アート・バーゼル2019


Alexandra Pirici, Exhibition view Neuer Berliner Kunstverein. Photo: Adrian Parvulescu

 

2019年6月13日から16日にかけて、世界最大規模の近現代美術のアートフェア「アート・バーゼル」がバーゼル市内のメッセ・バーゼルで開かれる。なお、11日、12日は招待者のみが入場できるプレビュー、12日の夜にはヴェルニサージュを開催。今年のメッセプラッツのプロジェクトは、アンドレイ・ディヌが設計した仮設のパビリオンで、アレクサンドラ・ピリチが「Aggregate」(2017-19)の新バージョンを発表する。

アートフェアの中核を為すギャラリーズ部門は、ハウザー&ワース、ガゴシアン、デイヴィッド・ツヴィルナー、ペースといったメガギャラリーをはじめ、各国から232のギャラリーが参加する。日本からは昨年同様、タカ・イシイギャラリー、タケニナガワ、東京画廊+BTAPが参加。そのほか、他部門からギャラリーズ部門に昇格したギャルリー・ピエトロ・スパルタ(シャニー、フランス)、ペレス・プロジェクト(ベルリン)、ソシエテ(ベルリン)、ヴェントルプ(ベルリン)、ホーリーブッシュ・ガーデンズ(ロンドン)、スプロヴィエーリ(ロンドン)、P.P.O.W(ニューヨーク)、2017年以来の参加となるガレリー・トーマス(ミュンヘン)、アート・バーゼル自体初参加となるマドリードを拠点にするトラヴェシア・クアトロなどが出展する(マイアミ・ビーチには2018年に参加)。(※ギャラリー部門参加ギャラリーリスト

企画内容を重視した選考基準のフィーチャー部門には26ギャラリーが参加。エセックス・ストリート(ニューヨーク)は、野村アートアワードのエマージング・アーティスト賞に選ばれたキャメロン・ローランドの「Rental Project」を個展形式で発表する。そのほか、ガレリア・ラファエラ・コルテーゼ(ミラノ)がアリソン・ストラフェラヘレン・ミラの二人展、クロイ・ニールセン(ウィーン)がエルケ・シルヴィア・クリストフェク、プロジェクト・ネイティブ・インフォーマント(ロンドン)がハル・フィッシャー、ギャルリー・フランク・エルバス(パリ)がウォレス・バーマン、ギャルリー・クリストフ・ジラール(パリ)が工藤哲巳、ガレリア・ジャクリーネ・マルチンス(サンパウロ)がウディニルソン・ジュニアの個展を企画している。(※ギャラリー部門参加ギャラリーリスト

 


Jannis Kounellis Untitled (2015)

 

バロワーズ賞の対象となる若手アーティストの個展形式限定のステイトメント部門は、初参加の6ギャラリーを含む18ギャラリーが出展。ローズ・サレイニ(カルロス/イシカワ、ロンドン)、EJ・ヒル(コモンウェルス&カウンシル、ロサンゼルス※初参加)、アド・ミノリーティ(ギャルリー・クレヴクール、パリ※初参加)、アイシャ・スルタナ(エクスペリメンター、コルカタ)、セイブル・エリス・スミス(JTT、ニューヨーク)、ベレニス・オルメド(ヤン・カプス、ケルン)、メラニー・ギリガン(ガレリー・マックス・マイヤー、デュッセルドルフ)、クリス・レムサル(テムニコワ&カセラ、タリン※初参加)、ファラハ・アル・カシミ(ザ・サード・ライン、ドバイ)らが作品を発表する。昨年のバロワーズ賞受賞者のハン・ソギョンとローレンス・アブ・ハムダンのふたりはどちらも現在開催中の第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展に参加し、アブ・ハムダンはターナー賞にノミネートされている。(※フィーチャー部門参加ギャラリーリスト

エディション部門は、前回のヨコハマトリエンナーレ2017にも参加したシンガポールの版画工房STPIや、初参加のペンシルバニア州ダーラムを拠点とするダーラム・プレス(2019年、ニューヨークに新スペースを開設)など、14のギャラリーや工房が参加。通常のブース展示のほか、mfc・ミシェル・ディディエ(ブリュッセル)がアレン・ルッパーズバーグの「Colby Sign」の特集展示を行なう。(※エディション部門参加ギャラリーリスト

 


Berenice Olmedo Janis (2018) Courtesy the artist and Jan Kaps, Cologne


Liliane Lijn, Courtesy of the artist and the gallery

 

ハーシュホーン美術館・彫刻庭園のジャンニ・ジェッツァーがキュレーションを手がけるアンリミテッド部門では、通常のアートフェアのブースでは展示不可能な大規模な彫刻や絵画、映像、インスタレーション、ライブ・パフォーマンスなどを展示する。出品作品には、リヴァーネ・ノイエンシュワンダーがフランスで起きた数々の抗議運動のバナーやプラカードから抜き出した言葉を、観客がメッセージボードへと貼り付けていく参加型作品「Bataille」(2017)や、アンドレア・バワーズが#MeTooやTime’s Upといった運動で告発された人物が公にとった対応の記録をまとめたインスタレーション「Open Secret」(2018)、韓国の伝統舞踊、工芸、詩歌を通じて、現代社会の分析を試みてきたハン・ソギョンが5年間に及ぶリサーチを基に、彫刻、絵画、映像、パフォーマンスを組み合わせた作品「Black Mat Oriole」(2017)のほか、ヴァリー・エクスポートココ・フスコフェリックス・ゴンザレス・トレスケリー・ジェームス・マーシャルキルアンジ・キア・ヘンダローレンス・レックジェイコルビ・サッターホワイトなど。

10回目を開催となるパルクール部門は、メイン会場に先駆けて6月10日からはじまる。バーゼル大学(Alte Universität)でイレナ・ハイダックのパフォーマンス「Natural Order」(2019)、バーゼル民族文化博物館でレト・パルファーのパフォーマンス「Tincti」(2019)とキャシー・ウィルクスの彫刻インスタレーション「Untitled」(2018)、州立公文書館(Staatsarchiv)でローレンス・アブ・ハムダンの「The recovered manifesto of Wissam (inaudible)」(2017)など、SALTS(ビルスフェルデン、スイス)を主宰するキュレーターのサミュエル・ロイエンベルガーのキュレーションの下、旧市街を中心にサイト・スペシフィックな作品が展開する。そのほか、市立映画館(Stadtkino)で開催するフィルム部門のプログラムは、ドルトムント|ケルン国際女性映画祭ディレクターのマクサ・ゾラーとニューヨークを拠点に活動する映画キュレーターのマリアン・マゾーネが担当。リチャード・ライトの小説『アメリカの息子』を原作としたラシッド・ジョンソンの「Native Son」(2019)やプリュンヌ・ノーリーが乳がん診断をきっかけにはじめたブックプロジェクトを展開した映像作品「Serendipity」(2019)などを上映。また、メッセ・バーゼルを会場とするカンバセーション部門は、e-fluxの共同ディレクターでアーティストのジュリエッタ・アランダが初めて担当し、ウィリアム・ケントリッジやアレクサンドラ・ピリチのアーティストトークや、「生産と再生産−美術界におけるキャリアと母親であること」、ジェンダー問題や環境問題をテーマとしたトークなどが企画されている。

 


Alexandra Pirici, Exhibition view Neuer Berliner Kunstverein. Photo: Adrian Parvulescu


Cathy Wilkes Untitled (2018) Courtesy of the artist and the gallery

 

同時期のバーゼルでは、バイエラー財団美術館でルドルフ・スティンゲルの個展、バーゼル市立美術館で『コスモス・キュビスム−ピカソからレジェまで』と、ウィリアム・ケントリッジの個展、イケムラレイコの個展を開催している。また、クンストハレ・バーゼルでは、ジョン・グムヒョンとドーラ・ブドールの個展、バーゼル・ラント美術館では、ビョルン・ブラウン、クレマン・コジトア、シモーヌ・フォルティ、ジーナ・フォリーの個展、ティンゲリー美術館では、ロイス・ヴァインベルガー、レベッカ・ホルンの個展を開催。シャウラガー美術館は6月11日から16日までの6日間限定で収蔵庫の見学を受け付けている(要予約)。また、同じくバーゼル市内で6月10日から16日まで開催するアートフェア「リステ」には、青山|目黒が五月女哲平の個展、無人島プロダクションが田口行弘の個展で出展している。

 

アート・バーゼル2019
2019年6月13日(木)-6月16日(日)
https://www.artbasel.com/basel

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