ドクメンタ15のアーティスティック・ディレクターが決定


ruangrupa Photo: Gudskul Jin-Panji 2019

 

2019年2月22日、ドイツ・ヘッセン州カッセルの有限会社「ドクメンタおよびフリデリチアヌム美術館」のザビーネ・ショルマンは、2022年に開催するドクメンタ15のアーティスティック・ディレクターに、インドネシアのジャカルタを拠点とするアーティスト・コレクティブ、ルアンルパを任命したことを発表した。

8人の有識者からなる調査委員会は、ルアンルパのこれまでの活動が示してきた、美術に関心の高い観客に限らない、幅広いコミュニティへの訴求力、現地の人々の関与や参加を促進する能力、コミュニティベースの美術組織の国際的なネットワークに基づくキュレーションを高く評価し、全会一致でルアンルパを選出した。ルアンルパの代表として記者会見に出席したファリド・ラクーンとアデ・ダルマワンは、「地球志向で協調的、学際的な芸術文化のプラットフォーム、ドクメンタ15の100日という期間を超えて影響を及ぼすようなものを生み出したい。私たちのキュラトリアル・アプローチは、経済的でありながら、さまざまな発想や知識、プログラムやイノベーションを踏まえた、コミュニティ指向型の資源使用法を目指すものです。ドクメンタが1955年に戦争の傷を癒すために設立されたのであれば、ドクメンタ15では、植民地主義や資本主義、家父長制などに根ざした現存する傷に目を向け、そうした根源となる構造に対して、異なる世界観を持ち得るパートナーシップに基づくモデルを突き合わせていくべきはないでしょうか」と語った。

 


ruangrupa, Sonsbeek16, Iswanto-Hartono, Photo: Maurice Boyer


ruangrupa, 31st Sao Paulo Bienal 2014, ruru, Photo: ruangrupa

 

ドクメンタ史上初のアーティスト・コレクティブによるアーティスティック・ディレクターとなるルアンルパは、2000年にジャカルタを拠点に活動するアーティスト主導により設立。社会学、政治、テクノロジー、メディアなど、異なる分野を横断しながら、アートの創造性を駆使して、都市問題や文化的課題に、展覧会や芸術祭の企画運営、出版やラジオを使った活動など幅広い活動で応答している。これまでに、光州ビエンナーレ(2002、2018)、イスタンブール・ビエンナーレ(2005)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2012)、シンガポール・ビエンナーレ(2011)、サンパウロ・ビエンナーレ(2014)などに参加。あいちトリエンナーレ2016では、コミュニティ形成と人材育成を目的とした「ルル学校」を長者町で運営し、アーティストやコミュニティ活動関係者を公募し、人々が自由に集い実践的に学ぶ場を開いた。同年、オランダ・アーネムのソンスベーク2016「TRANSaction」のキュレーションも手がけている。2018年には新たに、協働に基づいた創造力のための教育的ネットワーキングプロジェクト「GUDSKUL」を立ち上げた。

2017年のドクメンタ14では、脱中心化ラジオプロジェクト「Every Time a Ear di Soun」のパートナーとして、インターネットラジオ局に出演したルアンルパ。今後、2022年の開催に向けて、少なくともメンバーのひとりがカッセルに長期滞在し、ドクメンタ15の実現へ向けて活動していく。

なお、ドクメンタ15のアーティスティック・ディレクターの選考において、ウテ・メタ・バウアー(南洋理工大学現代美術センター創設ディレクター)、チャールズ・エッシュ(ファン・アッベ美術館ディレクター)、アマル・カンワル(アーティスト、ドキュメンタリー映像作家)、フランシス・モリス(テート・モダン ディレクター)、ガビ・ングコボ(第10回ベルリン・ビエンナーレ キュレーター)、エルヴィラ・ヤンガーニ(Showroomディレクター)、フィリップ・ピロット(フランクフルト造形大学ディレクター、ポルティクス ディレクター)、ヨヘン・ホルツ(サンパウロ州立美術館ディレクター)の8名が調査委員を務めた。

 

ドクメンタ15https://www.documenta.de/

 


ruangrupa, Aichi Triennale 2016, ruru, Photo: ART iT


ruangrupa, Aichi Triennale 2016, ruru, Photo: ART iT

 

ART iT Interview Archive
ルアンルパ「贅沢なリスク」(2016年12月)

 

 


 

歴代アーティスティック・ディレクター
2017|アダム・シムジック
2012|キャロライン・クリストフ=バカルギエフ
2007|ロジャー・ビュルゲル
2002|オクウィ・エンヴェゾー
1997|カトリーヌ・ダヴィッド
1992|ヤン・フート
1987|マンフレート・シュネッケンブルガー
1982|ルディ・フックス
1977|マンフレート・シュネッケンブルガー
1972|ハラルド・ゼーマン
1968|アーノルド・ボーデ
1964|アーノルド・ボーデ
1977|アーノルド・ボーデ(協力:ルドルフ・シュテーゲ)
1977|アーノルド・ボーデ

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