アリ・シェリ《Fragments》展示風景 「The Time is Out of Joint」SAF Art Spaces、シャルジャ、アラブ首長国連邦 2016 photo: Alfredo Rubio Courtesy of Sharjah Art Foundation, Galerie Imane Farès, Paris and the artist
2016年5月31日、あいちトリエンナーレ実行委員会は国際展部門の参加アーティスト5組と、映像プログラム部門の参加アーティスト21組を発表した。8月11日の開幕を控え、今回の発表をもって、参加するアーティストの全容が明らかになった。
芸術監督の港千尋が掲げた「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマとするあいちトリエンナーレ2016を構成するアーティストとして、国際展部門への参加が発表されたのは、ケルスティン・ブレチュ、ニダル・シャメック、アリ・シェリ、リウ・ウェイ[刘韡]、L PACK.の5組。ケルスティン・ブレチュは、昨年ニューヨーク近代美術館で開催された現代絵画に焦点をあてた企画展への参加や、アウグスト・マッケの名前を冠する絵画賞を受賞するなど、現在国際的に注目されているペインターのひとり。また、アデル・レーダーと2007年に結成したユニット「DAS INSTITUT」としても精力的な活動をみせている。人間の歴史のカオスという一貫したテーマを探求するニダル・シャメックは、先の第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展で、「殉教者はどんな夢を見るか?」というタイトルのもとにさまざまな媒体から抜き出したイメージのドローイングや、チュニスの街を模型で再構成するという形で政治的な構造を顕在化するインスタレーションを発表している。アリ・シェリは、フランス国立救出考古学研究所およびドイツ考古学研究所との共同で、歴史の語りを組み立てる上で、考古学による発掘物をどのように捉えるのかの研究を進めている。ニューヨークのグッゲンハイムで開催中の中東・北アフリカ地域の現代美術を扱った企画展にも選出されている。中国の政治経済の大きな転換および急速な都市化を如実に体験した世代のリウ・ウェイ[刘韡]は、日常生活で目にするさまざまな素材を使って、巨大な彫刻や大規模なインスタレーション作品で知られる。第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ中国館の参加アーティストのひとり。L PACK.はともに1984年生まれの小田桐奨と中嶋哲矢によるユニットで、さまざまなスペースを「コーヒーのある風景」に変えるカフェ・プロジェクトや、美術館の教育普及プログラムと連動したワークショップスペースの設計などを手掛ける。あいちトリエンナーレ2016では、インストーラーチームの「ミラクルファクトリー」とともに、エデュケーションプログラムのための空間設計に取り組む。
ニダル・シャメック《Studying Circles》 2015 Courtesy of Nidhal Chamekh and Selma Feriani gallery
刘韡(リウ・ウェイ)「Bentu: Chinese Artists in a Time of Turbulence and Transformation」での展示風景 Fondation Louis Vuitton、パリ 2016 photo: Marc Domage © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage / Liu Wei Studio
一方、21組が追加発表された映像プログラム部門は、「プレイタイム!」というプログラムタイトルのもと、すべての作家の作品を愛知芸術文化センターで上映、一部の作品については豊橋地区、岡崎地区などでも上映する予定。チェン・ジエレン[陳界仁]や伊藤高志といった経験豊富なアーティストから、ビー・ガン[畢贛]、モーレン・ファゼンデイロ、ボリス・ラペ、小川育、幸洋子といった80年代後半生まれのアーティストまで世界各地のアーティストの作品を上映。コロンビア作品で史上初のアカデミー賞最終ノミネート作『彷徨える河』のシーロ・ゲーラ、愛知県出身で世界の数々の映画賞に輝いた山村浩二も参加。また、1974年に設立した、映画関係の書籍やパンフレット、ポスター等の資料や、映画フィルムを収集・保存する民間のアーカイブとして、最大規模を誇るプラネット映画資料図書館の旅とブラジル移民をテーマとした独自プログラムも上映する。(上述のほか、マティ・ディオップ、アッザ・エル・ハサン、クリストフ・ゴートリー、ニコラス・ゲイハルター、イェルバン・ジャニキアン&アンジェラ・リッチ・ルッキ、ミヤギフトシ、ロイス・パティーニョ、ジョルジュ・シュヴィッツゲベル、アニエス・ヴァルダ、ロイ・ヴィルフォーイェ、ミディ Zが参加)
なお、あいちトリエンナーレ2016では、一部のパフォーミングアーツ公演チケットの販売を6月25日から、参加アーティストによるワークショップの申込受付を7月1日からはじめる。そのほかの情報や詳細は公式ウェブサイトを参照。
あいちトリエンナーレ2016
「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」
2016年8月11日(木、祝)-10月23日(日)
http://aichitriennale.jp/
畢贛『凱里ブルース』2015 KAILI BLUES
シーロ・ゲーラ『彷徨える河』2015 © Ciudad Lunar Producciones
モーレン・ファゼンデイロ『モツ・マエヴァ』2014 Courtesy of the artist
山村浩二『サティの「パラード」』2016 photo: 山村浩二