展の助力になることを目指し、2013年に創設した。これまでにグランプリを受賞した宮永愛子、毛利悠子、藤井光をはじめ、第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館(2017)の代表に選ばれた岩崎貴宏や、現在開催中の第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展(2019)にアピチャッポン・ウィーラセタクンとの共同作品を出品している久門剛史など、各回のファイナリストに残ったアーティストも国内外で活躍を見せている。

 

日産アートアワードhttps://www.nissan-global.com/JP/CITIZENSHIP/NAA/

 

国際審査委員会
南條史生(森美術館館長)※審査委員長
ジャン・ド・ロワジー(エコール・デ・ボザール学長、パリ)
ウテ・メタ・バウアー(南洋理工大学シンガポール現代アートセンター創設者、同大学美術・デザイン・メディア学部教授、シンガポール)
スハーニャ・ラフェル(M+美術館館長、香港)
ローレンス・リンダー(カリフォルニア大学バークレー美術館、パシフィック・フィルム・アーカイブ館長兼チーフキュレーター、カリフォルニア)

候補者推薦委員
長谷川新(インディペンデントキュレーター)
橋本梓(国立国際美術館主任研究員)
畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員)
今井朋(アーツ前橋学芸員)
井関悠(水戸芸術館現代美術センター学芸員)
木村絵理子(横浜美術館主任学芸員/ヨコハマトリエンナーレ2020企画統括)
ロジャー・マクドナルド(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]副ディレクター)
成相肇(東京ステーションギャラリー学芸員)
田坂博子(東京都写真美術館学芸員)
吉﨑和彦(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)

 

 


 


潘逸舟「あなたと私の間にある重さ」2018年

潘逸舟|Ishu Han(1987年上海生まれ)
潘は社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑い、また、社会を形成する秩序やそこから生じる境界などについて、自らの身体や身の回りの日用品を用いて表現している。近年の主な展覧会に『アートセンターをひらく』(水戸芸術館現代美術センター、2019)、『Cross Domain』(蘇州金鶏湖美術館、2018)、個展『The Drifting Thinker』(MoCA Pavilion、2017)、『Sghts and Sounds: Highlights』(ユダヤ博物館、ニューヨーク、2016)など。

 


風間サチコ「ディスリンピック 2680」2018年 撮影:宮島径

風間サチコ|Sachiko Kazama(1972年東京都生まれ)
「現在」起きている現象の根源を「過去」に探り、「未来」に垂れこむ暗雲を予兆させる木版画によって、ユーモアと批評が並存する作品を制作している。近年の主な展覧会に、個展『『東京計画2019』vol.2 風間サチコ:BABEL』(ギャラリーαM、2019)、『百年の編み手たちー流動する日本の近現代美術ー』(東京都現代美術館、2019)、個展『ディスリンピア2680』(原爆の図丸木美術館、2018)、『The Long Story』(クイーンズランド・アートギャラリー|ブリスベン近代美術館、2018)、ヨコハマトリエンナーレ2017、第11回光州ビエンナーレ(2016)など。2019年にはTokyo Contemporary Art Award 2019-2021を受賞している。

 


三原聡一郎「moids ∞」斉田一樹とのコラボレーション、2018年

三原聡一郎|Soichiro Mihara(1980年東京都生まれ)
音、泡、放射線、虹、微生物、苔、気流、電子など多様な素材をモチーフに、自然現象とメディアテクノロジーを融合させた実践を行なう。近年の主な展覧会に、『空白より感得する』(瑞雲庵、京都、2018)、対馬アートファンタジア2018、『New Japan Observer Effect』(ソリャンカ市立ギャラリー、モスクワ)、KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭、メディアシティ・ソウル2016、『科学と芸術の素』(アルス・エレクトロニカ・センター、リンツ、2015-2016)、札幌国際芸術祭2014など。近年は音響彫刻やメディアアート作品の保存修復にも携わる。

 


土屋信子「Pink tesseract」2013年

土屋信子|Nobuko Tsuchiya(神奈川県生まれ)
身近なものや自身が拾い集めた廃材を組み合わせた立体を制作している。時空を超えた異なる文明、あるいはSF的異世界を想起させる作品は、それぞれが生命を感じさせるオブジェでありながらも、自然科学、地形学、そして、都市工学的なアプローチにより、総体としてのひとつの世界を構成するインスタレーションを発表している。主な展覧会に、ヨークシャー・スカルプチャー・インターナショナル2019、『Souvenirs de voyage』(グルノーブル美術館、2019)、『六本木クロッシング2019展:つないでみる』(森美術館、2019)、釜山ビエンナーレ2016、『Unmonumental: The Object in the 21st Century』(ニューミュージアム、ニューヨーク、2007)、第50回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展(2003)など。

 


和田永「換気扇サイザー」和田永+Nicos Orchest-Lab「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」プロジェクトより 2015年〜 撮影:Florian Voggeneder

和田永|Ei Wada(1987年東京都生まれ)
オープンリール式テープレコーダーやブラウン管テレビなどの旧式電化製品と現代のテクノロジーを融合させながら、新たな楽器や奏法を編み出すパフォーマンスやインスタレーションを制作している。主な展覧会に、『ICCキッズ・プログラム2017』(NTTインターコミュニケーション・センター)、KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭、高松メディアアート祭(2015)など。そのほか、2009年に結成した音楽グループ「Open Reel Ensemble」やソロ名義によるパフォーマンスを国内外で展開、2015年より、役割を終えた電化製品を新たな電磁民族楽器へと転生させるプロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」の活動をはじめている。

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