第21回バロワーズ賞

2019年6月11日、バーゼルに本社を置く保険会社バロワーズ・ホールディングスは、アート・バーゼル内のステイトメント部門で発表したアーティストを対象とするバロワーズ賞を発表した。21回目の受賞者に選ばれたのは、スパッツィオA(ピストイア、イタリア)から出品したジュリア・チェンチと、バリーチェ・ヘルトリング(パリ)から出品したシンイー・チョン。両者にはそれぞれ賞金3万スイスフラン(約330万円)が贈呈され、バロワーズ・ホールディングスが両者の作品を購入し、ベルリン国立美術館群とルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM]に寄贈する。

 


Giulia Cenci, Installation view ©︎ SpazioA

 

ジュリア・チェンチは、断片的な形状の不気味な彫刻群からなる没入型のインスタレーションを発表した。金属、ゴム、発泡体、樹脂、セラミックなどの素材が融合した彫刻には、機械的な要素や有機的な要素を見いだせると同時に、その混成、凝集、歪曲に素材が変形するための長い制作過程を感じられる。個々の彫刻が野心的かつ複雑に配置された空間は、その中を動くのに慎重さを強いられるような舞台へと変容し、まるで散乱した骨の間を観客が歩くかのような環境全体を作品として理解することができる。チェンチは1988年にイタリア、コルトーナに生まれる。現在はアムステルダムを拠点に活動している。

 


Xinyi Cheng Crossing I (2019) ©︎ Balice Hertling

 

シンイー・チョン[程心怡]は、心理学、社会的関係、個人的魅力といった要素を持ち込みながら、ポートレイトというジャンルを探究している。女性画家として男性モデルを描くというチョンの選択は、このジャンルに長きにわたり浸透してきた画家とモデルの関係性の転覆を意図したものである。古典的な構図から極端なクロースアップ、薄塗りから厚塗り、さまざまなタッチを駆使し、チョンは特定しづらい曖昧な状況に置かれた現実的であるとともに幻想的でもある人物を描いている。チョンは1989年に湖北省武漢に生まれる。現在は上海とパリを拠点に活動している。

審査員は、ルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM]のマリー・ノエル・ファルシー、ベルリン国立博物館群ハンブルガー・バーンホフ現代美術館のガブリエレ・クナプシュタイン、ファルケンベルク・コレクション(ハンブルク)のハラルド・ファルケンベルク、ジュネーヴ近現代美術館[MAMCO]のリオネル・ボヴィエ、そして、審査委員長はバロワーズのアートアドバイザー、マルタン・シュワンダーが務めた。

 

バロワーズ賞https://artprize.baloise.com/

 

 

過去の受賞者
2018|ハン・ソギョン、ローレンス・アブ・ハムダン
2017|サム・ピュリッツァー、マーサ・アティエンザ
2016|サラ・スウィナー、マリー・レイド・ケリー
2015|ベアトリス・ギブソン、マチュー・クレイベ
2014|ジョン・スクーグ
2013|ジェニィ・ティシャー、ケマン・ワ・レフレーラ
2012|サイモン・デニー、カールステン・フェーディンガー
2011|アレハンドロ・セサルコ、ベン・リヴァース
2010|クレア・フーパー、サイモン・フジワラ
2009|ゲルト・ゴイリス、ニナ・カーネル
2008|ダンカン・キャンベル、トリス・ヴォナ=ミッシェル
2007|ヤン・ヘギュ、アンドレアス・エリクソン
2006|ケレン・シッター、ピーター・ピラー
2005|ジム・ドレイン、ライアン・ガンダー
2004|アレクサンドラ・ミル、ティノ・セーガル
2003|モニカ・ソスノフスカ、サスキア・オルドウォーバース
2002|キャシー・ウィルクス、ジョン・ピルソン
2001|ロス・シンンクレア、アニカ・ラーソン
2000|ユルーン・デ・レイケ+ウィルム・デ・ローイ、ナヴィン・ラワンチャイクン
1999|ローラ・オーウェンス、マシュー・リッチー

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