第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ、タイトル発表


Ralph Rugoff, Photo: Andrea Avezzu Courtesy of La Biennale di Venezia

 

2018年7月16日、ヴェネツィア・ビエンナーレ事務局代表のパオロ・バラッタと第58回ヴェネツィア・ビエンナーレのディレクターのラルフ・ルゴフが、第58回展のタイトルを「May You Live in Interesting Times(数奇な時代を生きられますように)」に決定したと発表した。

「May You Live in Interesting Times」とは、古代中国の呪詛として勘違いしたイギリス人が長きにわたって誤解してきた言い回しで、不確実な時代、危機の時代、混迷の時代、つまり「interesting times(数奇な時代)」を呼び覚ますものとして使われてきた。その意味で「数奇な時代」とは、まさに私たちが生きているこの時代のことなのかもしれない。ラルフ・ルゴフはステイトメントにおいて、「フェイクニュースやオルタナティブ・ファクトがインターネットを中心に普及し、政治的言説やその拠り所となる信頼が蝕まれていく現在、立ち止まれるときに立ち止まり、自分たちの使命を考え直すべきではないだろうか」と問いかける。続けて、「アートが政治の領域においてその力を発揮することはないこと」を確認した上で、それでもなお、アートは間接的に「数奇な時代」の生き方、考え方のある種の指針になりうると述べ、第58回展では、ひとつのテーマ自体を掲げるというよりも、作品をつくることそれ自体や観客に快楽や批判的思考をもたらすというアートの社会的役割に改めて着目していく。そして、作品の意味は基本的にオブジェではなく、対話(アーティストと作品との対話、作品と観客との対話、そして、観客同士で交わされる対話)に宿るという考えを明確に示し、展覧会を経験した観客が拡張された視野と新しいエネルギーを手にその後の日常に向き合えることを重視した展覧会の構築を目指していく。

また、パオロ・バラッタは、かつてハラルド・ゼーマンが1980年に企画した「APERTO(アペルト)」が、ヴェネツィア・ビエンナーレに定着し95年に廃止されながらも、ゼーマン自身がディレクターを務めた1999年の第48回展で「dAPERTutto(APERTO overALL)」として結実した歴史を振り返り、ラルフ・ルゴフのディレクター就任によって、ヴェネツィア・ビエンナーレがこの20年間で培ってきた考え方に寄与し、その役割にさらなる明瞭さが与えられることを期待すると語った。

第58回ヴェネツィア・ビエンナーレは2019年5月11日から11月24日まで約半年間にわたって開催される。

 

第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ
「May You Live in Interesting Times」

2019年5月11日(土)-11月24日(日)
http://www.labiennale.org/
ディレクター:ラルフ・ルゴフ

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