TOKAS Project Vol. 9「在ることの再演」 @ トーキョーアーツアンドスペース本郷

 

TOKAS Project Vol. 9「在ることの再演」
2026年10月3日(土)–11月8日(日)
トーキョーアーツアンドスペース本郷
https://www.tokyoartsandspace.jp/
開館時間:11:00–19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし、10/12は開館)、10/13
展覧会URL:https://www.tokyoartsandspace.jp/archive/exhibition/2026/20261003-7578.html
出品作家:ウン・ジェピル、キム・ドヒ、ク・ドンヒ、パク・ミンハ、三野新

 

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、国際的な交流を促進し、多文化的な視点で多様なテーマについて思考する展覧会プログラム「TOKAS Project」の9回目となる「在ることの再演」を開催する。TOKASは2006年よりソウルの4つの提携機関と協働し、相互にアーティストの派遣を行なってきた。その交流20周年を記念する本展では、過去にレジデンス・プログラムに参加した日韓のアーティストを中心に、自身の身体経験を軸に現実を紡ぎ直す5名を紹介する。

芸術の歴史において、人間は目の前に在る世界や生命の存在を時の流れから引き離し、絵画や彫刻、写真や映画/映像によって固定し、永遠の生としてつなぎとめようとしてきた。また演劇や舞踊、パフォーマンスといったライブ・アートは、パフォーマーの身体的な演技を通じて、現実世界における生をその場に現前化することを探求してきた。本展では、歴史、生命、人間、身体、社会といった多様な対象を「再演」の視点から捉え、アーティストたちがそれぞれ異なる視点から観察した生の姿を、フィクション、彫刻、デジタルメディア、身体表現などの実践をとおして展示空間に再び立ち上げる。単に現実を写しとり過去を再現するのではなく、その時の記憶や感情といった固有の身体経験を含めた現実を肉体化し、現在進行形のものとして捉えることで、今日における生の在り様を再考する。展示は、作家ごとに「歴史の再演」「生命のつながりの再演」「テクノロジーによる人間の再演」「女形の身体性の再演」「現代社会における身体感覚の再演」と題したテーマで構成される。

 

三野新《Untitled (Research photographs)》2025年 写真 ©Arata Mino三野新《Untitled (Research photographs)》2025年 写真 ©Arata Mino
キム・ドヒ《Sea Snake Six Navels》2026年 参加型の楽器彫刻、銅、インタラクティブな音響グラフィック・システム、照明 撮影:Dohee Kimキム・ドヒ《Sea Snake Six Navels》2026年 参加型の楽器彫刻、銅、インタラクティブな音響グラフィック・システム、照明 撮影:Dohee Kim

 

三野新(福岡県生まれ)は、周縁化された場所やものに残る記憶や風景をつなぎ、「ここ」と「あそこ」の中間項を見つけ前景化させることをテーマに研究と実践を行ない、主に自身で撮影した写真や映像をもとに制作したフィクションを、自己と他者の身体やさまざまなメディアを用いて発表している。東京都と神奈川県を拠点に活動。2017年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了。主な展覧会に「ぬけみち展 かわす・つくる・ともにいる―生きるための回路」(アーツ前橋、群馬、2026)、「山本卓卓&三野新『ここに立ち、ここに立つ』」(サッポロ・パラレル・ミュージアム、北海道、2024)、「外が静かになるまで」(十和田市現代美術館 space、青森、2023)などがある。2025年度二都市間交流事業プログラムでSeMAナンジ・レジデンシーに滞在した。本展では、韓国の龍山米軍基地や戦後の占領期に関する歴史のリサーチ、戦争が現在の日常生活や身体に及ぼしている影響への考察をもとに書き下ろした戯曲「温室/オンシル」の舞台となる温室を展示空間に立ち上げる。「石」「鉄」「トラック」という三つのモノの会話によって紡がれる物語を、オブジェクト・シアターの手法によってインスタレーションとして「上演」し、日本と韓国の関係をめぐる歴史を、客観的な事実としてではなく、現在の自分自身の現実として捉え直すことを促す。

キム・ドヒ(1979年韓国・釜山生まれ)は、「物質としての身体」が生み出す摩擦や熱などの動的なエネルギーに関心を寄せ、それらが伝達される経路を探索し、そこに自身の身体を介入させることで、自己と他者、人工と自然、生と死の間の境界が曖昧になる儚い瞬間を捉えようとしてきた。即座の反応を引き出すことよりも、時間の経過に伴うエネルギーの堆積によって形成される感覚の層を明らかにすることに重きを置いている。ソウルを拠点に活動。2006年に弘益大学(美術学)を修了。主な展覧会に「Boundaries Resonate, Life Overflows」(Gimhae Museum of Art、金海、韓国、2026)、「Chanting the Hen’s Dream: Phantom Sensation」(Yangju Art Studio 777 Residence、楊州、韓国、2025)、「The Sound of Light Surface」(Seongbuk Young Art Space、ソウル、2024)などがある。2018年度二国間交流事業プログラムでTOKASレジデンシーに滞在した。2018年より、人間の生命の根源を象徴する「おへそ」に着目し、人々のおへそを型取るプロジェクト「Navel Mountain」を継続的に行ない、その過程で生まれるコミュニケーションをとおして、無数の人々との関係から成る生のつながりを体感する場を創出してきた。本展では、おへそのモチーフを拡張した鐘の彫刻作品《Navel Strike》を発表し、鐘を鳴らすという鑑賞者の身体的行為によって生じる音の振動を空間内に共鳴させる。

 

パク・ミンハ《Time Paradox》スチール写真、2024年 映像 ©Minha Parkパク・ミンハ《Time Paradox》スチール写真、2024年 映像 ©Minha Park
ウン・ジェピル「Blue Night, Blue Shadows」2025年 パフォーマンス 撮影:Sung Eui Sukウン・ジェピル「Blue Night, Blue Shadows」2025年 パフォーマンス 撮影:Sung Eui Suk
ク・ドンヒ《Delivery》2019年 インスタレーション 撮影:Yeonje Kimク・ドンヒ《Delivery》2019年 インスタレーション 撮影:Yeonje Kim

 

パク・ミンハ(1985年韓国・ソウル生まれ)は、実際の出来事や資料にもとづいた綿密なリサーチを下敷きに、SFとドキュメンタリーを融合し、映画や映像インスタレーション、出版物、音響作品など多角的な実践をとおして、人々の感覚世界を形作る枠組みを解読し、隠された物語を明らかにすることを探究している。とりわけ科学や歴史、メディア技術から派生した視聴覚的な副産物である光学の系譜に関心をもち、モノや場所、オンライン・アーカイブに現れる副産物をたどることで、そこに宿る亡霊のような見えざる者の声を発見し、物語をとおして可視化することを試みている。ソウルを拠点に活動。2013年にカリフォルニア芸術大学(美術)を修了。主な活動に、「CPH:DOX 2025 NEW VISION AWARD」(Kunsthal Charlottenborg、コペンハーゲン、2025)、「The Second Life」(アトリエ・エルメス、ソウル、2025)、「Foreverism: Endless Horizons」(イルミン美術館、ソウル、2024)などがある。2025年度二都市間交流事業プログラムでTOKASレジデンシーに滞在した。本展では、テクノロジー企業の効率性や精度への追求といった資本主義的な欲望によって、人間の労働がロボットやAIに代替され、テクノロジーの超生産性に人間が支配されていく現実を前に、デジタルに還元できない人間性とは何か、生命とは何かを映像作品をとおして問いかける。

ウン・ジェピル(1991年韓国・原州生まれ)は、移住の記憶という視点を通じて「帰属」や「故郷」の意味を探求し、簡単に翻訳できない個人的な感情や周辺的な歴史に焦点を当ててきた。伝統と現代性、そして西洋中心主義社会によってしばしば定義される男性的・女性的な概念の境界を解体することで、言葉による説明を超えた感覚的な体験をもたらす。韓国とオランダを拠点に活動。2017年に中央大学(ソウル)写真学科を卒業し、2021年にサンドベルグ・インスティチュートのアート・デザイン科を修了。主な活動に、パフォーマンス「Blue Night, Blue Shadows」(Seo-Seoul Museum of Art、ソウル、2026)、パフォーマンス/個展「Red Celebration」(Vleeshal Center for Contemporary Art、ミデルブルフ、オランダ、2025)などがある。2020年より、京劇の名女形・梅蘭芳メイ・ランファンが考案した女形を表現する12のポージングと53の手の動きを収録した記録集との出合いをきっかけに女形の研究を行ない、現存する数少ない京劇の女形の師匠のもとで演技の技術を磨きながら、自身の身体をとおして梅蘭芳の身振りを演じ直すことで、生物学的な性別に囚われないクロスジェンダーな身体感覚を模索してきた。本展では、梅蘭芳の踊りを体現するパフォーマンスや銅版画作品によって、かつて存在した女形の姿を現代に蘇らせることを試みる。日本での作品発表は本展が初めてとなる。

ク・ドンヒ(1974年韓国・ソウル生まれ)は、日常の何気ない出来事や、テレビ、インターネット、都市生活といった身の回りの断片的な要素を素材に、それらをサンプリングしながら作品を再構成し、その中に不条理で奇妙な事象を介在させることで、人々の知覚を揺さぶり、当たり前の中に潜む違和感を浮かび上がらせる。制作過程において、あえて即興的なハプニングやゲームのようなルールを設けて緊張感を与え、予測不可能な展開を呼び寄せる。映像、写真、彫刻など異なるメディアを融合させたインスタレーションを特徴とし、特定の政治的・社会的な課題を直接的に示唆するのではなく、社会のシステムの限界をユーモラスかつアイロニカルにとりあげてきた。ソウルを拠点に活動。1998年に弘益大学彫刻学科を卒業し、2000年にイェール大学美術学部大学院(彫刻)を修了。主な展覧会に「Dear Alexa」(Art Archives Seoul Museum of Art、ソウル、2026)、「Tabula Rasa」(Audio Visual Pavilion Lab、ソウル、2023)、「Delivery」(Art Sonje Center、ソウル、2019)などがある。2007年度二国間交流事業プログラムでトーキョーワンダーサイト青山に滞在した。本展では、超情報化社会に従属する現代人の意識や感覚を探る映像作品をとおして、社会的な日常生活の中で形成された身体的な習性や固定化された規範を攪拌する。

会期中は、出品作家によるアーティスト・トークやウン・ジェピルによるパフォーマンスのほか、11月7日には三野新が作を手がけ、山本浩貴(いぬのせなか座)が演出する演劇パフォーマンスを上演する。また、美術批評家/インディペンデント・キュレーターの紺野優希をゲストに迎え、韓国の現代アートシーンをテーマとしたスペシャル・トークを駐日韓国文化院で開催する。

 

関連イベント
アーティスト・トーク
2026年10月3日(土)15:00–17:00
登壇:ウン・ジェピル、キム・ドヒ、ク・ドンヒ、パク・ミンハ
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷
参加費:無料
※日英逐次通訳あり

ウン・ジェピル|パフォーマンス
2026年10月3日(土)17:30–18:00
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースC(3F)
参加費:無料

三野新|アーティスト・トーク
2026年10月10日(土)16:00–16:30
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースA(1F)
参加費:無料
※日本手話通訳あり

スペシャル・トーク「韓国の現代アートシーンについて」
2026年10月30日(金)17:00–18:00
登壇:紺野優希(美術批評家/インディペンデント・キュレーター)
会場:駐日韓国文化院5F ハンナレホール(東京都新宿区四谷4-4-10)
参加費:無料
※展覧会の会場とは異なる。手話通訳を希望する場合は10/16までにメールで申込(詳細はTOKASウェブサイトを参照)

三野新|演劇パフォーマンス
2026年11月7日(土)15:00–16:00
作:三野新
演出:山本浩貴(いぬのせなか座)
出演:石川朝日(Dr. Holiday Laboratory)
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースA(1F)
参加費:無料(要予約)
※10/11よりTOKASウェブサイトにて予約開始

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