
2018年6月19日、シドニー・ビエンナーレ事務局は、2020年に開催する第22回シドニー・ビエンナーレのアーティスティック・ディレクターに、アーティストのブルック・アンドリューを任命したと発表した。アジア太平洋地域で最も長い歴史を持つ国際展であるシドニー・ビエンナーレのアーティスティック・ディレクター職において、アンドリューはオーストラリア先住民アーティストとして初の選出となる。
シドニー・ビエンナーレ事務局長のケイト・ミルズは、ブルック・アンドリューを作品制作や展覧会制作において、国内外との共同作業や知識の共有を一貫して成し遂げてきたアーティストとして評価しており、アンドリューは就任に際し、既に存在している豊かなコラボレーションに光をあてることや、先住民族の文化と最先端の文化との接続性に関心があり、国内外のアーティスト、コレクティブ、コミュニティとともに、私たちに見えている世界を再構成したり、豊かな地域とグローバルなリゾーム、各文化独自の表現を明らかにしていくことを目指すと述べている。選考委員は、テート・リサーチセンター・アジア部門シニア・リサーチ・キュレーターのイ・スキョン、M+エグゼクティブ・ディレクターのスハニャ・ラフェル、ジャカルタの国立近現代美術館[MACAN]が務めた。
オーストラリア先住民のアボリジニ、ウィラドゥリと、ケルトを祖先に持つブルック・アンドリュー(1970年シドニー生まれ)は、植民地主義をはじめとする支配的な物語を再検証する作品やプロジェクトを国内外で展開している。1996年以来、世界各地を旅しながら、地域の共同体と協働、公的・私的コレクションを活用し、展覧会を実現している。その土地固有のオブジェやアーカイブから着想するその実践は、非支配的な物語を利用し、歴史的に受け継がれてきたものに対する新しい理解を組み立て、世界を解釈するためのオルタナティブな物語の提示、活性化を試みている。近年はマドリッドの国立ソフィア王妃芸術センターやパリのケ・ブランリ美術館、香港のアジア・アート・アーカイブなどとともにプロジェクトを実現している。また、シドニー・ビエンナーレには、2010年の第17回展、2018年の第21回展にアーティストとして参加している。
なお、今年開催した第21回展では、アーティスティック・ディレクターを森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実が務め、45年にも及ぶ同ビエンナーレ史上最高レベルとなる85万人を超える観客動員数を記録した。
シドニー・ビエンナーレ:https://www.biennaleofsydney.art/

歴代ディレクターとテーマ
第21回(2018)|片岡真実
「Equilibrium & Engagement」
第20回(2016)|ステファニー・ローゼンタール
「The Future is already here – It’s just not evenly distributed」
第19回(2014)|ジュリアナ・エンバーグ
「You Imagine What You Desire」
第18回(2012)|キャサリン・デ・ゼーガー、ジェラルド・マクマスター
「All Our Relations」
第17回(2010)|ディヴィッド・エリオット
「The Beauty of Distance, Songs of Survival in a Precarious Age」
第16回(2008)|キャロライン・クリストフ=バカルギエフ
「Revolutions – Forms That Turn」
第15回(2006)|チャールズ・メアウェザー
「Zones of Contact」
第14回(2004)|イサベル・カルロス
「On Reason and Emotion」
第13回(2002)|リチャード・グレイソン
「(The World May Be) Fantastic」
第12回(2000)|ニック・ウォーターロー(委員長)、南條史生、ルイーズ・ネリ、ヘティ・パーキンス、ニコラス・セロータ、ロバート・ストー、ハラルド・ゼーマン
「Sydney 2000」
第11回(1998)|ジョナサン・ワトキンス
「Every Day」
第10回(1996)|リン・クック
「Jurassic Technologies Revenant」
第9回(1992/3)|アンソニー・ボンド
「The Boundary Rider」
第8回(1990)|ルネ・ブロック
「The Readymade Boomerang: Certain Relations in 20th Century Art」
第7回(1988)|ニック・ウォーターロー
「From the Southern Cross: A View of World Art c1940-1988」
第6回(1986)|ニック・ウォーターロー
「Origins, Originality + Beyond」
第5回(1984)|レオン・パロワシャン
「Private Symbol: Social Metaphor」
第4回(1982)|ウィリアム・ライト
「Vision in Disbelief」
第3回(1979)|ニック・ウォーターロー
「European Dialogue」
第2回(1976)|トーマス・G・マッカロー
「Recent International Forms in Art」
第1回(1973)|アンソニー・ウィンターボーザム
※副題なし