Communion @ KAG

浦丸真太郎《受粉(花の連作 24点)》布、糸、木枠、2025年 ©️浦丸真太郎 撮影:黒坂ひな浦丸真太郎《受粉(花の連作 24点)》布、糸、木枠、2025年 ©️浦丸真太郎 撮影:黒坂ひな

 

Communion
2026年9月13日(日)–12月25日(金)
KAG(岡山県倉敷市阿知3-1-2)
https://gallerykag.jp/
開館時間:12:00–17:00
休館日:月
キュレーション:川上幸之介

 

KAGでは、国家や市場が生み出す共同体のイメージとは異なり、ひとりの人間が他者とともに時間を過ごすという出来事のなかに、新しい共同性の可能性を見出そうと試みた6組のアーティストの作品を通して、他者との交わりとそれが編み直す社会の在り方を捉え直すグループ展《Communion》を開催する。

「交わり」あるいは「聖体拝領」を意味する「Communion(コミュニオン)」は、キリスト教において、パンと葡萄酒を分かち合い、キリストの死と復活を記念するとともに、神と人、人と人との結びつきを確かめる儀式を指す。本展では、この言葉を、誰かの死を悼むこと、食卓を囲むこと、長い時間を共有することなど、他者との関係を結び直す営みとして捉える。本展出品作品は、家族、介護、障がい、喪失、共同制作といった経験を通して、人と人とのつながりがどのように形づくられ、また変化していくのかを見つめている。ここで描かれる親密な関係は、閉じられた私的な世界ではなく、身近な他者との経験が、社会や歴史、政治ともつながり、私たちが「ともに生きる」とは何かという問いを鑑賞者に共有する。

 

A Tribe Called NoiZ《実験音楽界》シングルチャンネルビデオ、1分、2025年 ©A Tribe Called NoiZA Tribe Called NoiZ《実験音楽界》シングルチャンネルビデオ、1分、2025年 ©A Tribe Called NoiZ
飯山由貴《あなたの本当の家を探しにいく》シングルチャンネルビデオ、34分、2013年 ©飯山由貴飯山由貴《あなたの本当の家を探しにいく》シングルチャンネルビデオ、34分、2013年 ©飯山由貴

 

出品作家や出品作品は以下の通り。

アーティスト/ミュージシャンのA Tribe Called NoiZは、障がいのある人々と音を介して出会う共同制作の記録《実験音楽界》(2025)を出品。ノイズや電子音に触れた参加者たちは、声を発し、身体を動かし、楽器や身の回りの物を鳴らしながら、それぞれの方法で音に応答する。あらかじめ定められた演奏や役割に従うのではなく、ひとりの音が別の誰かの音を呼び、その重なりによって音楽が立ち上がっていく過程は、能力や立場によって人を分ける境界を揺さぶっていく。聴くことと応えることの往復から生まれるその場は、異なる身体がともに時間をつくる共同体の姿を示す。

飯山由貴による《あなたの本当の家を探しにいく》(2013)は、精神障がいのある妹が「本当の家を探しにいく」と語ったことをきっかけに、姉妹で夜の街を歩いた記録。ふたりはそれぞれ頭に小型カメラを装着し、映像では異なる位置から見た風景をひとつの画面に重ね合わせられる。妹の言葉を病の症状として退けるのでも、姉が一方的に解釈するのでもなく、その言葉に導かれてともに歩く行為は、妹が見ている世界に身を置こうとする試みと言える。重なりながらも決してひとつにはならないふたつの風景が、他者を完全に理解できないまま、それでも隣を歩き続ける関係のあり方を映し出す。

 

浦丸真太郎《当たり前の思い》写真、糸、針、額、音声(34:41)、2025年 ©浦丸真太郎 撮影:黒坂ひな浦丸真太郎《当たり前の思い》写真、糸、針、額、音声(34:41)、2025年 ©浦丸真太郎 撮影:黒坂ひな
小杉大介《異なる力点》シングルチャンネルビデオ、50分、2019年 ©小杉大介小杉大介《異なる力点》シングルチャンネルビデオ、50分、2019年 ©小杉大介

 

浦丸真太郎の《受粉》(2025)は、幼少期に受けた性被害の経験と、身体障がいのある人々の性をめぐる問題への関心を背景に制作した刺繍、映像、写真、音声、資料など約52点からなるインスタレーション(※本展ではその一部を紹介)。24点の刺繍作品は、身体障がいのある24人との関わりをもとに、浦丸と各人の身体像を布に転写して縫い合わせ、花の断面図のように表している。《当たり前の思い》(2025)は、射精介助を経て親密な関係を結んだ浦丸と相手の身体を撮影した写真、金糸による刺繍、音声で構成された作品。自身の傷と他者の性/生を縫い合わせる浦丸の作品は、異なる身体が触れ合うなかで生まれる関係のかたちを示す。

小杉大介による《異なる力点》(2019)は、進行性の神経疾患によって、身体の動きや発話に困難が生じていく父をモデルとした映像作品。建築士として合理性と効率を重んじ、引退後も身体を鍛えてきた人物を舞踏家の岩下徹が演じ、父との対話を通して、その動作や感覚を緻密に再構成している。立ち上がること、室内を移動すること、日々の習慣を繰り返すこと。日常のささやかな身振りを映し出すその映像は、他者の痛みを完全に理解することの困難を受け止めながら、異なる身体の時間に寄り添い、ともに生きることの意味を問いかける。

 

佐々木健《Bulbs》53×45cm、oil on canvas、2020年 ©佐々木健佐々木健《Bulbs》53×45cm、oil on canvas、2020年 ©佐々木健

 

Sonia Lins《Artes》書籍、1996年 ©Sonia Lins / Courtesy of Museu Virtual Sonia Lins
Sonia Lins《Artes》書籍、1996年 ©Sonia Lins / Courtesy of Museu Virtual Sonia Lins

 

知的障がいのある兄が集めていた10円硬貨と電球を描いた、佐々木健による《10 yen coins》(2021)、《Bulbs》(2020)は、津久井やまゆり園事件を契機に制作されたシリーズ。兄も神奈川県内の障がい者施設で暮らしていたことから、佐々木はこの事件を身近に起こり得たものとして受け止め、家族との対話を重ねながら、兄の生活と、その周囲にある事物を描いた。兄の眼差しを通して選ばれた品々を丹念に描く行為は、ひとりの生活と、その人が築いてきた固有の世界を見つめ直す試みであり、絵画はここで、身近な他者の存在を記憶し、その人の見ていた世界を私たちの前に開く営みとなる。

ソニア・リンスによる《Artes》(1996)は、姉であるリジア・クラークとの幼少期の記憶をもとに綴られた、詩的な伝記。アーティストブックでもある本作タイトルのポルトガル語の「Artes」は、芸術という意味とともに、子どものいたずらや悪ふざけという意味も重なる。姉妹がともに過ごした日々、家族の記憶、リジアから届いた手紙を織り交ぜながら、後に国際的な評価を受けるクラークの実践を、身近な者だけが知る遊びや感覚の記憶から描き直す。芸術家の歴史を公的な評価から語るのではなく、姉妹のあいだで交わされた時間から紡ぎ直す本作は、創造することが他者との親密な関係のなかで育まれ、受け渡されていくことを伝える。

 

関連イベント
アーティストトーク
2026年9月13日(日)16:00–17:30
登壇:浦丸真太郎 × 川上幸之介(本展キュレーター)
会場:KAG
※ワンドリンクオーダー制、学生無料

アーティストトーク
2026年10月10日(土)17:00–18:30
登壇:佐々木健 × 菅原伸也(美術批評家)
会場:KAG
※ワンドリンクオーダー制、学生無料

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