望月桂 自由を扶くひと @ 安曇野市美術館

望月桂《反逆性》1920年

 

望月桂 自由を扶くひと
2026年7月4日(土)–8月30日(日)
安曇野市美術館(長野県安曇野市豊科5609-3)
http://www.azumino-museum.com/
開館時間:9:00–17:00(ただし、7/11、8/11は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7/20は開館)、7/21
企画・協力:望月桂調査団(代表・足立元)
展覧会URL:https://mochizukikatsura.org/

 

安曇野市美術館では、昨年、原爆の図 丸木美術館で開催し話題となった「望月桂 自由を扶くひと」の凱旋展示を開催。日本のプロレタリア美術運動の草分けとして知られる黒耀会の結成、一膳飯屋の運営、漫画雑誌の主宰、農民運動への尽力など、自由と扶助の精神のもとに幅広い活動を展開した望月桂の足跡をたどる貴重な機会となる。

現在の安曇野市明科に生まれた望月桂(1886-1975)は、東京美術学校に進み、荻原守衛(碌山)らに影響を受ける。卒業後は画家の道に進まず、一膳飯屋「へちま」の開業。そこは誰もがアーティストになれる場となった。1919年に社会の革命と芸術の革命は自由獲得を標榜する点において不可分であると主張する芸術団体「黒耀会」を結成。表現はあくまで個人のもので他人の評価を前提としないという考えのもと、審査や賞を設けず、誰でも出品できることを理念としたアンデパンダン展を開催。美術に限らず、文学や音楽、演劇など、さまざまな領域の表現者や労働運動家が参加し、アナキズム運動の中心人物であった大杉栄や、社会主義運動の指導者となる堺利彦、民俗学者の橋浦泰雄、演歌師の添田唖蝉坊など、その顔ぶれは類例のない多彩さとなった。

黒耀会解散後には、1920年代後半には犀川凡太郎の筆名で読売新聞に漫画を描き、その後に平凡社の百科事典の挿絵も手がけた。1938年から39年までは漫画雑誌『バクショー』を主宰し、同誌には漫画家の小野佐世男や、東京美術学校で望月の同級生だった藤田嗣治も参加。1945年に長野県東筑摩郡中川手村(現・安曇野市)に帰郷すると、地主の立場でありながら戦後の農地改革を先導し、農民運動に尽力しつつ、信州の自然を題材に数多くの風景画を残し、女子校の美術教育にも携わった。

 

望月桂《ある日の大杉》1920年
望月桂《製糸工場(女工)》1920年

 

画壇で活動しなかったために、長らく美術史では知られぬ存在だったが、長年望月を研究してきた二松学舎大学准教授の足立元(美術史・社会史)の呼びかけにより、美術館学芸員や地元地域の関係者、美術・文学・社会運動などの研究者、アーキビスト、ジャーナリスト、編集者らによる「望月桂調査団」が組織され、遺族の厚意のもとで、資料調査を開始し、アート、文学、社会運動の歴史を書き換えうる、その鮮烈な軌跡を明らかにしてきた。さらに、かねてより望月を尊敬してきた風間サチコ、卯城竜太、松田修が調査団に参加し、展覧会のタイトルやロゴマークの考案、展示デザイン、映像などを手がけた。

凱旋展示では、安曇野市が近年遺族から寄託を受けた資料のうち、安曇野市美術館で絵画や文書を中心に約140点を紹介するだけでなく、安曇野市文書館で紙資料を中心に一部を紹介、さらに碌山美術館でも小企画を開催。林倭衛《出獄の日のO氏》(長野県立美術館蔵)をはじめ、昨年の展示では並べきれなかった資料も幅広く紹介する。また、望月も一時勤めたことがある平凡社から図録『望月桂 自由を扶くひと』(足立元・望月桂調査団 編)を刊行し、限定グッズも販売予定。関連イベントの一部は既に行なわれており、会期中にもシンポジウムや講演、トークが安曇野市、松本市、東京など各地で開かれる。

 

望月桂《稔りの秋》1940年

 

関連イベント
口頭発表「文士たちの黒耀会」 ※既に終了。
2026年6月6日(土)14:20–
登壇者:足立元(二松学舎大学、望月桂調査団代表)
会場:二松学舎大学 九段キャンパス4号館6階 4061教室およびオンライン
※有島武郎研究会第79回全国大会内における発表。
https://arishimaken.hatenablog.jp/entry/2026/05/08/070000

講演「安曇野市文書館と調査団との協働 ―望月桂関係資料目録がむすぶ記録と記憶―」
2026年6月21日(日)13:30–15:00(開場:13:00)
登壇者:谷口英理(国立アートリサーチセンター 主任研究員)、山永尚美(東京文化財研究所アソシエイトフェロー)
会場:堀金公民館講堂(安曇野市堀金烏川2750-1)
定員:100名(先着順)
参加費:無料
申込方法等詳細:https://www.city.azumino.nagano.jp/event/bunsho/140743.html

シンポジウム「帰ってきた望月桂」
2026年7月11日(土)13:00–16:00
登壇者:足立元、植草学(信濃毎日新聞社)、大島浩(長野県宝 旧山辺学校校舎)、岡村幸宣(原爆の図丸木美術館)、金井直(信州大学)、塩原理絵子(安曇野市教育委員会)、武井敏(碌山美術館)、卯城竜太(アーティスト)、風間サチコ(アーティスト)、松田修(アーティスト)、アンドリュー・マークル(ライター、編集者、翻訳家)、金秋雨(キュレーター、研究者)ほか
会場:安曇野市美術館
定員:約100名(先着順)
参加費:無料(要当日観覧券)

シンポジウム「望月桂のアクチュアリティ〜芸術、関係性、アナキズム」
2026年7月25日(土)14:00–17:00
登壇者:白川昌夫(アーティスト)、千葉真智子(豊田市美術館学芸員)、足立元
司会:金井直
会場:マツモトアートセンター(松本市大手1-3-32)
定員:50名(先着順)※要申込
参加費:無料
申込方法等詳細:https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/prof/kanai_1/2026/06/224588.php

講演「手稿がひらく美術史と社会史」
2026年7月26日(日)13:00–
登壇者:足立元
会場:豊科交流学習センターきぼう 多目的交流ホール(安曇野市豊科5609-3)
定員:100名(先着順)
参加費:無料
申込方法等詳細:https://www.city.azumino.nagano.jp/event/bunsho/141110.html

トーク「岐路に立つアナキスト・モダニズム」
2026年8月1日(土)14:00–15:30
登壇者:アラン・アントリフ(カナダ、ビクトリア大学/美術史家)
逐次通訳:徳永理彩
会場:安曇野市美術館
定員:約100名(先着順)
参加費:無料(要当日観覧券)

トーク「創造と破壊の経済について」
2026年8月4日(火)18:00–
登壇者:アラン・アントリフ(カナダ、ビクトリア大学/美術史家)
逐次通訳:エウゲーニア・グディーエバ
会場:東京大学駒場キャンパス

 


関連展示
「望月桂 自由を扶くひと ─ 犀川凡太郎の人生漫歩 ─」
2026年5月10日(日)–8月30日(日)
安曇野市文書館
開館時間:9:00–17:00
休館日:土、祝
https://www.city.azumino.nagano.jp/site/bunsho/138086.html

「荻原守衛と望月桂」
2026年7月4日(土)–8月30日(日)
碌山美術館
開館時間:9:00–17:10(入場は閉館30分前まで)
会期中無休
https://rokuzan.jp/

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