ニッポンの油絵 近現代美術をかたち作ったもの

押江千衣子《みづえ》1995年 和歌山県立近代美術館蔵

 

「油絵」は、日本の近現代美術史のなかで重要な位置を占めています 。 近代美術館である当館がコレクションの柱としている「和歌山ゆかりの作家たち」のなかにも、日本で最初期の洋画家となった神中糸子をはじめ、油絵に向き合うことから彫刻を含む自身の創作を始めた保田龍門、油絵を自らの表現方法として選び、生涯描き続けた石垣栄太郎、川口軌外、村井正誠など、重要な作家たちが含まれます。

いまでは多くの人にとって見慣れた技法になっている油絵ですが、広く普及したのは、明治維新後に殖産興業のための技術として美術学校で教えられ、展覧会などの発表の場が設けられてからです。油絵の多彩な表現は、西洋のものの見方や、新しい思潮に裏打ちされており、それらへの憧れや共感とともに多くの若い画家たちを魅了しました。

本展ではまず、ひとりひとりの画家が、どのように油絵と出会い、油絵によって学び、表現する者として成長していったかを作品を通して見ていきます。画家たちのまなざしは油絵を生み出した海外の表現に向かい、ひるがえって日本美術とは何であるかを問うことにもなりました。

また、油絵具の素材としての魅力そのものにも注目したいと思います。油絵具には独特の艶 と透明感があり、筆触や盛り上げを残すこともできる強い物質性を持っていることが特徴です。 多くの新しい画材が開発された現代でも、絵具の層を重ねて表現する深み、ゆっくりと固まる絵 具の性質を生かした表現など、油絵は材料の多様性のなかに埋もれることなく存在感を放って います。

日本の近代美術の中に油絵がなかったなら、今日の美術表現はずいぶん違ったものになっていたでしょう。本展は、当館のコレクションを中心に、およそ 100 点で構成します。油絵を通して、日本の近現代美術の魅力を再発見していただく機会ともなれば幸いです。

会場 和歌山県立近代美術館 2階展示室
会期 2022年11月12日(土)~12月25日(日)
開館時間 9時30分〜17時[入場は16時30分まで]
休館日 月曜日
観覧料 一般 520(410)円、大学生 300(260)円 ( )内は 20 名以上の団体料金
*同時開催の「コレクション展 2022-秋冬 特集:田中恒子コレクション」と共通料金
*高校生以下、65 歳以上の方、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
*11月19日(土)、11月20日(日)は「関西文化の日」により観覧無料
*11月22日(火)は「和歌山県ふるさと誕生日」により観覧無料
*11月26日、12月24日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料
*12月4日(第1日曜日)は観覧無料
主催 和歌山県立近代美術館
関連事業 和歌山県立近代美術館のサイトをご覧ください

 

佐伯祐三《オプセルヴァトワール附近》1927年 和歌山県立近代美術館蔵
白髪一雄《平治元年十二月二十六日》1966年 和歌山県立近代美術館蔵

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